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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

僕は知らない寺山修司NO.112⇒「観客席」(演劇公演戯曲)

2008-09-09 | 寺山修司
戯曲「観客席」

“かくして「観客席」は一連の劇行動を追体験する場から、「不意打ちの連続する行動の場」に早替りする。“(寺山修司「臓器交換序説」より)

寺山修司の観客論とも云うべき実験的精神に溢れた戯曲「観客席」、初演は1978年紀伊國屋ホールである。紀伊國屋ホールもこんな実験的なことをやっておったんですね。

“劇はたしかに「台本通り」に進行するが、これは、演じられた提示されるものへの逆説によってしか成立しない反調和の世界の中で、自ら空間んを画定し、分極してゆくことになる。観客は依然として、劇場の中で意味を求める。だが、意味はつねに意識の外在化とのシーソーゲームによって、中心を見失う。中心は喪失されたのではなく、無数の中心がだまし絵のように、われわれの眼の前にくりひろげられ見失われているのである。不可避の外在化の中で、観客は、「自分とは何者か?」を、みずからの観客化したもう一人の自分に問うべきか、コピーされ集団の中で同一化をもとめている観客に問うべきか、それともみずからのモデルとして舞台の上に立っている俳優に問うべきか戸惑っつている。”(寺山修司「臓器交換序説」より)

===響け寺山の台詞===

“俺は、ここだけじゃなくて、どこへ行っても必ず、同じ席に座るからね。「前から6列目の右から5番目」。これ位が、俺の身分に丁度いいんだ。10列よりうしろになると、中流中産階級の席になる。20列よりうしろは、大抵同伴者だ。腕が、こう背中にまわっている。人間、だれでも自分の場所を決めることが大切だからね。場所を変えるってのは大仕事で、そのために皆シコシコとがんばってるのよ。だが、今のところはまだ「前から6列目、右から5番目」っていう俺の席は変わりそうもない。こないだ上坂東映へ行ったときもそうだった。縛るられている谷ナオミと俺のあいだには、前5列の障害があった。谷ナオミが言った。「あなた、早く……」しかし、俺は6列目の人間だ。前すぎず、後すぎず……中位のところに座っている。何もしちゃあげられませんよ、って。”

⇒9年前から劇場の定位置の観客席に座り続けている男の台詞。谷ナオミとはかつて日活ロマンポルノのSM女王として人気を博した女優だ。先日みた劇団A・T・P―Tokyoの公演では、それが杉本彩に変わっていた。それは、まあどうでもいいが、この場所の問題はとても深刻なような気がする。今の時代自分の居場所が見つからずさ迷っている人間がどれだけいるんだろうか?堂々とここが俺の場所と言える者は、本当に硝子の砂城ではないと証明できるのだろうか。


“大体、プロというのは身代りのことでありまして、プロの俳優は、観客の身代りをやってるだけにすぎない。ひと頃流行った東映のやくざ映画。菅原文太や高倉健が大暴れしたあとで、映画館出てくる観客は、みんな肩をこうハスに構えて、目がスワっている。まるで自分が5、6人叩き斬るったと思ってるんですな。もっとも、このカッコよさもせいぜい20分しか保たない。あとは、夜風で、終電車で、アパートで、インスタントラーメンで、ひとり寝の子守唄。ま、こうした観客の欲求不満を解消してやるのがプロ俳優なら、人気のない俳優の欲求不満を解消してやるのがプロの観客です。”

⇒怠情な観客のための「名作観客機械」に寝そるプロ観客の台詞がある。やくざ映画を観て映画館を出る時、まるで主人公になったかのようにその気になって肩で風切って歩くとは、ボクが若い時分よく聞いたことだ。でもその後の現実を寺山はさりげなく指摘する。そして、当時とどれだけ我々は変化したと言えるのだろうか…。

※“”部分「寺山修司の戯曲7/観客席」(思潮社)より引用

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