「乱歩パノラマ」と題された粘着性のエロスと人間の暗黒面を描き出すゴシック風な世界では右にでるものはない?天才的な漫画家・丸尾末広の画集を購入した。画集の帯のコピー、<美麗妖麗にして凄絶無比 世界的絵師その恍惚と戦慄の世界 大乱歩×魔神・丸尾 最強のコラボレーション>とあり、それは的確に言葉を選びまとめられ画集を開く前からそそられる。
この画集は、丸尾末広が江戸川乱歩の世界をテーマに描いたものを中心にまとめられたものである。その中には単行本として刊行されている乱歩原作の「パノラマ島奇譚」や「芋虫」の漫画に使用されたものなどが入っている。ところで、この一度見たら忘れられない丸尾の独特な絵の世界について、影響を与えたものに江戸川乱歩の小説に掲載されたイラストがあると、画集のなかにある。ボクが生まれる一年前の1960年に出版された「少年探偵江戸川乱歩全集」であるそうだ。その全集に掲載されたイラストに<圧倒的な恐怖と強い衝動を与えた>とコメントがあった。乱歩とその周辺は偉大であったのだ。彼が生んだ世界の波紋はあちこちに飛び火している。たとえば、ボクがこのblogで書いたことがある横尾忠則や寺山修司にも影響を与えている。あるいは、何度か公演にも足を運んだことがある寺山修司作品の連続上演を標榜している劇団池の下のチラシは、丸尾末広のイラストを使用しており、この画集にも掲載されている。そうなると江戸川乱歩ー丸尾末広ー寺山修司とそのラインが繋がってきて、ボクがblogでテーマのひとつとして選んでいる乱歩や寺山のことも、あながちボクだけの好みではなく共通に通低するものがあるんじゃないのかと。
またこの画集は、その乱歩の小説を丸尾が漫画化した「踊る一寸法師」という作品も所収されている。乱歩の世界を丸尾ほど見事に描き出した漫画家はいないのではないか。さらに乱歩の小説から乱歩が描けなかった粘着的なエロスを増幅させて絵筆を走らせている。たとえば、この作品でもこんな所がある。舞台となる見世物小屋において奇人怪人ら団員らの酒宴がショーもひけて楽屋で始まる。その余興とともに、酔った勢いによる集団心理による侏儒へのイジメが始まる。そこに丸尾一流の強烈なエロスを導入しているのだ。下半身には何も身につけていない半裸体の美人踊り子が、猥歌に乗って玉乗りの曲芸をしているときにバランスを崩して、酒に酔って仰向けに倒れてしまっている侏儒の顔にお尻ごと乗っかってしまう部分がある。丁度、踊り子の性器の部分が彼の顔に当たっている、いわゆる顔面騎乗の状態なのだ。老いも見られる中年侏儒のの下半身は怒張している。それを見て笑う団員たち。この乱歩にもない絵筆の想像力からくる暴力とエロス。やがてこの美人踊り子は侏儒の復讐にあいその首を断首されてしまう。女の首を持つ異形の男。その図像はまさしくオスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」のイラストに使用されたビアズレーの構図なのだ。久しく忘れていた「サロメ」について、やはりボクはこのblogにおいて「サロメ」を追いかけたことがあったことをふいにそこで思い出される。丸尾はそこかしこに、こうしたゴシックな分野におけるエポックな図像を模した絵を巧に仕込んでいるのだ。危ない危険な側面を描きつつも、知的な匂いをも絵の世界に漂わせているのも丸尾末広の魅力の一つなんだろうと思う。
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この画集は、丸尾末広が江戸川乱歩の世界をテーマに描いたものを中心にまとめられたものである。その中には単行本として刊行されている乱歩原作の「パノラマ島奇譚」や「芋虫」の漫画に使用されたものなどが入っている。ところで、この一度見たら忘れられない丸尾の独特な絵の世界について、影響を与えたものに江戸川乱歩の小説に掲載されたイラストがあると、画集のなかにある。ボクが生まれる一年前の1960年に出版された「少年探偵江戸川乱歩全集」であるそうだ。その全集に掲載されたイラストに<圧倒的な恐怖と強い衝動を与えた>とコメントがあった。乱歩とその周辺は偉大であったのだ。彼が生んだ世界の波紋はあちこちに飛び火している。たとえば、ボクがこのblogで書いたことがある横尾忠則や寺山修司にも影響を与えている。あるいは、何度か公演にも足を運んだことがある寺山修司作品の連続上演を標榜している劇団池の下のチラシは、丸尾末広のイラストを使用しており、この画集にも掲載されている。そうなると江戸川乱歩ー丸尾末広ー寺山修司とそのラインが繋がってきて、ボクがblogでテーマのひとつとして選んでいる乱歩や寺山のことも、あながちボクだけの好みではなく共通に通低するものがあるんじゃないのかと。
またこの画集は、その乱歩の小説を丸尾が漫画化した「踊る一寸法師」という作品も所収されている。乱歩の世界を丸尾ほど見事に描き出した漫画家はいないのではないか。さらに乱歩の小説から乱歩が描けなかった粘着的なエロスを増幅させて絵筆を走らせている。たとえば、この作品でもこんな所がある。舞台となる見世物小屋において奇人怪人ら団員らの酒宴がショーもひけて楽屋で始まる。その余興とともに、酔った勢いによる集団心理による侏儒へのイジメが始まる。そこに丸尾一流の強烈なエロスを導入しているのだ。下半身には何も身につけていない半裸体の美人踊り子が、猥歌に乗って玉乗りの曲芸をしているときにバランスを崩して、酒に酔って仰向けに倒れてしまっている侏儒の顔にお尻ごと乗っかってしまう部分がある。丁度、踊り子の性器の部分が彼の顔に当たっている、いわゆる顔面騎乗の状態なのだ。老いも見られる中年侏儒のの下半身は怒張している。それを見て笑う団員たち。この乱歩にもない絵筆の想像力からくる暴力とエロス。やがてこの美人踊り子は侏儒の復讐にあいその首を断首されてしまう。女の首を持つ異形の男。その図像はまさしくオスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」のイラストに使用されたビアズレーの構図なのだ。久しく忘れていた「サロメ」について、やはりボクはこのblogにおいて「サロメ」を追いかけたことがあったことをふいにそこで思い出される。丸尾はそこかしこに、こうしたゴシックな分野におけるエポックな図像を模した絵を巧に仕込んでいるのだ。危ない危険な側面を描きつつも、知的な匂いをも絵の世界に漂わせているのも丸尾末広の魅力の一つなんだろうと思う。
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三島由紀夫と丸尾末広が接点があったかは、残念ながらわかりません。しかし、銭湯に「少女椿」とは強烈ですよね。