飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

古代エジプトの「死者の書」

2012-09-04 | ワンダーゾーンの世界

昨日の記事の通り「大英博物館 古代エジプト展」を見てきました。その展覧会のテーマは「死者の書」、目玉としてなかなか見ることができないという、なんと37mもの世界最長と言われているグリーンフィールド・パピルスが展示されていました。その他にも実際のミイラなどもさまざまな「死者の書」ともに展示されており、その保存具合にびっくりするとともに目の前にあるものが数千年前のものというロマンも感じ、とても面白い展覧会でした。今回はその展覧会で感心した「死者の書」について書こうと思います。

 

「死者の書」では死後の再生・復活が信じられていたという古代エジプトの死生観が反映されています。そこには再生・復活のための呪文が書かれていて、ミイラと一緒に墓に入れて埋葬したということです。死んだ者をミイラにするということもこの古代エジプトの死生観に大きく影響されていて、人間は「肉体」「名前」「影」「バー」「カー」という5つの要素からなっており、肉体が腐ってこわれると、5つの要素すべてが滅んでしまうとして、肉体をミイラにして保存したのだそうだ。だから、人は死ぬとまずミイラにされる。そして墓の前で「口開けの儀式」を受けて埋葬される。先ほどでた5つの要素の1つの要素、「カー」は墓の供え物を受け取れるようになり、もう1つの要素である「バー」が復活のためオシリス神の館を目指す旅にでるといいます。「バー」はこの冥界の旅でさまざまな試練を受けますが、「死者の書」にはそれを乗り越えるための呪文が書かれているというわけなのです。「死者の書」は文字通り死者のためのガイドブックなのです。

 

その「死者の書」によると、死者は復活する前にそれができるかを問われる審判があるといいます。それが「否定告白」と呼ばれているもので、簡単に書くと次のようなものなのです。死者はオリシス神の館にたどり着くと審判の間に入ります。そこで生きていたころの正しい告白を「私は~しませんでした」と一言も間違えずに42の神々の前でしなければなりません。そして死者が「私は~しませんでした」という否定告白を終えると、アヌビス神が、その告白が真実か嘘かの判決を下すことになります。その方法は死者の心臓と正義・真実の女神アマトとを天秤にかけるのです。天秤が釣り合えば死者は、声正しき者とされ、復活を遂げます。もし天秤が釣り合わなければ、死者の心臓はアメミトと呼ばれる怪物に食べられてしまい死者は第2の死を向かえ復活への道は永遠に閉ざされてしまうこととなるのです。冥界を巡ってきた死者は大きな帰路をここでむかえるということなのです。

 

こうした死後に復活が可能となるのかそうでないのかという審判が用意されているというのを知ると、その審判が人間社会を平和に営むための無意識において道徳的な規制になっているんだろうか、と想像したりします。グリーンフィールド・パピルス(=「死者の書」)の「罪の否定告白」を見るとあながちそれも当たっているんじゃないかと思えてきます。逆を考えると、人の行いは昔も今も対して変わっていないということが見えてくるような気がします。盗みをしなかったということは盗みがあったということだし、詐欺をしなかったということは、詐欺があったということを意味しているんじゃないかと。以下は、展覧会資料からグリーンフィールド・パピルスの「罪の否定告白」の部分を引用したものです。それを読むと私が書いたことになるほどね、と思っていただけるんじゃないかと思います。

 

<罪の否定告白>

 

 1.盗みをしなかったこと

 2.悪事をしなかったこと

 3.強奪をしなかったこと

 4.盗みをしなかったこと

 5.捧げ物のの穀物を盗まなかったこと

 6.詐欺をしなかったこと

 7.神々の財産を盗まなかったこと

 8.嘘をつかなかったこと

 9.反乱を扇動しなかったこと

10.誰も泣かせなかったこと

11.詐欺をしなかったこと

12.人を騙さなかったこと

13.誰も攻撃しなかったこと

14.神の牛畜を殺さなかったこと

15.悪口をいわなかったこと

16.誰にもつけいらなかったこと

17.耕された土地を荒さなかったこと

18.誰にも詐欺行為をしなかったこと

19.誰の中傷もしなかったこと

20.理由もなく怒らなかったこと

21.不貞をしなかったこと

22.自らを汚さなかったこと

23.誰も怖がらせなかったこと

24.誰も攻撃しなかったこと

25.災いになるような火を起こさなかったこと

26.けっして自分の心臓を食べなかったこと

   (けっして悲嘆にくれなかったこと)

27.汚い言葉で罵らなかったこと

28.真実の言葉に耳をかたむけないことはなかったこと29.暴力をふるわなかったこと

30.慌て裁くことはしなかったこと

31.誰も攻撃しなかったこと

32.会話中に言葉を増やさなかったこと

33.罪を犯さなかったこと

34.王を罵らなかったこと

35.水を汚さなかったこと

36.高慢に声を荒げなかったこと

37.神を罵らなかったこと

38.赤ちゃんの口からミルクを奪わなかったこと

39.召使から食べ物を奪わなかったこと

40.聖なる死者の……を盗まなかったこと

   (……部分の詳細は不明)

41.神殿にある供物を略奪しなかったこと

42.真実を言う場で嘘をつかなかったこと

図説 エジプトの「死者の書」 (ふくろうの本/世界の文化)
仁田 三夫
河出書房新社
エジプトの死者の書 (吉村作治新書)
吉村作治
株式会社アケト
世界最古の原典エジプト死者の書 (たまの新書)
ウオリス バッジ,今村 光一
たま出版
ファラオと死者の書―古代エジプト人の死生観 (小学館ライブラリー)
吉村 作治
小学館
よみがえる世界遺産 古代エジプト
後藤 克典
双葉社
ゼロからわかる古代エジプト (学研ムック)
近藤二郎
学研マーケティング
図説 エジプトの神々事典
St´ephane Rossini,Ruth Schumann‐Antelme,矢島 文夫,吉田 春美
河出書房新社

 

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