♦️936『自然と人間の歴史・世界篇』アメリカ大統領選挙の争点(2020)

2020-11-02 22:13:55 | Weblog
936『自然と人間の歴史・世界篇』アメリカ大統領選挙の争点(2020)


 はじめに、アメリカの大統領選挙は、南北戦争後からこれまでには見られないような展開となっている。

 まずは、新型コロナウイルスの感染拡大が続くアメリカの状況を、ブラジル、インドと比べながら、しばし眺めてみよう。
 2020年11月2日時点(日本時間、午前10時での閲覧)での「COVID 19 Incidence」としては、こうなっている。
 以下、P、C、Dの順で、Population 、Cases 、Death を、ついでC/P、D/C、D/Pの値を記す。
Indiaは、1,380,000,000、8,184,082、230,934、0.59%、1.49%、0.009%。
USAは、331,000,000、9,198,700、230,934、2.78%、 2.513%、0.070%。
Brazilは、212,000,000、5,545,705、160,074、2.62%、2.89%、0.076%。

Source: COVID 19 cases, John Hopkins University Dashboard, Nov 2, 2020(ジョンホプキンス大学のホームページと、Source: Population, Wordometers.infoでの原数字から、計算した。
 それから人口については、大方に採用されている現時点での推定を用いた。


 みられるように、アメリカの数字は、インドに比べかやり深刻で、ブラジルとかなり似ているようにも感じられよう。


 二つ目の争点としては、やはり経済の成り行きだろう。こちらは、29日、7~9月期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値が発表された。前期比年率換算で33.1%増加した。
 項目別でみると、GDP(国内総生産)の約7割を占める個人消費が前期比年率換算で40.7%増え、前期の落ち込み(33.2%減)から回復したのが、大きい。
 自動車など耐久消費財は同82.2%の増加を見せた。製造業の操業再開を後押しした。住宅投資も、前期(35.6%減)から反転回復しての59.3%増と大幅に伸びたという。
 ついては、これをもってトランプ陣営は、胸をはる。現政権としては、最大限、これを宣伝して先行き楽観論を振り回しているようだが、これらの措置実現に最も奔走したのは、民主党の方であった。
 それにしても、中身を見ると、それほど浮かれてよいものか。それというのも、前期から持ち直したものの、コロナ危機前の2019年10~12月期比で3.5%小さい水準にとどまる。しかもその後は、コロナ感染の再拡大で足元の回復力にもブレーキがかかっている。早期の経済再開には、感染拡大という負の効果が伴っている。
 加えて、3兆ドルの財政出動、そしてジャブジャブの金融措置で、3四半期ぶりのプラス向き成長となっているのを、夢ゆめ忘れるべきでなかろう。


 三つ目の影響因子としては、国際社会におけるアメリカの国力の相対的低下から来るものだろう。
 それはもう「兆し」などではなくて、現在の共和党トランプ政権の前の民主党オバマ政権の時、オバマ氏がいうに「アメリカは世界の警察ではない」と述べて、世界を驚かせたのは、私たちの記憶にまた新しいところだろう。
 とはいえ、そうした事柄はかなりの割合で安全保障の話であって、次には経済面ではどうか、との話にもなっていくだろう。
 こちらのことからは、例えば、「ラスト・ベルト(錆びついたベルト地帯)」などという、かかる状況は、アメリカ自身が先導し、招いたものではないだろうか。また、1970年代くらいから、この国の貧富の圧倒的な差ができ、いうなれば暮らし向きの両極化が進んできている。
 それらの他にも、特に中国との関係において、相手の経済力が自分と拮抗してきていることから、対抗意識というか、警戒心というか、あるいはそれらの混ざりあった感情も入ってのことだろうか、とにかく中国の動きに敏感になっているようだ。
 そこで中国とアメリカとの経済関係について少しだけ触れると、この二つの国の経済力はいまやほぼ並んでおり、しかも、これからはアメリカを中国が名実ともに上回る展開になっていく可能性が高いだろう。
 既に、国内での人々の購買力(PPPでの評価)にかぎると、2014年に中国が上回り、その後差は拡大中だ。そうはいっても、国民一人当たりの富の集積からいうと、発展途上にある中国はまだ当分アメリカの水準に遠く及びそうにないのは、衆目のほぼ一致するところだろう。


 四つ目には、「Black  lives  Matter」に象徴されるような人種間の差別やそれにまつわる軋轢をめぐっての話なのだろう。これに先立つ1960年代の公民権運動の後も、アメリカでは人々の日常普段にこの問題が隣り合わせにあり、これにまつわる事象は時として社会を覆う雲のような存在として振る舞い続けている。


 五つ目には、各人が信奉もしくは某か頼りにしている宗教なり宗教観からもたらされる判断なのだろう。アメリカの宗教で現在多数なのは、キリスト教であって、ブロテスタントとカトリック、前者の中では「福音派」がとりわけ多いという。
 果たして、この場合での選択というのは、そういった宗派による価値観の区別から来るものがある一方、それから派生しての人口妊娠中絶の問題とか、はたまた今度の選挙ではキリスト教者の間で社会の中での少数派に陥る、もしくは陥りかねないことへの反対表明の機会ともなり得るとの論評も見受けられるようで、全体像を見極めるのはかなり難しい。



(続く)


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