【art】「つながる琳派スピリット 神坂雪佳」鑑賞 @パナソニック汐留美術館

パナソニック汐留美術館で開催中の「つながる琳派スピリット 神坂雪佳」を見てきた。以前琳派展で見かけた「金魚玉図」に強い印象を受けて、気になっていた雪佳の企画展ということで、絶対見たいと思っていた。夜間開館している金曜日に見に行ってきたー!
いつものように感想ツイートしておいたので、それに追記する形で記事として残しておく😌

パナソニック汐留美術館は新橋のパナソニック東京汐留ビル4階にある。ビル内にはパナソニック社員の方がいたりして不思議な感じ。初めて行ったけどこじんまりとした素敵な美術館だった。

神坂雪佳(
Wikipedia)は「近代の琳派」と呼ばれ、明治から昭和にかけて活躍。アールヌーボー全盛期のパリを見て、このデザインはもともと日本にあるのばかりだと思い、帰国してから琳派の研究をしたという人物。
琳派(
Wikipedia)とは一般的には、江戸初期に活躍した俵屋宗達(
Wikipedia)と本阿弥光悦(
Wikipedia)、江戸中期に彼らの作品に影響を受けた尾形光琳(
Wikipedia)と尾形乾山(
Wikipedia)、そして江戸後期に尾形光琳に影響を受けた酒井抱一(
Wikipedia)までの流れをいう。それぞれ100年くらいの時代の隔たりがあり、直接教えを受けたわけではなく、いわゆる私淑という形で継承されているのが特徴。
さらに酒井抱一の弟子であった鈴木其一(
Wikipedia)や、中村芳中(
Wikipedia)などの作品も加えて、神坂雪佳に影響を与えた流れを見せる。

神坂雪佳「杜若図屏風」
琳派の特徴の一つとしてデザイン化ということがあるのかなと個人的に思っている。グラフィックアート的な感じというのかな🤔 尾形光琳の「燕子花図屏風」も燕子花をパターン化して、それを連続配置していたりするのだけど、雪佳はさらにそれをシンプルにすることで、より現代的な感じにしていると思う。
光琳の「燕子花図屏風」も当時としては画期的だったのだと思うけれど、やっぱり現代の日本の家にあった場合、過多であるし、やはり古典的であると思う。でも雪佳の「杜若図屏風」であれば、違和感なく取り入れられる気がする。どちらが良いとか悪いとかではなくて、それを取り入れつつアップデートしていく感じが面白い。

神坂雪佳「八ツ橋」(『百々世草』より)
「八ツ橋」は『伊勢物語』(
Wikipedia)に登場する場面。琳派としては尾形光琳の「八橋図屏風」、酒井抱一の「八ツ橋図屏風」がある。抱一は光琳の作品から影響を受けまくりなのだけど、雪佳は一場面だけを切り取った感じにしている。
これは『百々世草』という木版画集の中に収められているため、このようなサイズ感になっているのだと思うけれど、これがシンプルでとても良い。この作品がエルメスの季刊誌の表紙を飾ったのだそう! 確かにちょっと西洋的でもある。

神坂雪佳「狗児」(『百々世草』より)
この犬のかわいさに惹かれて今回どうしても見たいと思った。この犬の感じは琳派というより、ちょっと円山応挙(
Wikipedia)っぽい気がしなくもないけど。手前の子は仙厓(
Wikipedia)っぽくもある。

神坂雪佳「白鳳図」
この「白鳳図」は昭和天皇即位の大礼に際して製作されたのだそう。説明表示には他の画家(名前を失念💦)影響と書かれていたけれど、個人的には伊藤若冲(
Wikipedia)の作品を思い出していた。とても美しい作品。

神坂雪佳「金魚玉図」
この「金魚玉図」が以前見て強い印象を受けた作品。金魚を正面から描いているのも斬新だし、この不思議な模様?も気になるし、下の多すぎる余白もすべてが印象的。
金魚玉というのは金魚を中に入れて軒先に吊るす丸いガラス入れ物なのだそう。だからこれも吊るされているのかもしれないけれど、紐のようなものも見えないし、位置的なこともあるけれどガラス玉というよりも満月のように見えてとても不思議。

神坂雪佳 図案 / 四代、五代 清水六兵衛 作 「水の図向付皿」
神坂雪佳は本阿弥光悦が徳川家康から拝領した土地に作った芸術を生み出す村「光悦村」に憧れを持ち、それを再現したいと考え、「競美会佳都美会」を創設。その佳都美会に参加していたのが清水六兵衛(
コトバンク)。
今回、もっとも気に入った作品。光琳水と呼ばれる水の流れを表す曲線をデザインした図案をもとにしたお皿。なんて素敵✨ 形がそれぞれ違うからしまっておくのが大変そうだけれど、もう見ているだけでウットリ。これ欲しい!

鈴木其一「藤花図」
鈴木其一は酒井抱一の弟子で、琳派の中で初めて直接の継承者となった人物。酒井抱一までを琳派とすることが多いけれど、個人的には鈴木其一がとても好きなので、ぜひぜひ系譜に加えてほしい! 其一を好きになったきっかけがこの作品。繊細で力強く、それでいてどこかデザイン的でもある。とても好き。
そして今回、神坂雪佳を見てたしかに琳派の芸術家だなと再認識した。17世紀から20世紀まで、一部を除いて私淑でつながる琳派。とても面白い!




出口付近には雪佳作品のスライド映像展示があって、そこは撮影可能となっている。頑張って撮ってきたけど、うまく取れず😢
土日は事前予約が必要だけれど、平日は必要なし。この日、11月6日(金)は夜20時まで開館。18時頃着いたと思うけれど、そんなに混んでなくて自分のペースでじっくり見れた。こんじんまりとした美術館だけど約80点の展示は見応えあったし、会社帰りにちょうどいい感じ。
琳派の流れと神坂雪佳が果たした役割や目指したものがとてもよく分かる良い企画展だった。

出口手前には小さな展示室がある。ルオー・ギャラリーというスペース。テーマごとに作品を選んで展示しているそうで、今回は"ルオーと人物像" というテーマの展示。10点ほどだけど楽しかった。最も気に入ってよく描いていたという「道化師」や、新収蔵の「老兵 アンリ・リュップの思い出」も展示されていた。好きかと言われると好きではないけど、嫌いにはなれない魅力のある不思議な画家。
ルオーと人物像:2022年10月29日~12月18日 @パナソニック汐留美術館 ルオー・ギャラリー
お土産はそんなジョルジュ・ルオー(
Wikipedia)の「道化師」を含むポストカード3種。犬やっぱりカワイイ💕
つながる琳派スピリット 神坂雪佳:2022年10月29日~12月18日 @パナソニック汐留美術館
つながる琳派スピリット 神坂雪佳|パナソニック汐留美術館