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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

映画「私はロランス」 ( 監督:グザヴィエ・ドラン/2012年 )

2014-11-26 | Weblog

■製作年:2012年
■監督:グザヴィエ・ドラン
■出演:メルヴィル・プポー、スザンヌ・クレマン、ナタリー・バイ、他

「私はロランス」を作ったグザヴィエ・ドランはカナダの映画監督で、この映画を製作した時の年齢はなんと23歳!驚きです。映画界に超新星が現れたといっていいでしょう。「私はロランス」を見ていると映像、音楽、演出においてセンスが抜群で、とても23歳の青年が作ったとは思えません。まさに天才的であり才能の煌めきを感じずにはいられません。私は現在53歳、その私が自分の子供のような年齢の若者が作った映画に胸をときめかせてしまうのですからたまりませんね。

私はこの映画が公開された時、見ようかなと考えていたのですが上映時間が2時間半以上あるのを知り怯んでしまい違う映画を見てしまったということがあります。今思うとそれは失敗だったと。こんな胸がときめく映画だったなんて、後悔先に立たずですね。

ゲイであるとカミングアウトしているグザヴィエ・ドラン監督は、この映画において性同一性障害で悩むロランスという人物が、性の境界を越え自分の居場所と愛のありかたを模索していく姿を描いています。ロランスは国語の教師、映画関係のスタッフをしているフレッドという恋人がいます。しかし、性同一性障害で悩むロランスは女になりたいと告白します。突然のカミングアウトで衝撃を受けるフレッド、ロランスは女装して教壇に立ちます。周囲の冷たい視線、最初は混乱したフレッドもロランスに理解を示し応援するようになります。

ロランスは女でありたいと思いつつ愛するのはフレッドという女性、フレッドは女装したロランスを愛するも彼女自身も女という、ややこしい関係。ロランスとフレッドの関係はお互い愛しつつも、何かあると口論が絶えないようになっていきます。なぜなら、ロランスはカミングアウトしたことにより本来の自分を取り戻す方向に向かっているのですが、フレッドはロランスを大好きなのにもかかわらず、ロランスがトランスジェンダーな存在のため、彼女の心は常に揺れ動き葛藤し、現実を受け入れるのに精一杯だから。

やがて二人は別々の道を歩むことになります。ロランスは教師をやめて同じ言葉が通じる仲間へ、そして、文学を志していたので詩集を出します。一方、フレッドは結婚し子供を産み育てています。しかし、どこか心が埋まっていない自分を感じています。それはロランスも同じなのでした。彼女の生活を影から見つめているロランス。二人は詩集に込めたロランスのメッセージをきっかけ再会をはたします。

若きドラン監督は魂が揺れていくこの展開に、涙の代わりに洪水のようなどしゃ降りの水を降らせるとか、二人だけの至福の時間を祝福するかのようにカラフルな洋服を天から降らせるなどトリッキーな演出を施し、見る側をあっと言わせます。しかし、存在のレベル、魂のレベルでロランスとフレッドは愛しあっているものの、魂が身につけている天から与えられた肉体の鎧が持つ諸条件により、反目しあってしまいその関係はうまくいきません。

出会いと別れ、ロランスとフレッドというカップルの10年の軌跡を描いた新しい感覚の超恋愛映画。私は恋愛映画のジャンルはあまり見ない方ですが、斬新な切り口と演出で見せるドラン監督手腕に惚れ、この超恋愛映画に魅せられてしまいました。

わたしはロランス(特典DVD1枚付き2枚組)
メルヴィル・プポー,スザンヌ・クレマン,ナタリー・バイ
KADOKAWA / 角川書店

 

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