□153『岡山の今昔』岡山のうまいもの、あれこれ(饅頭)

2017-04-09 18:11:40 | Weblog

153『岡山の今昔』岡山のうまいもの、あれこれ(饅頭)

  岡山の大手饅頭(おおてまんじゅう)の由来は、1837(天保8)年当時、岡山城大手門のそばにあった「伊部屋(いんべや)」の饅頭を、岡山藩主の池田斉敏が気に入ってこう名づけたと伝わる。包みを開けると、箱の中で寄り添うように幾つかもの饅頭が並んで、「やあやあ」とかで、こちらを見上げているようだ。
 焦げ茶のあんこに、小麦粉の白がまだらにかかっている。まだらの隙間からは、落ち着き払ったかのような色あいのあんこが覗いている。あんこはこしあんである。生地は備前米から甘酒を作り、日数をかけて丹念に仕上げてあるのだと言われる。あんの材料の小豆と砂糖にも、凝っているやに聞く。このあんを、甘酒を醸し、小麦粉と合わせて発酵させた薄い皮に包み、そして蒸し上げると出来上がりとなる。これで店頭に並ぶ訳だが、これを買い求める側の心境はいかばかりか。郷土出身の作家の次の名文句が広く知られる。
 「東京へ持って帰るお土産の大手饅頭を、箱入りと竹の皮包みと、私がときどき夢に見る程好きな事を知っているものだから、持ち重(おも)りがする位どっさり持ってきてくれた。饅頭に押し潰されそうだが、大手饅頭なら潰されてもいい。」(内田百聞「第二阿房」新潮社、2003)
 一口分つまむようにして口に運ぶと、甘酒のコクとこしあんの甘さがまろやかに広がるとのことだが、ギンギラギンの濃いめの甘さでないところに、この酒饅頭(さかまんじゅう)の真骨頂があるのではないか。

(続く)

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