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【cinema】『ストロベリーショートケイクス』

2007-10-29 01:38:19 | cinema
WOWOWで放送されていたので見てみる。

魚喃キリコのコミックの映画化。「4人の女性の仕事、恋愛の話」と書くとあまりに漠然としてるし、なんだかドラマとかにありがちな明るいコメディーを思わせるけど違う。意外に辛い。誰に感情移入するかで自分の抱えている問題というか、悩みが浮き彫りにされる気がする。

男に捨てられて自分をブスだと思いつつ、恋をしたいと願っているデリヘルの受付里子。元同級生に片思いしながら素直になれないデリヘル嬢秋代。寿退社を目指してるOLちひろ。ちひろのルームメイトでイラストレーターの塔子。それぞれが自分が一番求めている何かを失う。傷つく。そして素直に自分を伝えられずにいる。そのそれぞれに共感してしまう。誰か1人ということはなかった。それが上手い。

性格として共感してしまったのは秋代と塔子。秋代は本当はすごく女性らしい人だ。それは見た目とかじゃなくて内面。きっと大好きな菊地に甘えたいのだろうし、彼の前でかわいい女になりたいはず。でも、菊地が自分に求めているものを知っているから「女」の部分を抑えてしまう。ノーメイク、ひっつめ髪、飾り気のない服で男言葉で話す。その感じが痛々しい。恋人になれないなら友達でもいいから傍にいたいという気持ちは分かるけど、余計に自分が辛くなるだけ。だって自分が本当に求めているのは友達ではないから。でも逆に彼の求める自分を演じてしまう。もしかしたら素の自分を愛してもらえたかもしれないのに・・・。彼女はある事をきっかけに菊地を求める。それが痛い。菊地との事にしたいのだ。彼女の選択を潔いとは思わないけど、すごいなとは思う。強いのとも違う気がするけど・・・。

塔子はままならない現実に過食症になっている、イラストレーターの彼女が大切に思っていて、認めて欲しいのは作品。それは自分自身だから。過食症になっているのだから、見ている側としては彼女の精神が「普通」ではないと思うし、同居人ちひろの日記を盗み読むなど行為などは歪みも感じる。でも、自分達のミスをきちんと謝罪もしない出版社の態度に、罵りながら吐く彼女には共感した。社会人なら理不尽な目にあっても、その怒りを飲み込んで耐えて頭を下げた経験はあると思う。その体験自体が具体的に甦ったわけではないけど、心の奥が疼く。

ちひろに関しては恋愛しか頭になくて、何事も中途半端ないわゆる普通のOLさんで、よくいるタイプだと思って嫌いだった。自分はあそこまで極端ではないけど塔子と秋代に近いと思っていたから。でも、普通のOLであるちひろが焦る気持ちがよく分かってしまった。「自分には何もない」ってことに気付きたくない感じ。でも、分かっているから結婚にすがってしまう感じは分かる気がした。そして、ちょっとそんな自分が辛かった。恋愛中の彼女は見ていてイヤだったけど、結局一番潔かったのはちひろかも。

多分、一番強かったのは里子かもしれない。唯一里子のみ2年前に辛い出来事を経験したところから始まっている。彼女が冒頭で言う「そんな最悪な出来事を乗り越えられたアタシって強い」という言葉がこの映画のテーマ。最悪な事は何度もあったし、これからも間違いなくある。でも、子供の頃の最悪な事が、今思うと小さな事だったりするのは、乗り越えて強くなったから。そうやって強くなって生きてゆく。

役者達はみんな良かったと思う。里子の池脇千鶴や塔子の岩瀬塔子、秋代の中村優子は役柄自体にそれぞれ激しい見せ場があるけど、意外に普通のOLちひろ役は難しかったんじゃないかと思う。中越典子は良かったと思う。ちひろの行動に嫌悪感を覚えつつ、それが実は共感しているからなんだと気付かされたし。好きな俳優加瀬亮が出てたのはうれしかった。嫌な役だったけど(笑) でも、こーゆー男多いよな~ しかも悪いのはちひろで自分は被害者だと思ってるからタチ悪い!

4人それぞれの部屋の感じとかも良かった。菊地の家がすさんでる感じも。それぞれのキャラが分かる感じで。全体の画もなんとなく淡い感じでいい。どの程度原作に忠実なのか分からないけど、小物とかの使い方も良かった。

なんとなく気持ちがモヤモヤしてる女子は見たらいいかも。ちと辛いけど、そのモヤモヤが明確になるかも。そして乗り越えればいいのだと思う。


『ストロベリーショートケイクス』Official site

コメント (4)
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