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【cinema】『手紙は憶えている』

2016-11-30 01:18:43 | cinema

2016.11.04 『手紙は憶えている』鑑賞@TOHOシネマズシャンテ


すごく見たくて試写会応募したけどハズレ TOHOシャンテでの上映は17:30からの回があって、定時で上がれそうだったので急遽見に行くことに。なので久々に定額で見ちゃった まぁ、普通のことだけど、やっぱり1,800円は痛い



ネタバレありです! 結末にも触れています!


「老人介護施設に入居しているゼヴは、認知症の症状があり、妻のルースが亡くなったことも忘れてしまう状態。ある夜、同じ施設の友人から手紙を渡され、以前した約束を果たすように言われるが・・・」という話で、これはホントにおもしろかった。ナチス残党を追うサスペンスでありながら、家族愛、老人問題なども扱っている。ラストにどんでん返しが待っていて、衝撃を受けることになるけど、たぶんこれは皆なんとなく予測がつくと思う。それでもなお衝撃を受けてしまうのは、やっぱりその過去の重さ。手紙というアイテムを使っていることから、現代でありながらヒッチコック映画を見ているような印象。レトロ感というか・・・ テーマは重いけれど、とっても良かった。


アトム・エゴヤン監督作品。監督の作品は『デビルズ・ノット』しか見てないかな? 『クロエ』がHDDに入ってるけどまだ見てない。脚本は今作がデビュー作となるベンジャミン・オーガスト。デビュー作でこれはすごいね。第72回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門正式出品、2015年トロント国際映画祭GALA部門正式出品、第16回カルガリー国際映画祭観客賞受賞、2016年ACTRAアワード最優秀男優賞受賞など。男優賞はクリストファー・プラマーかな? 受賞歴に派手さはないけれど、その感じも今作に合っている気はする。ただ、個人的にはクリストファー・プラマーにアカデミー賞主演男優賞をあげたい。


冒頭、ベッドで眠る老人。ちょっと苦しげな寝息。目覚ましが鳴り目覚めて妻を呼ぶが答えはない。居心地のよさそうな部屋にも彼女の姿はない。扉を開けると病院のような場所に出る。見ている側はここが老人介護施設であることに気づく。職員の女性に妻のことを尋ねる老人。残念だけど奥さんは亡くなったのよと告げられる。腑に落ちない様子の老人の姿に、彼は認知症の症状があることが分かる。この冒頭は素晴らしい。扉の向こうに老人の部屋。その温かみのある部屋と、パジャマ姿の彼が佇む無機質な空間の対比が素晴らしい。


老人はゼヴ・グッドマン(クリストファー・プラマー)。後にゼヴとはヘブライ語で狼の意味であること明かされるけど、不思議な名前。職員の女性に促されて朝食の席につく。すると鼻にチューブを通した老人が、車いすを押されてゼヴと同じ席につく。この老人マックス(マーティン・ランドー)はゼヴに話があるようだけれど、咳き込んでしまって話せない。この辺りのもどかしさというか、年を取ることの大変さのような描写もいい。これは老人問題もテーマの一つにあるというか、そこがカギとなってくるので。


ゼヴの誕生日だったっけ? 亡き妻ルースをしのぶ会だったっけ? ちょっと忘れてしまったけれど、ゼヴが主役のパーティーが開かれる。孫娘と話すゼヴ。そこに現れるマックス。ゼヴは妻のルースが亡くなった後、何かを実行すると約束したらしく、そのことを思い出すように言われる。その内容については手紙に書かれているようで、この部屋を出た後、疲れたからと家族に告げて自然な形で自室に戻り、誰にも見られないように手紙を読むように指示される。ゼヴはそのように行動する。そして、その夜ゼヴはタクシーでどこかに向かう。この流れはホントに引き込まれた。事前情報として、ゼヴに認知症の症状があること、手紙の指示によりナチスの残党を探すことは知っていたので、この時点では一切明かされない手紙の内容についても察しがついたし、ゼヴが出かけることも分かっていたけど、現代が舞台になっているのに、使われるアイテムが手紙であることや、レトロな雰囲気のセットや色のトーンが、何か昔のスパイものでも見ているかのような印象。


場面変わって列車の中。4人掛けの席に座るゼヴ。向かいにはゲームをする10歳くらいの少年。ゼヴの目的地と同じ街に住む母親のもとに向かう少年は、父や兄たちと離れて1人座っている。この頃の少年特有のちょっと大人びたセリフを言いたがる感じが相まって、ゼヴとの会話が微笑ましい。今作ではゼヴと子供の会話が何度か登場する。全てゼヴの子供に対して温かい視線を向け、決して彼らを子ども扱いしていない人柄が見てとれる。それだけに最後の1人に対する彼の行動が衝撃的でもある。しばらくすると寝てしまったようで、目覚めたゼヴはまた混乱する。妻のルースを探し、自分がどこにいるのかも分からない様子。そんなゼヴの姿に怯える少年。ゼヴは手紙を読むことで状況を把握する。これは少年の助言があったんだっけ? 腕に「手紙を読むこと」と書き込む。危うい旅であることが印象付けられる。列車を降りた後、少年の父親が話しかけてくる。息子によると様子がおかしかったので心配だというのだった。ゼヴは一人で大丈夫であることを失礼のない態度で告げる。今作では高齢者であるゼヴをいたわる人々の姿が描かれていて題材の重さに比例して少しホッとする。この辺りの感じも上手い。物語の緩急もそうだし、後にいろいろ考えさせられる部分でもあったりする。


駅ではタクシーが迎えに来ており、ゼヴをある場所に連れて行く。なんとそこは銃器販売店。ここでの店員とのやり取りが結構長く続く。ここで分かるのは、ゼヴは運転免許証を保持していること。そして特に逮捕歴などがなければ90歳の老人でも銃を手に入れることが出来るということ。アメリカというのはなかなかすごい。認知症があっても、その時の受け答えで店員が明らかにおかしいと感じない、もしくは多少おかしくても売れればよいと考える店員であったら、条件としては銃を保持することが出来てしまうわけで、これは正直怖い。しかも運転免許も持っているということは、車も運転できるわけで、最近日本でも増えている高齢者による自動車事故を考えると、こちらも怖い。銃はもちろん、自動車だって操作を誤れば人の命を奪ってしまうことがあるわけなので。この描写を長めに入れたのは、ゼヴが武器を手に入れることが出来るかというハラハラ感とともに、その辺りの怖さについても見せたいということかなと思った。前述したとおり自分はある程度事前情報があったので、ゼヴが銃を何に使おうとしているのかは分かったのだけど、全く情報を入れずに見た人にとっては、ゼヴの"約束"がどんな内容なのか謎が深まる形となっている。この辺りも上手い。


指定されたホテルに着くと予約が入っており、前金で支払いも済んでいた。眠ってしまうゼヴ。目覚めるとまた混乱し亡き妻ルースを探す。この後も何度も出て来るけれど、ゼヴは眠ると記憶がリセットされてしまうのか、目覚めるたびルースを探す。腕に書いた「手紙を読む」という文字を見つけたゼヴは手紙を読み始める。この時点で見ている側にも少し情報が明かされる。ここ自分の記憶もあいまいだけど、もしかしたら部屋に着いて直ぐに手紙を読ん時だったかもしれない。それによると、マックスは以前からサイモン・ウィーゼンタール・センター(Wikipedia)に協力しており、ナチス残党を探す手伝いをしていた。マックスは、彼とゼヴの家族をアウシュビッツで殺したオットー・ヴァリッシュという人物を長年探していた。オットー・ヴァリッシュはルディ・コランダーというユダヤ人になりすまし、アメリカに入国した。現在、4名の候補まで絞り込めている。そこで、ゼヴが彼らを1人ずつ訪ね、オットー・ヴァリッシュなのであれば復讐するというのが約束の内容。かなり衝撃的ではあるけれど、今年(2016年)になってからも、元ナチスだった人物が裁かれ90歳超という年齢ながら禁固刑の判決が下されていることからも、遺族にとってこの問題に終わりはないのでしょう。ただし、どうか自分の手で制裁を加えないで欲しいと思うけれど、結果はどうあれ自身も90歳近い老人が復讐のため旅をするというストーリーは映画としては面白い。


ゼヴはタクシーである民家を訪ねる。応対に出た女性にルディ・コランダーを訪ねて来た旨を告げる。彼は地下室にいると言う。おぼつかない足どりで地下へ降りるゼヴ。このゼヴがおぼつかないということが、見ている側をハラハラさせる要素でもある。地下室にはテレビを見ながら1人盛り上がっている老人がいた。ルディ・コランダー(ブルーノ・ガンツ)であることを確認してから銃を向けるゼヴ。ルディ・コランダーは気丈にも抵抗し、力のこもらない手では銃など撃てそうにもないけれど、銃口を向けられていれば従わないわけにはいかない。アウシュビッツにいただろうと問いただすも、自分はアフリカにいたとの返事。証拠の写真もあり、この老人が探していたルディ・コランダーでないことが分かる。落胆するゼヴ。この不遜な態度のブルーノ・ガンツの演技が素晴らしく、緊張感と同時にいら立ちを感じさせる。ルディ・コランダーの正体はユダヤ人を虐殺したオットー・ヴァリッシュなのだから、思いっきりみじめに命乞いする卑怯な人物か、敵ながらあっぱれの嫌な奴であって欲しい。ブルーノ・ガンツのルディ・コランダーは後者の方。結果オットー・ヴァリッシュではなかったけれど、こいつなのか?!と思わせる感じが素晴らしい。


1人目のルディ・コランダーが探していたオットー・ヴァリッシュではなかったため、ゼヴは2人目のルディ・コランダーに会いに行くことになる。この間も見ている側は、曖昧な記憶、おぼつかない足元、思うように動かない体で任務を遂行しようとするゼヴを見守ることになる。そして、高齢の紳士であるゼヴを周囲がいたわる姿も見ることになる。これはラストへの布石だったりするのかな?


2人目のルディ・コランダー(ユルゲン・ポロノフ)は病室にいた。おそらく死の床についているであろう彼に銃口を向けるゼヴ。アウシュビッツにいたことを認めたルディ・コランダーを今まさに撃とうとした時、思わずよけようとして顔の前に上げた腕に囚人番号が。そう、彼は囚人としてアウシュビッツに居たのだった。2番目のルディ・コランダーがアウシュビッツにいた理由はホモセクシャル。力なくホモセクシュアルと理由を話すルディ・コランダーが切ない。ナチスがユダヤ人や政治犯だけでなく、同性愛者も弾圧していたのは知らなかった。このあたりのことを知らしめたいという思いがあるのかな?


全体的に手紙とマックスの指示以外あまり説明がないので、ちょっと分かりにくかったのだけど、3番目のルディ・コランダーはカナダにいるということなのかな? バスで国境を超える。ゼヴはパスポート持っていたのね? このあたりもマックスが手配したのかもしれないけれど、ちょっとだけ驚く。拳銃を持ったままの国境越えはドキドキするシーンでもあるけれど、ゼヴは意外にも簡単な方法で切り抜ける。このあたりもゼヴが高齢者であるということで、警戒されにくいのかもしれない。


3人目のルディ・コランダーの家は郊外にあった。近くには採石場か何かがあって、定期的に大きな音を立てている。周囲は背の高い草に覆われていて、周りに家もポツリポツリとしかない小さな家。よく吠えるシェパードがいるため、中の様子を見ることはできないけれど留守の様子。ゼヴはポーチでかなり長い時間待っていたらしい。1台のパトカーが止まり、中から制服の警官が降りてくる。この家の主である彼は、ルディ・コランダーの息子ジョン(ディーン・ノリス)でゼヴを歓迎してくれるが、残念ながら本人はすでに亡くなっていた。そういうことなら長居は無用と思うけれど、このルディ・コランダーがオットー・ヴァリッシュであったのか調べなくてはならないし、なにより孤独な暮らしのジョンがゼヴを帰そうとしない。ルディ・コランダーの寝室にはナチス関連の制服やグッズが飾られているし、ジョンも嬉々としてクリスタル・ナハト(水晶の夜 Wikipedia)の話をするなど、ジョンはナチス信奉者らしい。どんどん会話に熱を帯びてくるジョン。彼はゼヴがナチス将校だったと思い込んでいるのだからそうなるのは分かるけれど、ゼヴとしては当然複雑。自分の家族を殺した男の息子と、憎んでも憎み切れないナチスについて会話しているのだから。


中年男性の1人住まいで散らかった粗末な家。そのソファに並んで酒を飲む。ゼヴの方は探り探りではあるものの、何とか会話を合わせて行く。ボロが出ないうちに引き上げた方がいいのではと思いつつも、まだジョンの父親が探していた相手が確信が持てない。見ている側も焦ってくる。話をするうち、このルディ・コランダーはクリスタル・ナハトの時点では少年であり、ナチスに関わっていたとはいえ料理人だったことが分かる。となれば探していた人物ではないわけで、だったらこの場をおさめて帰らなければ。しかし、暑くなってゼヴは上着を脱ぎ、腕をまくっていたのだけど、ふとした拍子に囚人番号が見えてしまう。態度が急変するジョン。おまえはユダヤ人か?!という主旨のことを、もう少し汚い言葉で言い放ち。ゼヴに対して敵意むき出しになる。まぁ、ゼヴが父親の友人でない以上、何しに来たのかといぶかるのは当然だけど、ジョンの怒りは尋常ではない。自身も警官らしいのに、犬をけしかけて襲わせようとする始末。失禁までして怯えるゼヴ。対老人であれば、そのおぼつかない手足でも、何とか優位に立つことができても、中年男性相手では勝ち目はない。襲ってきた犬を間一髪射殺し、ジョンも撃ち殺してしまう。オットー・ヴァリッシュを殺そうとしているわけだから、見ている側も殺人が行われる覚悟をしているわけだけど、まさかターゲットと関係ない相手を殺してしまうとは思わなくてビックリ。


返り血を浴びたゼヴはシャワーを浴び、ルディ・コランダーのベッドで眠ってしまう。そして目覚めるとまた妻を探す。そして遺体を発見し驚愕する。自分のしたことは思い出せた様子。ゼヴをここまで送ってくれたタクシーの運転手は、彼をいたわって連絡をくれれば迎えに来ると言ってくれていた。どうやら彼を呼んだらしく、ゼヴはこの家を後にする。ジョンはあの性格だし、孤独な暮らしらしいので、無断欠勤をいぶかしく思われなければ、しばらく発見されることはないかもしれない。そして、事件直前に老人が訪ねたことが分かっても、それがゼヴに結びつくことにも時間がかかりそうではある。この家の周りの陰鬱とした画がとても効果的。


街に着いたゼヴは雑踏の中に妻の姿を見たらしく、錯乱して道路に飛び出してしまい、危うく車にひかれそうになり、頭を打って病院に運ばれてしまう。ゼヴの行方を捜していた息子チャールズ(ヘンリー・ツェニー)のもとに連絡が入る。ゼヴの復讐は遂げられないままに、息子に引き取られてしまうのか?と焦ったりする。隣のベッドの患者を見舞いに来ていた少女。孫娘と同じくらいの年齢。10歳になっているかな? 優しく話しかけるゼヴ。上着のポケットにキャンディーが入っているから取っていいよと言うと、少女はよろこんでポケットを探る。中から出てきたのはあの手紙。ホテルで朝食を食べている時、ウェイトレスにコーヒーをこぼされてしまったりしたけれど、この手紙がゼヴのよりどころ。たぶんこの時点までゼヴは復讐のことは忘れていたと思うけれど、何かがよぎった様子。少女に手紙を読んでもらう。見ている側も初めて聞くルディ・コランダーことオットー・ヴァリッシュの悪行。ナチスのことをナズィーと発音してしまう無垢な少女から発せられることで、より重い内容となっている。


そして、ゼヴは最後の1人と対決するため、彼の家に向かう。木を基調としてログハウスのような感じだけど、かなり大きな家。どことなくドイツっぽい印象。そういえばチャールズの家もかなりモダンで広かった。父親を介護施設に預けているし、そこそこ裕福っぽい。これは後の伏線なのかなと思う。迎えに出たのは中年女性。ルディ・コランダーの娘か嫁? 10代の娘もいる。古い知り合いであることを告げると招き入れてくれるけれど、ルディ・コランダーは昔のことを話したがらないと言う。広いリビングにはグランドピアノが置いてある。そういえば、ホテルだったかの1室においてあったピアノを弾くシーンがあった。アウシュビッツに送られる前は、音楽を愛する心豊かな暮らしをしていたのかと切なくなった。再びゼヴがピアノを弾くシーン。でも、緊張感が漂うシーンとなっている。その音を聞きつけてルディ・コランダー(ハインツ・リーフェン)が降りてくる。いよいよ対面。するとルディはゼヴを抱きしめ挨拶をする。もちろんゼヴは拒否するけど、見ている側としては不思議な感覚にとらわれる。なぜルディはこんな行動をとったのか?


一方、ゼヴが再び行方不明になったことで、彼を探していたチャールズがコランダー家を訪ねて来る。これはゼヴを送ったタクシーの運転手などから情報を得たってことかな? 中年女性が迎え入れている間に、庭のテラスに出たゼヴ、ルディ、そしてルディの孫。ゼヴは孫に銃を向け、ルディに本当のことを言うように迫っていた。驚愕する中年女性とチャールズ。耐えきれなくなったルディは、泣き叫びながら自分はナチスであったこと、アウシュビッツでユダヤ人を殺したことを告白する。呆然とする中年女性と孫。もちろんチャールズもビックリ。でも自分の名前はクニベルト・シュトルムだと言う。そんなはずはない!お前はオットー・ヴァリッシュだと言うゼヴ。しかし、クニベルト・シュトルムはこのことに関してだけは嘘は言っていないと言う。そして、驚愕の事実を告げる。ゼヴこそがオットー・ヴァリッシュだと言うのだった。そんなはずはないと言うけれど、腕の囚人番号は逃げるために2人で彫ったもので、自分とゼヴは連番になっているとのこと。ゼヴは混乱しクニベルト・シュトルムを撃ってしまう。そしてゼヴは「憶えている」とつぶやき自分の頭を撃ち抜く。


場面変わってゼヴがいた介護施設。患者たちが集まってテレビのニュースを見ている。伝えているのはゼヴの事件。今のころ動機などは明らかになっていないようで、ゼヴに好意を寄せていたらしい老女が、ゼヴは(意識が混濁して)自分が何をしているのか分からなかったのよと言う。するとマックスが言う。いや、彼は全て分かっている。彼は私の家族を殺したんだ。


カメラが移動してマックスの部屋の中。机の上には以前チラリと映った古い写真。そこにはナチスの制服姿のゼヴが写っていた。映画はこの写真のアップで終了。マックスは全てを承知でゼヴを洗脳し、彼に敵として自分自身を探させ、最もショックを受ける形で自分が誰であるか思い出させる方法を取った。それはあまりにあざやかだけど、長い年月をかけた調査能力と、目の前に憎い仇がいるというのに目的遂行のため表面上は友人を装う忍耐力に驚く。まぁある意味洗脳自体も復讐なのでしょうけれど。ゼヴことオットー・ヴァリッシュはヒトラーやナチスに洗脳されて罪を犯し、今またマックスに洗脳されて自ら罪を償ったというのは感慨深いものがある。


見ているうちにオットー・ヴァリッシュはゼヴ自身なのではないかと思っていたので、真実を知ってもビックリすることはなかったのだけど、やっぱりその事実の重さに愕然とする。オットー・ヴァリッシュがどんな生い立ちで、どんな青春んを過ごし、どういう経緯でナチスに入隊し、アウシュビッツでユダヤ人虐殺に手を染めることになったのか、アメリカに渡ってからどうやって生きてきたのか一切語られない。オットー・ヴァリッシュがナチスに関わるまではいい人だったとか、アメリカに渡ってからは心を入れ替えたとかは関係ない。あの時やったことは事実で、そのことは一生涯許されることはなく、必ず償わなくてはならない。もちろんそれは正しいし、自分も殺人事件、特に幼児虐待のニュースを聞くたびに思う。オットー・ヴァリッシュがしたことを考えれば、彼の罪は許すことはできないと思う。でも、おぼつかない足取りで必死に任務を遂行しようとしていたゼヴを見続けた身としては複雑な気持ちになったりもする。子供たちに対するゼヴの優しい態度も忘れられない。悩ましい。


マックスとしてはゼヴと介護施設でゼヴと再会し、ゼヴが認知症でいずれ全てを忘れてしまうことが許せなかったのでしょう。自分は何一つ忘れられないのに、自分をそうさせた人物は幸せに暮らしているなんてたしかに許せないけど、マックスの執念にも少し怖さを感じたりもする。もちろん、ナチスだけではなく、犯罪被害者の苦痛はいつまでも続き、決して癒えることはなく、その罪は消えないということを伝えたいのだと思うけれど・・・

 

キャストは皆よかった。特に超ベテラン俳優たちの演技合戦に感動。ブルーノ・ガンツの演技については感想内に書いたので割愛するけど、とっても良かった。クニベルト・シュトルム役のハインツ・リーフェンの演技も良かったと思う。いつかこんな日が来るのではないかと怯えて暮らしてきたのだと思う。自分の罪を家族に知られてしまうことを恐れて生きるのは自業自得とはいえ辛い。その年月を感じることができた。ジョン役のディーン・ノリスも良かった。警官として登場した彼は正義の人だと思っていたのに、まさかのナチス信奉者で犬をけしかけて人を殺そうとするような最悪な人物だった。その感じを的確に演じていたと思う。


マックスのマーティン・ランドーがすごかった。車椅子に乗り、鼻に管を通してあり、少し話しただけで咳き込んでしまう。今にも死んでしまいそうなマックスのその内側に燃えていた復讐心。彼をここまで生かしていたのは、ゼヴが自分が誰であるか思い出し、自らを裁くのを見届けるため。その執念を少し怖く感じるさせることが正しいと思うので、ラストの表情が素晴らしい! 最初はゼヴの参謀として登場しているので、ミスリードさせる感じもお見事


ゼヴのクリストファー・プラマーが素晴らしい! 認知症の演技や、復讐に燃える姿も良いのだけど、とにかくただただゼヴが歩いているだけでハラハラしてしまう。そのおぼつかない足どり。その背中の演技が素晴らしい 見ている側は結構な割合でゼヴのおぼつかなさを見ることになる。それでも飽きてしまうことがない。ゼヴが無事に任務を遂行できるのか、いろんな意味で心配になる。そんな物語の引っ張り方もあるんだな。その辺りは脚本の上手さもあるけれど、やっぱりクリストファー・プラマーの演技と佇まいのおかげ。そしてやっぱり自分が誰であるか分かった瞬間の演技が素晴らしい


原題は『Remember』。ゼヴの最期の言葉はI remember。なるほどと納得せざるを得ない素晴らしいタイトル。いいろいろ考えさせられる。手紙が重要アイテムなので邦題もいいと思う。めずらしく(笑)


とにかく画がいい。主人公が高齢者であること、任務を秘密裏に進めていることから、セリフはあまり多くない。なのでホントにただただゼヴが歩いてるシーンが映し出されたりする。でも飽きてしまうことがない。不穏なシーンでは暗い色合いになったり、子供たちとのシーンでは温かい色合いだったりする。チャールズの家やクニベルト・シュトルムが裕福そうなのも、オットー・ヴァリッシュもクニベルト・シュトルムも悪役ながらそれなりの人物であるということを表しているのかなと思ったりもする。そしてそのことが同情しきれない感じにもなっている。人を欺いて生きてきたのに、幸せになれると思っているのか(*`д´) みたいな・・・


テーマはとっても重い。ナチスものではあるけれど、犯罪者に置き換えると身近な問題でもある。そして、それだけに簡単に答えは出せない。でも、サスペンスとしてもすぐれている。何度もしつこいけど高齢者が主人公だけに、ハデなアクションはないけれど、ちゃんとハラハラさせるシーンもある。そして謎解きの要素もある。全体的に品が良くてちょっとクラシカルな感じも良かった。


上質なサスペンス見たい方オススメ。おじいちゃん好きな方は是非! クリストファー・プラマー好きな方必見です!


『手紙は憶えている』Official site

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【Googleのロゴ】ジャガディッシュ・チャンドラ・ボーズ生誕158周年

2016-11-30 00:30:56 | Google's logo

毎度のGoogleのロゴがこんなことに!



ジャガディッシュ・チャンドラ・ボーズ生誕158周年

すみません おいしそうなお名前ですが、どなたでしょう?


毎度のWikipediaによりますと・・・


ジャガディッシュ・チャンドラ・ボース(英語:Sir Jagadish Chandra Bose 、

ベンガル語:ジョゴディシュ・チョンドロ・ボシュー স্যার জগদীশ চন্দ্র বসু )は、

インド物理学者SF作家である。


イギリス統治下のベンガル行政区マイメンシン生まれ、

カルカッタのセントザビエルカレッジ卒業。


薬学を学ぶためロンドン大学に留学したが、健康を害して帰国。

プレジデンシーカレッジ(Presidency College)の物理学教授に就任した。

インドの無線科学、SFの父と呼ばれる。

研究分野は広範で、クレスコグラフ (Crescograph) の発明は有名である。


というのが情報の全て。


なるほどSF作家でもあるのね?

英語表記にはSirとあるからナイトの称号とかお持ちなのかしら?


クレスコグラフって何だろう?(o゚ェ゚o)


検索画面のロゴはこんな感じ


 শুভ জন্মদিন.

(ベンガル語でお誕生日おめでとう)

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【Googleのロゴ】ルイーザ・メイ・オルコット生誕184周年

2016-11-29 00:18:34 | Google's logo

毎度のGoogleのロゴがこんなことに!



ルイーザ・メイ・オルコット生誕184周年

「若草物語」の作者だよね?


毎度のWikipediaによりますと・・・


ルイーザ・メイ・オルコットLouisa May Alcott,)は、アメリカ小説家

1868年に書かれた『若草物語』(Little Women)で知られる。


オルコット一家は貧しかったようで・・・


1843年 - 1844年にかけてのわずかな期間には、

ユートピア的な共同体であるフルーツランズに移住し、

そこが瓦解した後は貸家に住み、

さらにその後は母親の遺産とエマソンの援助で購入したコンコードの家

「オーチャード・ハウス」(Orchard House)に移住した。


という経験からか・・・


成長するにつれて、オルコットは奴隷制廃止論者、フェミニストとなっていった。

1847年に一家は一週間ほど逃亡奴隷の家に住み、

1848年にオルコットはセネカ・フォールズ会議Seneca Falls Convention)によって

出版された女性の権利に関する書物『感情宣言』(Declaration of Sentiments)を読み、

賞賛している。


とのこと。

1860年から本格的に作品を書き始めたそうだけれど・・・


ルイーザ・メイ・オルコットの大成功は、

若草物語』(Little Women: or Meg, Jo, Beth and Amy, 1868年)の

第1部が掲載された時から始まった。

この物語は、彼女が姉妹達と一緒にコンコードで過ごした少女時代をもとにした半自伝的な話である。


なるほど、やっぱり自伝的な物語だったのね


生涯独身だったそうで、

後半生において、オルコットは女性参政権の主張者となり、

コンコードで初めての投票権をもつ女性となった。


とのことで・・・


健康状態の悪化に反して、オルコットは残りの生涯も物語を書き続け、

最後には南北戦争中の労働時に発症した水銀中毒の後遺症で倒れた

(彼女は腸チフス患者の治療のためにカロメルを使用していた)。

ルイーザ・メイ・オルコットは1888年3月6日

死の床に伏していた父を見舞った2日後にボストンで逝去した。


とのこと


このロゴは「若草物語」かな?

「若草物語」は何度も映画化されているけど、

原作も読んでいないし、映画も見ていない。

それでも、なんとなく話は知っているのだから、力のある作品なのでしょう。

今度読んでみようかな


検索画面のロゴはこんな感じ


Happy Birthday

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【動画】ネイサン・チェン選手 EX NHK杯 2016

2016-11-28 00:06:51 | 【動画】figure skate

⛸【動画】ネイサン・チェン選手 EX NHK杯 2016⛸

 

 

本日まで札幌で開催されていたNHK杯。男子シングルで銀メダルを獲得したネイサン・チェン選手のEXがとってもかっこよかったのでUPしておく!

 

チラリとご紹介しておくと、今季からシニアデビューしたアメリカ出身の17歳。中国系アメリカ人なのかな? 4T、4S、4F、4Lzの4種類の4回転を跳ぶことができる。今季フランス杯SPでは4Lz-3T、4F、3Aの構成で臨み、3Aが2Aに抜けてしまったものの、4Lz-3T、4Fは着氷し認定を受けた。SPで4Lzと4Fを成功させたのは史上初の快挙 

 

ネイサンの強みはジャンプだけではなく、スケーティングの上手さと表現力があること。なのでPCSが伸びる。宇野昌磨選手の良いライバルと言えるのではないかな?

 

ということで、動画をドゥゾ♪(っ'ω')っ))

 

Nathan Chen EX 2016 NHK Trophy

このEXカッコイイ

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【動画】みうらじゅん×いとうせいこう 見仏トークライブ@豊橋 普門寺

2016-11-27 00:51:46 | 【動画】MJ

【動画】みうらじゅん×いとうせいこう  見仏トークライブ@豊橋 普門寺

 

 

MJファンを自認していながら全く知らなかったこのイベント。まぁ知っていたところで豊橋までは行けなかったのだけど ということで、こんな動画を見つけたのでUPしておく。

 

なんと普門寺(高野山 真言宗 普門寺)さんYouTubeのチャンネルをお持ちなようで、自ら動画をUPしてくださった! ありがたい(-人-) 南無南無・・ 

 

基本的には仏像や仏教をテーマとしたスライドショーらしい? とはいえ見どころはお2人のトーク。相変わらず絶妙なトークが繰り広げられてるもよう。

 

ということで、動画をドゥゾ♪(っ'ω')っ))

 

みうらじゅん×いとうせいこう 見仏トークライブ@豊橋 普門寺

この距離感いいな~

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【play】「ミス・サイゴン」鑑賞

2016-11-27 00:42:59 | play

【play】「ミス・サイゴン」鑑賞

 

 

ここ数年東宝は「レ・ミゼラブル」と「ミス・サイゴン」を交互に上演している。今年は「ミス・サイゴン」の年。この上演スタイルは今後も続くようで、来年は「レ・ミゼラブル」が上演される。

 

一応、簡単に書いておくと「ミス・サイゴン」は「レ・ミゼラブル」と同じくアラン・ブーブリル&クロード=ミッシェル・シェーンベルクのコンビによる作品。クロード=ミッシェル・シェーンベルクが目にした1枚の写真から着想し、プッチーニの「蝶々夫人」を下敷きにして、ベトナム戦争時のベトナムを舞台としたミュージカル作品にしたもの。

 

 

 

実は今回はスルーしようかなと思っていた。「ミス・サイゴン」は好きな作品ではあるけれど、自分の中では何があっても見たいという作品ではない。資金難なので、他に見たい作品やコンサートがあればそちらを優先したいと思っていたので・・・

 

でも、今回で市村正親さんがエンジニア役を卒業されるということで、これは見ないわけにはいかない! しかも、キム役にウエストエンド公演で同役を演じたキム・スハさんが出演すると聞き、是非見てみたいと思った。ということで、お2人が出演する日を狙ってチケットを取った。

 

 

 

 

ザックリした感想をtweetしておいたので、そこに追記する形で感想を書いて行こうと思う。

 

ということで、感想をドゥゾ♪(っ'ω')っ))

 

【ACT1】

 

前述したとおり、ここ数年交互に「レ・ミゼラブル」と「ミス・サイゴン」が上演されていて、一昨年(感想はコチラ)にも観ている。実は初演以来の観劇で、しかも新演出版も初めてということで、新演出によってよりアグレッシブに分かりやすくなったことや、なにより新鮮さがあった。そしてなにより自分が年を取ったこともある。初演時はキム目線で見ていたけれど、今では親世代。当然見方も変わって来る。前回はそんな視点の変化自体も新鮮で、とにかく圧倒されて見ていた。

 

今回は前回鑑賞から時間が空いていないこと、新演出版を見るのが2回目であり変更点なども分かっていたこともあり、とっても冷静な目で見ることが出来た。その分見る目も厳しめになっていたかもしれない。下のtweetにもある通り、ドーンと来なかった理由についてはいくつか思い当る節がある。その1つがこの厳しめ目線。そしてやっぱり作品に対する情熱のようなもの。自分の中大好きで何度でも見たくなる作品は「レ・ミゼラブル」、「オペラ座の怪人」そして「キャッツ」。「レ・ミゼラブル」ほどの深みはなく、「キャッツ」ほどのエンターテインメント性もなく、「オペラ座の怪人」ほども酔いしれない。というのが個人的な感想。

 

そのあたりが自分の中で優先度がやや低くなっている理由で、前回鑑賞時の記事にも書いたけれど、作り手の視点がどこにあるにせよ、作品の重要な要素に女性蔑視、アジア人蔑視が含まれているのは間違いないわけで、アジア人の女性としてはいい気分のする作品ではない。出演者のほとんどが幸せではなく、心に深い傷を抱えており、最終的にそれが解決することなく悲劇で終わる。ハッピーエンドでなければ気に入らないというわけではないけれど、その悲劇に納得できない場合はモヤモヤしてしまう。今作のラストにはそういう部分がある。その点については後に触れようと思う。


とりあえず第一幕で気になった点などについて書いておく。毎回どうやって始まったのか忘れてしまうオープニング。旧演出については思い出せないけれど、新演出ではキムが1人雑踏を歩いているところから始まる。エンジニアが声をかけてドリームランドで働くことになったらしい。こういう細かい演出が入っていたの気づかなかった。


「火が付いたサイゴン」の歌詞は前回から変わっている部分があったかな? かなりきわどい歌詞でドキドキする。女性キャストたちの頑張りがスゴイ。これかなりきわどいよね キムが自己紹介的に歌う歌詞も少し変わっていたような気がする。お目当てのキム・スハ。今作が初演されたロンドンのウエストエンドでキム役を演じたとのことで、かなり期待値が上がっている。韓国出身ということで、イメージとして強い声で声量豊かに歌い上げる系なのかと思っていたけど、美しい声で儚げに歌う。人の好みはそれぞれなので、力強い女性に惹かれる男性もいるかと思うけれど、すっかり自信を失って、現実を嘆いているクリスのような男性が一目ボレするのは、清純可憐で守りたくなる女性だと思うので、この感じはイメージどおり。

 

歌詞は全体的にいろいろ変わっている部分があったと思う。より分かりやすくなっているとは思うけれど、なんとなく違和感がある部分もあったりする。一番気になっているのは、ジョンがクリスにキムをすすめる場面で、クリスが「こんな子まだガキだぜ、卵一個で抱けるさ」と歌っていた部分の後半が、正確な歌詞は忘れてしまったけれど、抱けないという意味になっていたこと。クリスとしてはキムをそういう相手として扱いたくないと思っているということが強調されていて、より分かりやすくなっていたと思う。でも、自分としては前の方が好きだったかな。(でも抱かない)っていうカッコ書き部分まで説明してしまうのはやぼったい気がした。

 

クリスの見せ場の「神よ何故?」(Why God Why?)で改めてしっかりと聴く上野哲也の歌唱。うーん。まず声があまり通らないと感じた。歌い上げる部分で少し安定しない。真面目そうで優しいけれど、流されやすく裏目に出てしまう感じが合っているとは思うのだけど、何かがピンとこない。顔もスタイルも悪くないのだけど・・・ 第二幕の「エレンとクリス」のところかな? アメリカ人ならやれるはずだったって憤るところ。そこの演技はとっても良かったと思うし、全体的に全くダメだったというわけではない。でも何かが足りない。このあたりがドーンと来なかった理由の1つでもある。

 

あと、スハキムは前述したとおり好みではあったし、下の方にtweetしたけど日本語の発音もきれいだった。でも、時々アクセントが違う。気にならない時もあるのだけど、そこが重要なポイントだったりするとアレ?(o゚ェ゚o)っとなっちゃって、入り込めないというか気が反れてしまうところがあったのは事実。そういうわけで、前回は気づいたら泣いていた「サン・アンド・ムーン」も、唯一と言っていいほど幸せな曲「世界が終わる夜のように」でも、グッと来るものがなく、サラリと流れてしまった気がする。全然ダメというわけではなのだけど、感動。・゚・(ノД`)・゚・。となりたいわけなので、そうはならなかったのは残念

 

自分としてはちょっと狂気を感じるようなトゥイが好きなので、藤岡正明のトゥイはちょっと男前。Twitterなどでもトゥイの方がいいじゃんという意見も見かけたけれど、ホント「クークープリンセス」から「トゥイの死」までの流れを見ていると、前回の感想にも書いたけれど、ここでトゥイと生きる道を選択できていたら、あんなことにはならなかったのに とはいえ、その選択肢が一切ないのがキムという女性だし、トゥイがタムを受け入れることはできなかったでしょう。 事実、激昂してタムを殺そうとしてキムに撃たれてしまうわけだし。そしてその一部始終を幼いタムが見ているのが辛い。無垢な魂が見つめる業。イヤ、キムも頑固なほどに真っ直ぐで純粋なんだと思う。そのことが、タムの存在により強調されている。その姿に泣いた。・゚・(ノД`)・゚・。

 

キム最大の見せ場「命をあげよう」 前述したとおり、強い声で最初からガンガン歌い上げる系だと思い込んでいたキム・スハ。実際はとても繊細に歌う。この曲オリジナル・キムのレア・サロンガを含め、何人かの歌唱を聞いたけれど、レアさん以外はかなり力が入っている人が多い印象。それって実は諸刃の剣で、その勢いに乗って大感動できる場合と、置いてけぼりな感じになってしまう場合がある。自分としてはやや後者の状態になることが多かった。なので、徐々に上げていく好きだったし、「4Stars」(感想はコチラコチラ)で生で聴いて、号泣状態になったレア・サロンガのイメージに近いと感じた。

 

段取りをつけて戻って来たエンジニアと3人、手を取り合って去っていく後ろ姿で終わる第一幕。この後姿でもタムの姿に涙 この後彼の身に起こることを考えると切ない。この演出はイイ。

 

【ACT2】

 

第二幕冒頭はサイゴン陥落から3年後、ジョンがベトナムに取り残された米兵と現地女性との間に生まれた混血児ブイドイの問題について訴える場面から。上原理生は超絶歌上手いし、声量があって声もいい。上原アンジョルラスは大好きなのだけど、正直この「ブイドイ」はあまり心に響いてこない。これ静かに抑揚なく始まって、終盤に向かってゴスペル調のコーラスも加わり、どんどん盛り上がって行く。技術的にも、感情の込め方的にも高度なものが必要なのかなと思うし、素人があまり偉そうなことは言えないのだけど、響いてこないのだから仕方がない。最終的には歌い上げて終わる曲なので、それで正解なのだけど、フルパワーで歌い上げれば響くかといえばそういうことでもないのだなと思ったりもする。この曲はJOJことジョン・オーウェン=ジョーンズ、アール・カーペンターの歌唱を聴いた。どちらも素晴らしく甲乙つけがたいけれど、個人的にはまるで独り言のように語り始めたアールさんの歌唱に心打たれて号泣だった。最後まで自分の思いを誠実に伝えようと思っているような。その感じが好きなので、熱く思いのたけをぶつけるような上原ジョンはイメージと違っていたと思うし、やっぱりまだ歌いこなせていないように感じた。絶対自分のものにできると思うので頑張ってほしい。エラそうでごめん🙇


第二幕の見せ場の1つ。本物のヘリコプターが舞台上に登場するサイゴン陥落のシーン。バンコクでホステスとして働くキムが、トゥイの悪夢を見てから、舞台上にクリスが登場して一気に場面転換。ここはアンサンブルの迫力もすごくて緊迫の場面。ただ、ここでのキム・スハの演技はちょっとアッサリし過ぎていたように思う。可憐なキムがあまりに取り乱し、怒鳴り散らすのも違うと思うので、そのあたりのことはいいと思うのだけど、クリスを乗せたヘリが飛び立つ前に、あきらめて去ってしまう部分がちょっとアッサリし過ぎだった印象。見ている側としては、すぐ近くにクリスがいるのに--- あきらめないで---となるところなので、ここはキムが思い切り絶望してくれた方がより切ないように思った。「ブイドイ」歌唱についても、ここでの歌唱についても、あくまで個人的な意見ではありますが・・・


さて、ここからはホントに何とかならなかったのかの連続で辛い。サイゴン陥落でキムとクリスがすれ違ってしまったのは、戦時中だし仕方がない。でも、キムが生きているだけじゃなく、自分の息子の存在も知っているのに、クリスの対応はあまりに人任せでグダグダに感じる。何故クリスはジョンと別行動をしていたのかが不明なのだけど、二手に分かれて探していたってこと? ジョンはブイドイを支援する活動をしているわけで、おそらくそういう組織に所属しているはず。その組織がエンジニアの届け出を受けたわけなのだから、キムの居所がきちんと把握できていないというのはおかしな話。まずはキムが働く店に行くのが手っ取り早く、その店が分からなかったからといって二手に分かれる必要はないように感じる。この辺りはベースとなっている「蝶々夫人」の流れに沿っているのだと思うけれど、40年以上前の話ではあるけど現代の感覚からすると不自然な感じがする。


ベトナム戦争に限らず、戦争では誰もが心に傷を負い、その癒し方はそれぞれ、ジョンとしてはこの活動に光を見出しているわけで、それは立派なことだと思う。そして、クリスが過去といまだに向き合えず、エレンという存在に依存していたとしても責めることはできない。あまりに大きな心の傷は完全に癒えることはないだろうし、回復する速度も方法も人それぞれ。頼れる存在がいるならば頼るべきだとも思う。だから現在のクリスの状況を卑怯だと逃げだとは思わない。でも、なぜジョンと共に会いに行かなかったのかは納得できない。エレンのセリフでキムを探しに行ったと言っていたので、それは間違いなのだろうし、あの結末に持っていくために、すれ違わせているのは分かるけど、どうも雑な感じがする。いきなり訪ねて行くと驚くからってこと?


たしかに、ジョンが訪ねるとキムは興奮してしまい、彼の言葉も耳に入らない状態になってしまった。前回はここの笹本玲奈の演技が自分にはやや過剰で、とりあえず落ち着け!と思ったものだけど、キム・スハの演技は自然だったと思う。キム・スハの演技が全体的にややアッサリめに感じたのは、前回の笹本玲奈の全編力の入った演技と対比されているからかもしれない。もちろん笹本玲奈の演技も素晴らしく、見ている間は感動していたので、ダメだと言っているわけではない。あくまで対比としてということ。個人的にはここはあまり興奮し過ぎずに自然に演じてくれた方が好きかも。キム・スハの演技は良かったと思う。


一方、キムがクリスの訪問を待たずにホテルを訪ねる流れは、エンジニアの入れ知恵も含めて納得できる。近くにクリスが来ていれば会いたいと思うのは当然。ただ、これはやっぱり本人からではなく、エレンからクリスに妻がいるという事実を突きつけられてしまう方がよりショッキングであって、ラストへの布石としてはインパクトがあるからこの流れなのでしょう。エレンとしても突然の対面にビックリしたとは思うけれど、精一杯優しく対応しようとしていることは伝わる。ただ、キムが去った後、戻って来たクリスとの会話で分かるように、タムの存在を知ってバンコクまで来たわりに、2人の間で自分たちがどうしたいのか、キムとタムのためにどうするべきなのか結論を出していかなったことにビックリする。2人は一体何をしにバンコクまで来たのか? 自分にはこの設定はちょっと雑に感じた。知念里奈の声はちょっとキンキンしていてるのが気になるけど、ここの演技は良かったと思う。今まであまり感情をあらわにしなかったキムが感情を爆発させるけど、ここのキム・スハの演技もやり過ぎ感がなくて良かったと思う。


そして、今作を代表する曲と言っても過言ではない「アメリカン・ドリーム」 とにかく、キムもエンジニアもアメリカに行くことに固執している。現代の自分たちからすると、アメリカに行ったからといって、必ずしも幸せになれるわけではないと思ってしまうけど、ベトナム戦争時のサイゴンを生き抜いた彼らには、アメリカは夢の国だったのでしょう。歌詞にもあるようにペチャパイがボインボインになることはあっても、残念ながらハゲが毛がボウボウになることはない。もしなるならドナルド・トランプ氏はあんな髪型じゃないだろう。アメリカにも不可能はある。それはきっとどこかで分かっているのだと思うけれど、それでも辛い現実から逃げたい、どん底の生活から抜け出したいという思いが、アメリカへの憧れになっているのかなと思う。そう考えるとキャデラックまで登場して華やかなシーンだけど、とっても切ない それは、エンジニアの夢が消え去って終わることでも伝わる。ここでの市村正親が素晴らしい。67歳歌って踊る。素晴らしい


そしてラスト。結局、クリスとエレンがどういう結論を出したのかはハッキリとは分からない。おそらく、バンコクに残して援助しようということになったのかな? でも、キムは答えを待たずに自ら命を絶ってしまう。せめてクリスの腕の中で逝けたことがせめてもの救い。でもやっぱりこの結末は好きではない。クロード・ミッシェル=シェーンベルクが、娘の将来を思いアメリカの父親のもとへ旅立たせるため、今まさに別れようとしている写真を見たことが、今作の誕生のきっかけだし、前述したとおりベースは「蝶々夫人」なので、キムがタムのために自分を犠牲にする話であることは分かるけれど、やっぱり何故話を聞きもせずに命を絶ってしまうのか? 17歳でクリスに出会って3年以上経っているとはいえ、キムはまだ20歳くらい。純粋で真っ直ぐで、何も持っていない彼女は、これしか方法がないと思い込んでしまったのでしょうけれど、クリスがタムを引き取ってくれる保証はない。仮にクリスとエレンの子供としてアメリカに行けたとしても必ずしも幸せになれるとは限らない。しかも、将来タムが自分のために母親が命を絶ったと知ったらどう思うのだろう・・・ もちろん、そのあたりを踏まえての問題提起としてのエンディングなのでしょうし、当時のサイゴンやバンコクには未来がなかったというのとなのかもしれない。ましてや米兵との混血児には。2016年の東京で観劇しているオバちゃんOLとしては、とってもモヤるエンディングだけど、この物語の終わりとしてはこれでいいのかも? 最後にエレンがタムを引き寄せる姿に少しだけ救われた。

 

キャストの感想は一応入れ込んで書いたつもりだけど、市村正親とキム・スハについてはtweetしておいたので貼っておく。



キム・スハについては感想内に書いたので1つだけ。日本語の発音がとってもキレイだったのだけど、時々アクセントが違っていて、それがちょっと気になったのもドーンと来なかった理由の1つであったりもする。でも、全体的には自分のイメージどおりのキムだったと思う。芯が強くて自分の運命を受け入れて、黙って耐えているような。静かに燃えているような。


 

市村エンジニア最後なのかと思うと感慨深かった。初演時から見ているけど、全体的に少しまるくなったかな? ご自身も小さなお子さんのパパだから、タムに対する視線が優しかったように思う。エンジニアは自身もハーフだから、タムに対してそういう思いがあってもいいと思う。前述したけど67歳。歌って踊る。スゴイ どうやら千秋楽のカーテンコールで続投したいという発言があったらしい? 再来年また市村エンジニアが見られるかも?

 

【Encore
カーテンコールでは市村さんのサービス精神が炸裂。何度も繰り返し楽しませてくれるのはさすが。最後はスタオベ


決して楽しい作品じゃないし、ラストもやっぱり納得できない。でも、好きな作品であることは間違いない。それは作り手やキャストのパワーを感じるから。そして楽曲の美しさ。「サン・アンド・ムーン」、「世界が終わる夜のように」など名曲ぞろい。やっぱり力のある作品だと思う。再演されたきっとまた見てしまのでしょう

 

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【dairy】『ガール・オン・ザ・トレイン』鑑賞(感想は後日)

2016-11-24 00:06:53 | dairy

【dairy】『ガール・オン・ザ・トレイン』鑑賞(感想は後日)

 

 

舞台挨拶が朝早かったので時間があったし、せっかくのレディースデイなのでもう1本見て帰ることに。見たいと思っていた『ガール・オン・ザ・トレイン』を見て来た。

 

 

ザックリした感想はtweetどおり。まだ『手紙は憶えている』書き終わってないし『ファンタスティック・ビーストと魔法地使いの旅』も見てるからその後。いつになることやら。ヒィー(>ω

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【event】『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』初日舞台挨拶

2016-11-23 23:02:35 | event

【event】『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』初日舞台挨拶

 

 

ジャパンプレミアやファンイベントなど応募したけどことごとくハズレ ぴあメルマガで初日舞台挨拶があることを知り、早速抽選を申し込んだ。見事当選 女性は1,100円で見れるレディースデイのこの日、2,000円(手数料込で2,600円 手数料高ッ)払って見に行ってきた~

 

 

 

エディ・レッドメイン、 ダン・フォグラー、アリソン・スドルのキャスト陣と、デビッド・イェーツ監督、そしてプロデューサーが登壇予定。


 

 

 

 

 

日本人ゲストがいなかったためか、指定された時間ならば写真撮影OKということで、写真を撮ったのだけど・・・ 2列目といえども2階席からではこんな感じ 一応肉眼では見えていたのだけど、iPhone6の限界


それぞれ一言ずつ挨拶してくれたけど、詳細は忘れてしまった エディは今年2度目の来日だけど、日本は特別な国だと感じると話してくれた。印象的だったのはアリソンで、小さな頃から日本が好きで、日本に来るのが夢だったと語り、なんと涙ぐんでいた! ちょっとうれしい


 

 

 

 

フォトセッションは法被着用後の鏡開き時だったので、アリソンのおみ足も、ラフな姿のエディも伝わらない エディ足長かった! しかも顔小さい!! まるで少年のようだった。


一応動画も撮ってみたのだけど、下のTwitter埋め込みから見れるかな? 


 

 

埋め込みから見れたら、順番に見るとエディからの一言が聞けるのだけど・・・ どうかな? これ続編決定しているのね? 今作の日本での盛り上がり具合によっては、また来日できるかもってことなのかな? また来てほしい~


で、見終わった後の感想は・・・

 

 

 

 

ザックリした感想はtweetどおり。記事は近々UP予定だけど、まだ『手紙は憶えている』終わってないし、「ミス・サイゴン」も終わってない。・゚・(ノД`)・゚・。  いつになることやら。とりあえずこっち先に書こうかなぁ・・・ 全部中途半端になっちゃうかな? (。-`ω´-)ンー

 

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【Googleのロゴ】フレデリック・バンティング生誕125周年

2016-11-14 00:04:37 | Google's logo

毎度のGoogleのロゴがこんなことに!



フレデリック・バンティング生誕125周年


すみません どなたでしょう?

毎度のWikipediaによりますと・・・


フレデリック・バンティング(Frederick Grant Banting)はカナダ人の医学者

医者インスリンの発見により1923年度のノーベル生理学・医学賞を受賞した。


とのことで・・・


バンティングは自分のアイデアを試し、犬の膵臓管を縛る手術を試してみたところ、

膵臓が部分的に萎縮した。

その後、純粋な分泌物を高濃度で含むことが期待される膵臓は、

弱いレーザーによって切除された。

抽出物を糖尿病の犬に投与すると血糖値が下がった。

数ヵ月の実験を経て、彼の方法が成功し、

抽出物によって糖尿病の犬を生かし続けておけることが明らかとなった。

 

犬の膵臓を用いた実験は非現実的であるとされ、すぐに牛の膵臓を用いるようになった。

膵臓管を縛る方法も廃れ、膵臓から分泌物を抽出する方法に取って代わった。

1921年から22年にかけて抽出物を得る方法が大きく改良され、

抽出物はインスリンと名づけられた。


インスリンは当時の医学で最大の進歩の一つで、数ヶ月のうちに大量生産されるようになった。

その結果、治療方法のなかった糖尿病に苦しむ世界中の数百万の人たちの寿命はすぐに大幅に伸びた。

レオナルド・トンプソンは世界で初めてインスリンの摂取を受けた患者である。


というのがインスリン発見の経緯で・・・


1923年、バンティングとマクラウドはノーベル生理学・医学賞を受賞した。


とのこと


1941年2月20日夜、イギリスに向かうために乗った飛行機(ロッキード ハドソン、T9449)が

ニューファンドランドで墜落して重傷を負い翌日息を引き取った。


なんと飛行機事故でなくなったのね

あら・・・


検索画面のロゴはこんな感じ


Happy Birthday

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【動画】浅田真央選手 フランス杯 2016 FS

2016-11-13 08:29:12 | 【動画】MaoAsada

【動画】浅田真央選手 フランス杯 2016 FS

 

 

パリで開催中のフランス杯2016での浅田真央選手のFS。かなりショックな結果 15歳でシニアデビューしてから、バンクーバーオリンピック後にジャンプの修正中だったシーズン以外でこんな状態になったのは初めてでは?

 

3A→2Aについては予定通りの実施だけど、3F-3Lo→2F、3Lz→2Lz、2A-3T→2A-3T(2ft)、3S→2S、3F-2Lo-2Lo→2F、3Lo→3Lo(hn)と、2A以外の全てのジャンプが2回転に抜けるもしくは、両足着氷、手をつくなどのミス。かなり膝の状態が悪いのでしょう。プロトコルを見ていないので、スピンやステップのレベルがどうだったのか不明だけど、全体的に体が重く動けていない印象だった。

 

以前はジャンプの出来とは関係なくつけられていたPCSも、現在はジャンプに連動している印象。これではPCSも落ちてしまう。とはいえGOEやPCSなんて勝たせたい選手に盛るだけの調整点でしかなく、ユロスポ実況がBeautifulでElegantと言っていたスケーティングについては全く評価されない現実に怒りを覚える

 

100.10点、合計161.39点で9位。それでも最下位ではないのはさすが。SPのキスクラでは笑顔を見せていたけど、今回は沈んだ表情のままだった。こんな表情を見たのは初めてかも。今後のことについては真央ちゃんが決めることだから、ファンはどんな決断も受け入れる! 真央ちゃんが笑顔になれますように・・・

 

動画をどうぞ

 

B.ESP. Mao ASADA 浅田真央 FS - 2016 Trophee de France (Trophee Eric Bompard)

ガンバレ真央ちゃん

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