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【cinema】『アンヴィル ~夢を諦めきれない男たち~』

2009-12-25 02:04:37 | cinema
'09.11.27 『アンヴィル ~夢を諦めきれない男たち』@吉祥寺バウスシアター

これは見たかった。baruを誘って見に行く。上映館数が少なくレイト以外だと六本木か吉祥寺くらい。やっぱり音楽映画はバウスでしょうってことで、はるばる吉祥寺まで行ってきた。大好きなドイツパンのお店「Linde」で購入したトマトとチーズのサンドウィッチを食べながら鑑賞。ちなみに『色即ぜねれいしょん』と同じシアターだった。

*ネタバレしてます! ほめてます(笑)*

'80年代メタルブームの中、多くのバンドに影響を与え、リスペクトされながらも全く売れなかったカナダ出身バンド、アンヴィル。地元でバイトしながら細々とバンド活動を続けている。そんな彼らに密着したドキュメンタリー。これは良かった。イヤ、正直音楽バカオヤジを応援しよう的なちょっと上からな気持ちで見に行ったわけです。もっと正直に言ってしまえばそんなオッサンたちを笑ってしまおうという気持ちもあった。たしかに少年の心というには、あまりにチビッコ魂過ぎる彼らの姿に、大部分はそんなスタンスだっけれど、まさか彼らに勇気づけられてしまとは思わなかった(笑) そしてホロリと感動してしまった。

アンヴィルについてはこの映画を見るまで知らなかった。Rock大好きだけど、メタルは苦手・・・。曲もさることながらウェーブのかかった長髪と、あの独特のいでたちがちょっと・・・。ちなみに、この映画の主役ヴォーカルのスティーブ・"リップス"・クドローも、ドラムのロブ・ライナーも50歳を過ぎてもこの長髪。というわけで、メタル系のバンドはあまり詳しくない。さすがに、SLASH(GUNS N'ROSES)やラーズ・ウルリッヒ(METALLICA)くらいは知っていたけれど、インタビューに答えるメジャーメタルバンドの方々についてもよく分からなかったくらなので、もちろんアンヴィルについては知る由もなし。彼らの唯一の栄光シーンとして紹介されていたのが、'80年代に日本で開催されたメタル系バンドが集結した野外イベント。このイベントについては詳しく知らないけれど、確かにBON JOVIなど出演者は豪華。アンヴィルのライブもかなりの盛り上がり。ただし、やっぱりメタルは好きではないので、正直この映像を見てもグッとはこない。

この野外フェスと名盤と言われる'82年にリリースされたアルバム「メタル・オン・メタル」は同世代のバンド達にかなり影響を与えたようだけど、その下品ともいえるストレートな歌詞は地元カナダの大人たちには受け入れられなかったようで、彼らの歌詞が槍玉に挙げられるテレビ番組の映像なども紹介される。これがちょっとおかしい。FUCK'Nを繰り返しながら、ダラダラとおちゃらけた様子の彼らと、紹介されるあんまりな歌詞に顔をしかめる奥様方。その対比がすばらしくおもしろい。こんなことを言っては失礼ですが(笑) この感じは、彼らが後に出発したヨーロッパ・ツアーのプラハのロック・バーでマネージャーと彼らのやり取りにも通じるものがあっておかしい。中世のままのプラハ市街地は道が狭く複雑で、道に迷いやすい。以前、旅した時に迷った経験あり。ロック・バーでのライブ予定時間から2時間以上遅刻した彼らは、この映画のカメラが回っているため、ついついサービス精神が出てしまい、FUCK'Nを連発しつつおちゃらけた態度をとってしまう。そんな彼らに、苦虫を噛み潰したようなバーのマネージャーの表情が最高。しかし、この態度が裏目に出てしまい、ライブを行った彼らに対する報酬は夕食のみ。殴り合いの大喧嘩となってしまう。この番組からプラハ事件まで20年くらい経っているけれど、変わっていない感じが素晴らしい(笑)

そんな彼らにも長年のファンはいる。ファンの女性からヨーロッパ・ツアーに出ないかとの誘いがあり、5週間のツアーに出る。前述のプラハのロック・バー出演もそうだけれど、中にはヨーロッパ各地のフェスへの出演などもある。これはかなりの珍道中。なにしろマネージャーということにはなっているけれど、ただのファンの素人女性なわけだから、マネージメントはもとより、チケットの手配なども頑張ってはいるけれど、ちょっと甘いところもある。普通に考えて何万人単位の人が移動するフェス出演に際して、列車で移動することにしたのであれば、指定席を押さえるのは当たり前の気がするのだけど、もちろん手配していないので列車に乗れなかったりする。それでも彼らは彼女を責めたりしない。もちろん、その時にはどうするんだとキリキリしているけれど、カメラを向けると「彼女は良くやってくれている」とかばったりする。それは、リップサービスでも自分を良く見せようとしているわけでもないように見える。

結局、このヨーロッパ・ツアーでの報酬はゼロ。成果といえば、このツアーをきっかけにメンバーの1人がマネージャーの女性と結ばれたことくらい(笑) でも、リップスはツアーは失敗じゃないと言う。自分は好きなことをしているんだから、幸せだなのだとも言う。彼のインタビューは終始こんな感じで、いろいろ愚痴を言ったり、クソみたいな人生だなどと言いながら、最後には必ず「でも、自分の好きなことができているから不幸じゃない」と言う。一見すると負け惜しみに聞こえるかもしれないけれど、決してそういう風には見えない。そして、この言葉を素直にうらやましいなと思う。自分はそんなに好きなことが出来ているんだろうか。果たしてここまで情熱を傾けるものがあるのだろうか。そして、同時にこの考え方こそが、彼らを突き動かしているものなんだろうと思う。"好きだからやる"単純にそれだけ。50歳を過ぎているオッサンが自ら売り込んでフェスに出演し、ギャラももらえないというのは屈辱的だと思う。でも、バンドとして演奏が出来るならやろうと。バンドですと言っても、アルバムも出せず、ライブも出来ずではバンド活動ができているとはいえない。出演の場があるだけでもいいと割り切れるのは、それはスゴイことなんじゃないかと思う。なりふりかまわずって言うけれど、ここまで熱くなれるものがあるのなら、それはそれでうらやましい。

バンドとしてほとんど無名である彼らには、マネージャーもいなければ、レコーディングをしてくれる敏腕プロデューサーもいない。リップスによれば彼らの中で最高の音を作ってくれたのはクリス・タンガリーディズだった。彼にデモテープを送り、ドキドキしながら待つリップスはまるで少年のよう。結果はとっても良いので是非会いたいとのこと。急遽、イギリスへ飛ぶリップスたち。ただ、レコードの製作には200万かかるという。レコーディング費用として200万というのがどの程度の規模であるのかサッパリ分からないのだけど、イギリスの田舎で暮らすクリスの自宅を改造したようなこじんまりとしたレコーディング設備や、今では当時の面影もないくらいハゲのメタボオヤジと化したクリスの姿を見ると、これはだまされているのではと不安になったりする。こんなダメ人生を生きている彼らが、さらにどん底に落ちる姿は見たくない! なんて思っていたら、このクリスかなり真剣に彼らに向き合ってくれるのだった。ということは彼らの音はそれだけ力があったということ。しつこいようだけど、好みではないのですが(笑)

50歳を過ぎたオッサンたちではあるけれど、200万などというお金はもちろんない。アンヴィルのメンバーは全部で4人、オリジナルメンバーはリップスとロブのみ。4人で200万なら1人50万。でも、ないのです・・・(涙) まぁたしかに、50万はそんなに簡単に出せるお金ではないけど。しかたなく、リップスは長年のファンの男性が経営する会社でバイトをする。電話で商品を売りつけるという怪しいバイト。リップスは割り切ってやろうとするけど、上手く行かない。思いもかけず自分は真面目な男であることを悟ってビックリするリップス。どんなに下品な言葉を連発しようが、ふざけたいでたちで演奏しようが、いい加減に見える態度を取ろうが、自分の信念に従いやりたいことに突き進む彼らはやっぱり真面目なのでしょう。このエピソードは意味がなさそうで、実はリップスの人となりを表すのに役立っている。やっぱりダメじゃないとは言い切れない彼らの人生を見ながらも、リップスをかわいらしく感じているのは、基本真面目な人だからなんだと思う。

結局、200万はリップスの姉が都合してくれる。リップスとロブそれぞれの家族の対比がいい。2人はともにユダヤ人家庭に育った。ロブの父はアウシュビッツの生き残り。ロブの姉は弟がいつまでも夢を諦めないでいることをよく思っていない。もちろん、それは彼を思うがゆえだけれども、もう一つには隣でインタビューに答えるロブの妻を気遣ってという部分もあるんだと思う。ロブの妻は彼の夢を応援したいけど、限界を感じてもいる様子。でも、やっぱり自分は彼と同じ夢を見ているんだと思うと語る。リップスの家はエリート一家。リップスの兄弟はやんちゃな彼を心配しながらも、彼の生き方を認めている。もちろん、認めるまでは葛藤があったようだけど。姉がお金を出してくれたのは、彼が彼の夢や人生を応援しているから。それは、メジャーになるということではなくて、彼が納得いく人生を送って欲しいということ。そして、彼の妻もその気持ちは同じ。自分はミュージシャンのリップスと結婚したのではなく、彼自身を愛していると語る彼女にホロリ(涙) 家族の絆というとちょっとクサイけれど、誰かを思いやる気持ちってやっぱり人を感動させる。

姉の融資を元にレコーディングに臨む彼らの姿がおかしい。意気揚々とイギリスに乗り込み、少年のようにハシャギながらレコーディングを始めるけれど、作業が進むにつれて行き詰ってくる。特に曲作りやバンドの中心であるリップスの負担は大きく、そのストレスのはけ口として幼馴染のロブに当り散らすことになる。2人は中学生の頃からの親友。ロブの部屋に入り浸って、セッションしていたころから、2人はずっと一緒にバンドを続けてきた。これはもう家族のような存在。人が本当に本音を言えるのは家族だけなんじゃないかと思う。正直に言えば家族にだって言えないことは多い。そして、家族にさえ"自分"を演じなければならないことが、ストレスとなって薬や犯罪に走ってしまう若者が増えているのだと思う。「中途半端なヴォーカルで満足しているなんてよく言えるな! 俺はお前にそんなこと言わない」とか、「いつもいつも八つ当たりされてうんざりなんだよ」とか言い合う2人に対し、「それぞれが大げさに捉え過ぎてしまって、お互い誤解してしまっている」と仲裁に入るクリス。クリスが真面目に諭せば諭すほど、2人のケンカが子供っぽくて笑ってしまう。少年の心というよりこれは少年のケンカだから(笑) と思うけれど、よく考えると、家族でもない他人にここまで真剣に向き合って、自分の気持ちをストレートに言えるなんてうらやましいと思う。大人になればなるほど腹の探り合いで、KYなんて言葉が流行るくらい、人の顔色を伺いながら生きていかなきゃならない現状を思えば、本来そんなことは苦手な自分としては、丸ごとの感情をぶつけて、まるごと受け止めてくれる相手がいることはうらやましい。もちろん、丸ごと感情をぶつけ合えば、ケンカにはなるけれど、まともにケンカもできない間柄の"ともだち"の数が多いよりは、本音をぶつけ合える"親友"のいる彼らがうらやましい。

それもきっと彼らが"夢"に向かって生きているから。ドキュメンタリーの中では彼らの夢は"売れること"となっているけれど、30年も売れることを夢見て生きているのは、すでに夢の中にいるんじゃないだろうか。うまく言えないけど。そして売れたからといって彼らの夢は果たされたことになるんだろうか。もちろん区切りにはなると思うけれど、売れようが売れまいが、彼らの(音楽)人生は続くわけだし。なんて事を考えているうちにアルバム「This Is Thirteen」は完成する。やっぱり曲は好きになれないけれど、彼らの言うとおり音は抜群に良くなっている。なにより音がクリア。あえてノイズを残したりするってことがあるけど、以前の作品はそういう問題じゃないくらい音が悪かった。1つ1つが鮮明だし、ギターの音とかがハッキリ聞こえる。そして音に厚みがある。やっぱりプロデューサーの腕って大切なんだなと思う。このアルバムを持ってレコード会社やラジオ局を回る彼ら。でも、彼らの音は時代に合わないと言われてしまう。よく分からないけど、メタルはやっぱり世界的にも下火なんですかね・・・。

そんな彼らのアルバムを聴いて日本のプロモーターからフェス出演の依頼が来る。幕張メッセで毎年行われているLOUD PARK。メタルの祭典であるこのフェスはかなり有名。もちろんメタルファンではないので行ったことないけれど、ここに出演できるのはスゴイことだと思う。まぁ、残念ながら昼間の出演ではありますが。ヨーロッパ・ツアー中の北欧のフェスでは1万人入る会場で、彼らのステージの観客は146人だった。観客が5人だったこともある。出演前、リップスは「こんな遠くまで来て、観客が5人だったらどうしよう」と不安をもらす。結果は、熱狂的な観客に迎えられる。大盛況。ヨーロッパ・ツアーでも、いろんなミュージシャンに自分から声を掛けるけど、声を掛けてくれるファンはなぜか日本人だけ。日本はメタル大国なんでしょうか? まぁ、いいけど(笑) この大盛況のライブ映像で映画は終わる。リップスの前フリからのこの映像はあまりに王道で、ちょっとあざといかななんて思うけど、彼らの音楽活動のほんの一部だけれど垣間見た後では、素直に「よかったねぇ~」と言いたくなってしまう。

とにかく、ダメ人生ではないとは言い切れないけれど、コレしかないと思えるものがある人生と言うのはうらやましい。定職についていないとダメ人生だと思いがちだけれど、本人がそれで幸せなのなら人がとやかくいう問題ではないし、決してダメ人生ではない。リップスの語る「誰もが年を取る。それが現実だ。腹は出て顔の肉は垂れ、髪は抜け時間はなくなる・・・ だから今やる。今から20年後、30年後、40年後には人生は終わるんだ。やるしかない。」の言葉に感動。そうなんだよね。長髪だけど後頭部の薄くなったリップスだからこそ説得力がある。成功した人の言葉だけが人に感銘を与えるわけじゃない。だってこれは彼の"実感"だから。少なくとも60年後、確実に自分はこの世にいないだろう。だったら今、やりたいことをやらなきゃ損。別にそれは、今からなれもしないミュージシャンを目指すってことじゃない。人の道に反していなければ、自分の思うとおりに生きていいんだと思う。家族や周りの人に多少迷惑をかけていたとしても、それでも側にいてくれているのだとしたら、それは自分の生き方を認めてくれているからなんだと思う。もちろん迷惑をかけていいというわけではないけれど。

というわけで、メタル馬鹿オヤジにすっかり感動させられてしまった。そして、意外にも教訓を得て、勇気づけられてしまった。音楽に全く興味がないと見ていて辛い部分はあると思うけれど、その生き様に勇気づけられること間違いなし。彼らの生き方そのものが「やるしかない」だから。オススメ!

とはいえ、すっかり書くのが遅くなってしまったので、もう上映終了してしまったかも


『アンヴィル ~夢を諦めきれない男たち~』Official site

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【cinema】『ウルルの森の物語』(試写会)

2009-12-17 01:45:57 | cinema
'09.12.11 『ウルルの森の物語』(試写会)@朝日ホール

yaplogで当選。いつもありがとうございます。『マリと子犬の物語』のスタッフとキャストが再結集した作品。前作は未見だけど、緑の芝生の上にペタンと体を伏せて、顔をはさむように前足をちょこんと置いて、見上げるようにこちらを見つめるウルルのチラシのかわいさに惹かれて応募。見事当選した。

18:00開場だけど、ぜんぜん入場がかからない。朝日ホールは有楽町マリオンの11F。入口を入った11Fのフロアにはギャラリーがあって、ホールはさらに上、つまり12Fになる。ホールの階にもトイレはあるのに、今回はこの階のトイレしか使えないとのこと。変だなと思っていると、開場時間を過ぎた頃、エスカレーターを上がる一団が。よく見えなかったけど、前に並んでいた女性が「深キョンだ」と! 試写状には特に舞台挨拶ありとは書いていないけど・・・。などと思いつつ、10分くらい過ぎて入場。本日は全席指定。とりあえずロビーでおにぎり食べて、トイレに行くも階下のトイレは長蛇の列。8Fにもトイレがあるとのことで急いで降りる。前を行くオバさまによると、紀子様がいらっしゃるとのこと。なるほど、だから厳重警備なのか。席は2列目の右の方。最前列は取材席なので実質1列目。後ろを振り返ると段差を上がったところに、関係者がズラリ。その中央から2人目に主演の船越英一郎、その隣に深キョン。深キョンかわいい! 顔小さい。アナウンスがあって紀子様と眞子様ご入場。紀子様は茶色のわりと地味めなスーツ。眞子様も黒系の服装だったけれど、ちょっと遠かったのであまりよく見えず。というわけで、なんと紀子様、眞子様と見るロイヤル試写会となった。

*ネタバレあり。 ごめんなさい! かなり辛口です

「小学生の昴としずくは母が入院したため、北海道に住む父の元へやってくる。野生動物救命所で働く父は、5年ぶりの再会よりも動物保護を優先するほど仕事に追われていた。ある日、ネイチャーカメラマンの叔母千恵と森で遊んでいる時、傷ついた子犬を見つける。父の手当てにより元気になった子犬をウルルと名づけ世話し始めるが、ウルルは絶滅したエゾオオカミである可能性が高まって・・・」という話で、これはウルルを通して絆を取り戻していく、家族再生の物語。という、この一言だけですべてを言い切ってしまったという感じ。そのくらい王道ストーリー。正直、結構泣いてしまったけれど、それは子犬ウルルの名演技によるもので、家族再生はちょっととってつけたみたいな感じだったかも。それでも泣いてしまったのは、涙目になってしまったからだけではないと思うけれど・・・。

ウルルというのはしずくがウルフと言えなくて、ウルルになってしまったことから名づけられた。結局、映画の中ではウルルがオオカミであるという科学的証明はできず、かなりの高確率でオオカミだと言うにとどまっているけど、ウルルがオオカミじゃないと成り立たないファンタジー部分があるわけで、その部分を信じる、信じないは自由ですというスタンスで描くとしたら、こんな感じでいいのかもと思うけど、なんとなく全部がとってつけたようになってしまったかなぁ。こういう言い方はもしかすると、とんでもなく上からな感じになってしまうかもしれないけれど、小さな子供からお年寄りまで幅広く、普段あまり映画を見ない人たちにもウケることを狙ったのであれば、分かりやすく作られているのかなと思うけれど。うーん、上手く言えないけど。もちろん一生懸命作られた作品だと思うし、子供だましというつもりはぜんぜんない。でも、ちょっと安易に泣かせどころや、山場を盛り込み過ぎな気がするし、仕事を優先してしまう父親像も類型的で、しかも何故そこまで野生動物保護に力を注いでいるのか、掘り下げがあまりないので、なんとなく落ち着きのない人に見えてしまう。

ウルルがエゾオオカミならばそれでいいし、だから研究対象として重要であって、そういう機関から追われるのも分かる。ウルルとの間に絆が生まれた幼い兄妹が、なんとかして森に返してやりたいと思う気持ちも分かる。やみくもに山に返すのもどうかということで、ウルルのお母さんが待っているであろう"ホロケシ"というオオカミの国を目指すという設定もいいと思う。『ロード・オブ・ザ・リング』は大好きだけど、特別ファンタジー好きではない。でも、ウルルが幸せに暮らせるならばホロケシがあって欲しい思うし、子供たちが心からウルルの幸せを願って、伝説の土地を信じるならば、そういう世界はあるのですと言ってもと思う。だから、とってつけたようだと言っているのは、このファンタジー部分のことではなくて、たぶん本当に見せたかったであろう家族愛の方。

正直に言ってしまうと、いろんな要素を盛り込みすぎて、一つ一つのエピソードがかえって希薄になってしまった気がする。両親が別れた理由にしても、実は奥が深いように描きたいのかもしれないけれど、自分の心臓病のことを隠したまま結婚したり、そんな体では足手まといになるから夫の夢のために身を引いたというけれど、子供を生むというのは女性の体には大変な負担なわけで、2人も生んでいるのに夫が何も知らないというのは説得力がない。というように、なんとなくちぐはぐ。ウルルを育てることによって子供たちが命の大切さを知り、父親との絆を取り戻すのであれば、瀕死のウルルを徹夜で看病するシーンを山場にするか、後の冒険シーンを山場にするか、どちらか一つでよかった気がする。なんとなく、どちらもとってつけたようになってしまっていたように思う。全体的に見せ場や山場は盛りだくさんだけど、やけにあっさり解決してしまう。冒険中も、崖崩れに遭ってみたり、足を滑らせて川に落ちてみたり、小学生にしては大アドベンチャーなのに、わりとあっさり解決。川に落ちちゃうのは実は船越さんで、かなり体格のいい船越さんが服を着たまま川に落ちた場合、いくらウルルが流れ着いた浅瀬に子供たちを誘導したとしても、小学生の兄妹が岸に引き上げるのは無理でしょ。というツッコミがヤボなのは承知しておりますが(笑) ちょっとそういうご都合主義的な感じが気になってしまった。

ウルルをオオカミに設定したのはホロケシを描きたかったのだと思うし、そこに至る道のりがあまりにあっさりしているのはどうかと思うけど、その障害となるのは何も崖崩れじゃなくてもいいはず。一つ一つのエピソードがありがちで、あっさり解決するので、全体的に盛りだくさんなわりにサラリとした印象。両親の離婚、母の心臓の手術、自分たちよりも仕事を優先する父、助けた子犬が実はオオカミ、ウルルを狙う大人との闘い、あるか分からないホロケシへの冒険と、小学生にしてはかなりドラマチック(笑) でも、あっさりしているのは何故だろう? なんて、ちょっと言い過ぎかな。ごめんなさい。イヤ別に、娯楽作品ということならいいんです。山場てんこ盛りであっさり解決でも。でも、ウルルがとってもかわいかったので、ウルルの健気な演技をもう少し生かしてあげたいなと思ったもので・・・。

キャストは・・・。うーん。子供たちは特別上手いとは思わなかったけど頑張っていたと思うし、下手ではなかった。特にしずくの北村沙羅ちゃんは、児童劇団のお稽古どおりという感じだったし。よく知らないけど(笑) もちろんホメてます! 何といっても2人とも健気でかわいいので、それだけでOK。ただし、2人が物語を引っ張っていくという展開は、ちょっと荷が重かったかな。深キョンはかわいいけど・・・。子供たちより仕事を優先してしまう兄に代わって、甥っ子と姪っ子の面倒を見るしっかりものの叔母っていう風には見えないかな(涙) 深キョンのことが好きでいろいろ便利に使われているというありがちな役どころで、よゐこの濱口が出てたけど、何故? イヤ別にいいけど。下手ではなかったし。でも、お笑い芸人がよくドラマや映画の脇役で出演しているけど、たいてい浮いているように思うんだけど・・・。例えば『空気人形』の板尾さんみたいにジャンルを超えても個性が生きて"この人"ってことで使うなら分かるんだけど。光石さん・・・。とっても損な役だった。ウルルを研究対象としてしか見ない悪役だからってことではなく、船越さんのウルルを森に返すために頑張る子供たちを見守ってあげたいからという連絡を聞き、捨て台詞を残してどこかに行ったきりという、何とも中途半端な退場のしかたで終わってしまったので・・・。まぁ、諦めたことは分かりますけど(笑)

そして、なんとなく全体的に空回りしてしまった理由の一つは、 正直に言ってしまいますが、船越さんの大げさな演技によるものかと・・・。ごめんなさい! でも、これはちょっと・・・。このお父さんが20代~30代前半なら迷走しててもいいと思うし、熱いのもいい。でも、船越さんが演じているなら、どんなに若く見積もっても40代前半が限度でしょう。親になったことないので、エラソウなことを言う権利はないし、親だっていくつになっても悩んだり、迷ったりしながら生きているんだと思う。でも、もう少し落ち着いて欲しかった(笑) この映画は動物モノであり家族モノなのでサスペンス調ではちょっと辛いかも(涙) 子供たちの行方が分からない時も、周りはあっさりしているのに、1人ボンネットに手を叩きつけて「どこへ行ったんだあいつら!」と叫ばれても・・・。ホロケシに行くには霧が濃すぎて危険だと力説するわりに、全く危険そうに見えないのは別に船越さんの演技のせいではないけど、そういう見せ場のシーンも含め、おそらく計算して入れているちょこっとした演技も、周りのほとんど淡々とした感じの演技から浮いてしまっている。どちらがいいかは別として。でも、子供たちより野生動物を優先してしまうのも、空回りしている人にしか見えない。って、言い過ぎかなぁ・・・。ホントにごめんなさい。サスペンスの船越さんは好きなのですが。

ホントに辛口でごめんなさい(涙) ただ、ホントにウルルが健気でかわいくて、演技が上手かったので、なんとなく不憫に思えてしまって。この映画で一番自然な演技だったのはウルルかもというくらいウルルいいです。だから、兄妹がウルルを森に返すため、心を鬼にして泣きながらウルルにビー玉を投げつけるシーンは号泣してしまった。ここ、子役2人の演技も良かった。リュックの中に入っているウルル。前足で気遣うようにしずくの顔を触るウルル。もう目ウルウルです。お兄ちゃんの「生きろ!」の言葉に応えるように、気高くこちらを見るウルルの姿は見る価値ありです!

北海道の自然も美しくて、時々映る野生動物たちもかわいい。野生動物と人間の共存の難しさも伝わってきた。野生動物たちが命を落としたり、傷ついたりする原因の90%は人間のせいなのだそう。だからこそ、人間が共存のあり方を考えるしかない。だからこそ船越さんの仕事は、その辺りのことを訴えるものなんだと思うんだけど。とにかく、ウルルを守りたいという思いが、ほんの少しでも野生動物保護へ向けられればいい。それには私のように演技が、脚本がとエラソウに言わず、素直に見ればいいのかもしれないけれど。

個人的には手放しでオススメとは言えないけれど、動物好きでファミリー向け映画(バカにしてません!)が、見たいという人にはいいと思う。小さい子供たちには分かりやすいかも。大ベテラン大滝秀治さんが良かった。そして、なによりウルルがかわいい!


『ウルルの森の物語』Official site

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【Googleのロゴ】エルジー・クリスラー・シーガー生誕115周年

2009-12-09 01:16:05 | Google's logo
Googleのロゴがこんなことに!



エルジー・クリスラー・シーガー生誕115周年

すみません どなたでしょう?

毎度のWikipediaによりますと・・・

エルジー・クリスラー・シーガー(Elzie Crisler Segar)はアメリカ合衆国の漫画家である。
ポパイの作者として知られる。

とのこと! まぁ、このロゴなんだから当然そうだよね(o´ェ`o)ゞ

ってことで、

Happy Birthday


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【cinema】『パブリック・エネミーズ』(試写会)

2009-12-08 23:53:12 | cinema
'09.11.30 『パブリック・エネミーズ』(試写会)@よみうりホール

yaplogで当選。いつもありがとうございます。全米ではけっこう前に公開してて、Showbiz countdownの全米チャートでは、ジョニデ作品としてはあまり評判良くなかったし、マフィアモノもそんなに惹かれないけれど、やっぱりファンとしては見ないわけにはいかないでしょうってことで応募。見事当選した。

*ネタバレあり。そしてやや辛口です。

「大恐慌時代のシカゴ、鮮やかな手口で次々銀行を襲い、弱者からは決して奪わないジョン・デリンジャーは、FBIからパブリック・エネミーズ(社会の敵)No.1として指名手配されながら、民衆の人気を集めていた。そんな人生の絶頂期、1人の女性と出会うが・・・」という話。うーん。アメリカ暗黒時代のマフィアやギャングモノというようりは、どちらかと言えばチラシなんかにあるようにラブ・ストーリーなのかなと思う。そういう意味では主役2人が良かったと思うし、男臭い話を男臭プンプンに描いているわけではないのに、きちんと美学なんかは伝わってきたと思う。2時間21分とけっこう長かったけど、飽きたりすることもなく見ごたえがあった。でも、おもしろかったかというと微妙かなぁ。

ジョン・デリンジャーは実在の人物。映画になる前は名前も知らなかった。Wikiで調べたところによると、ほぼこの映画通りの人生だったよう。冒頭、デリンジャーは刑務所を襲い、仲間を脱獄させる。これも本当にあったことらしいけれど、どこまで本当で、どこから脚色なのかは不明。でも、刑務所内の作業に使われる荷物にピストルを紛れ込ませたり、刑事に捕まったふりをして刑務所内部に入り込んだりと手際は鮮やか。でも、静止も聞かず警官を殴り続けた仲間に、逃走する車の中で銃をつきつけるも引き金は引かず、一瞬許したと見せかけて、直後車から突き落とすという、わりとこういったギャング映画にありがちなシーンなんかも、なんとなくしっくりこない。迫力もあるんだけど何でだろう。なんとなくとってつけたような印象。スピード感もあるし、ダメなわけではないんだけど、なんとなく引き込まれない。

でも、この流れからの銀行強盗のシーンは良かったと思う。スピード感があって流れるような鮮やかな手際で銀行内を制圧していく。ソフト帽に黒のロングコート、機関銃を片手にひらりとカウンターを越えるジョニデがかっこいい! そして、ここで流れる音楽がメチャかっこいい! 全体的に音楽はスゴイ良かった。Jazzとか当時の曲も多いように思うけど、オリジナルもパンクっぽかったり、パブロックっぽいのにクラシカルな感じがしてかっこいい。このシーンのかっこよさは、後の強盗シーンとの対比となっている。当時を再現した銀行の内装が素敵。天井の幾何学っぽい模様、窓の上のアーチ状の装飾。鉄の曲線を生かしたシャンデリアなど、全てがアール・デコ。そこにソフト帽を被った黒のスーツ&ロングコートの男たちが押し入る感じは、犯罪者ながらかっこいい。

もう1人の主役FBI捜査官パーヴィスがやり手であるにもかかわらず、なんとなくヤボったいのもいい対比となっている。こちらは分かりやすく白っぽいスーツを着ているのも印象的。この配役がクリスチャン・ベイルということが、この映画をなんとなく地味にしてしまった原因の気もする。ただ、ギャング特にデリンジャーのスタイリッシュさに対して、FBI特にパーヴィスをヤボったくしたかったのなら正解だと思うし、やっぱり演技は上手い。ってフォローになってないか(笑) 後にパーヴィスは助っ人としてベテラン捜査官を3人呼ぶけれど、彼らの1人スティーブン・ラングが渋くて良かったので、より存在感が薄れてしまった感はある。でも、デリンジャー側にしても、FBI側にしてもそんなにスタイリッシュでかっこいい人たちとして描こうともしていない気もする。悪名高いエドガー・フーバーはホントかっこ悪くて嫌なヤツに描かれてたし(笑) ただなぁ、フーバーにしたって、パーヴィスにしたって、それなりに名を残した人たちなんだから、嫌なヤツだろうが、正義漢だろうが、それなりにかっこよかったと思うし、カリスマ性はあったと思うんだけど、それがあんまり感じられなかったのは残念。それがこの映画をなんとなく地味にしてしまったんだと思う。

この映画の主軸となる恋愛面に関しては、まぁラブ・ストーリーではあって、本人たちにとっては命がけの恋愛なのでしょうが、普通の恋愛ではないわけで、いわゆるウットリと酔いしれてしまう純愛モノではないけれど、とにかくビリー役のマリオン・コティヤールが良くて、落ちていきながらも毅然とした美しさがあって、デリンジャーが彼女を愛する気持ちはとってもよく分かった。フレシェットとフランス系の名前ながら、ネイティブ・アメリカンの血を引く彼女はエキゾチックで、目の力が印象的。その生い立ちから自分の人生は閉ざされていると思っている。そういうのをわずかなセリフと演技で感じさせるのはスゴイ。彼女は最初デリンジャーを裏切るけれど、それでもデリンジャーが彼女を信じる気持ちがすごく分かる。その理由は後のシーンでよりハッキリと分かるけれど、その部分も含め、デリンジャーは彼女に母を重ねているんだと思う。デリンジャーの生い立ちについてはほとんど語られないので、後付で知識もあるけれど、映画の中で度々彼が取り出すロケットの写真は若い母親だと思う。その母に似ているという事ではなくて、絶対に自分を裏切らない存在であるという信頼なんじゃないかと思う。そして、それは下降していくデリンジャーの人生の中で、唯一信じられるものだったんだと思う。

デリンジャーの生い立ちについては全くといっていいほど語られない。だから彼の人物像がイマヒトツ伝わってこない感じはあるけど、彼の人生を描くというよりは、彼がいかにして死んだかということを描いているんだと思う。それはビリーとの恋愛も含めて。変な言い方だけど・・・。冒頭の脱獄シーンから続いて、銀行強盗を成功させると、シカゴで意気揚々とクラブに繰り出す彼には、様々な仕事の誘いが舞い込むけれど、意に染まない様子。そんな彼には、この稼業は長続きしないから将来のことも考えろという言葉も腑に落ちない。今が楽しければいいと思っていた彼は、後にこの言葉を身に染みて理解することになる。犯罪者が安定した将来を考えるなんて、ふざけるなと思うけど(笑) でもまぁ、1人の人間としてはやっぱり将来はあるわけで、時代が変わればマフィアの世界のルールややり方も当然変わっていく。逮捕され脱獄した彼を待っている者は少なかった。銃を乱射しての銀行強盗などという荒っぽい手段ではなく、もっと組織力を生かした効率のよい仕事に変わっていた。組織の助けを得られなければ、武器も手に入らず、強奪したお金を洗浄してももらえない。銀行強盗に悪も正義もないけれど"汚れた金しか奪わない"、"仲間は決して裏切らない"というルールが民衆に支持され、ヒーロー扱いされていたデリンジャーも、形勢が変わってしまえば傍流であって、となれば意に沿わない仕事もしなければならなくなる。そうなった時、彼を支えるのは愛するビリーとの生活。そしてそれは要するに安定した未来。やっぱり人は愛する人と穏やかに暮らすことが幸せということなんでしょうか。でも、それに気づいた時には遅い。変わり身早く方向転換したマフィアが正しくて、デリンジャーが間違っているということでもない。どっちも犯罪者だし、映画的にも将来のためにこつこつ貯金しているマフィアって・・・。まぁ、ある意味おもしろいかもしれないけれど(笑)

デリンジャーの人生は悪い方へどんどん転がっていく。鮮やかな手口で脱獄したものの、スカッとするのはここまでで、愛するビリーには監視がついていて会うことはできず、盗聴されているので電話で話すこともままならない。組織の助けは期待できず、急ごしらえの仲間で銀行を襲うも成果は少ない。FBI捜査官パーヴィスの追跡はしつこく、すぐに逃亡先を見つけられてしまい、辛くも逃亡するも仲間のほとんどを失ってしまう。完全に行き詰まり。命がけで再会したビリーも、FBIに捕まってしまう。決して彼を裏切らないであろうビリーを救うため、彼はある決意をする。それが彼の3つのルールのうちの1つ"愛した女は最後まで守る"ということなのかなと思う。彼の最期についてはほぼ映画に描かれたとおりだったそうで、彼を裏切ったアンナ・セージの事情についても同じ。その時、FBIの指示で彼女が身に着けた赤いドレス(映画ではスカート)から、関わると身を滅ぼすという意味からファム・ファタール的な女性を"赤いドレスの女"と呼ぶようになったのだとか。この時、デリンジャーが見ていた映画『男の世界』もそのままだそうだけど、実際は彼がこの映画のクラーク・ゲーブルの死に際の美学に共感し、自殺のような形での死を覚悟して映画館を後にしたのかは不明。でも、映画としてはとっても良かったし、何もかも失った彼が愛した女性を最期まで守ったのだと思えば、やっぱり感動した。

でも、2時間21分もあったわりには、ギャングの銃撃シーンなどが多く、デリンジャーの生い立ちや背景みたいなものがあまり語られなかったので、なんとなく彼に魅力を感じるまでにはいたらなかった気がする。銃撃シーンにしても迫力はすごいんだけど、例えば『ダークナイト』の冒頭の銀行強盗シーンのような恐怖感はなかったかなぁ。当時のシカゴを再現した美術やセットは見事で、その豪華だけどどこか暗い感じもすごくいいんだけど、なんとなく画的にこじんまりとした印象。キャストがジョニデとクリスチャン・ベイルくらいしか知らなくて、ギャング側なのかFBI側なのか区別がつかないし、ちょっと伝説のアウトローのブレーンとしては重厚感がなかったかな。マフィアモノはそんなに好んで見るジャンルではないので、あまり詳しくはないけど、例えば『ゴッドファーザー』みたいな重厚感はない。まぁ、アレと比べてしまうと、どんな映画もちょっと辛いのかもしれないけれど・・・。でも、だったらいっそのことビリーとの恋愛部分をしっかり描いたほうが良かったんじゃないかと・・・。ビリーに対する愛情も信頼も伝わっては来るし、一瞬で彼女の資質を見抜くという描き方も、デリンジャーのすごさであるってことでOKなんだと思うんだけど、もう少し2人の関係を丁寧に描いても良かった気がする。

キャストはまぁ全体的に良かったかなという感じ。クリスチャン・ベイルは上手いと思うんだけど、何でいつもこう沈んでしまうんだろう。上手く言えないんだけど、主役が悪なら、彼はもう一人の主役として絶対的な正義であって、確かにそういう役なんだけど、なぜかかっこよくないんだよな。多分、クリスチャン・ベイルのパーヴィスがスカッとしなかったのも、この映画がイマヒトツしまらなかった原因の1つな気がする。ベテラン捜査官役のスティーブン・ラングが渋くて良かった。登場シーンがかっこいい! これ、多分西部劇へのオマージュなんじゃないかと思うんだけど違うかな。ラスト彼がビリーに伝える1言がいい。ホントはデリンジャーの言葉だから、実はデリンジャーがかっこいいんだけど、このセリフを彼に言わせたのは大正解。これは泣けた(涙)

大好きなジョニデは今回手放しで良かったとは言えないかも。ファンとしては姿を見るだけでOKっていうところは正直あるのだけど、さすがにそれだけというわけにも・・・(笑) うーん。かっこいいのは間違いなくかっこいいし、銀行強盗シーンや相手に凄むシーンなんかは迫力もあるんだけど、悪じゃないというか・・・。悪漢ゆえのカリスマ性みたいのがなかったかなぁ。デリンジャーはヒーロー視されていたとはいえ、犯罪者なのだから、やっぱり悪の魅力がないとダメな気がする。当時の流行だったのかも知れないけど、サイドを刈り上げた髪型がちょっと・・・。上手くいえないけどモックンみたいな感じになってしまっていた。決してモックンがダメだと言っているんではないです! モックンって清々しく、正しい好青年というイメージなので。モックンを連想してしまったのが敗因だったかも(笑) ただ『男の世界』からラストまでの流れはさすがジョニデ! ほとんどセリフもなく、表情もあまり変化しないのに、デリンジャーがクラーク・ゲーブルに共感し、覚悟をする感じがきちんと伝わってくる。それは、彼女を守るとことと同時に、自分の美学を貫くということでもある。それがちゃんと伝わってきた。ここのジョニデの演技は見事!

そして、今回一番良かったのはマリオン・コティヤール。正直、ジョニデもクリスチャン・ベイルも食われていた。彼女の一番の見せ場は激しい尋問シーン。巨漢の捜査官はマフィアの情婦なんて女性として扱うに値しないという態度。怒鳴りつけるのは当たり前、トイレにも行かせず、殴る蹴るの暴行。でも、彼女は最後まで彼の居場所は言わない。一度は落ちたかに見えて、それもニセの情報。この演技はスゴイ。スゴイ緊迫感。パーヴィスがデリンジャーの居所を掴み、尋問室に踏み込んで、暴力捜査官を殴りつけた後、デリンジャーのことを誇るかのようにFBIを出し抜いてやったと啖呵を切るシーンはスゴイけれど、パーヴィスが紳士的に手を差し出しても、腰が抜けてしまって立ち上がれず「立てないの」と言う言い方に、あぁだからこそデリンジャーは彼女を愛したのかと思わせる。芯が強いのにホロリと見せる女性らしい弱さ。それは、ラスト彼の言葉を聴いた瞬間の表情にも言えること。この演技は良かった。目の強さと哀しさが印象的。

『男の世界』が重要アイテムとなるように、男の美学を描いているんだと思うし、デリンジャーの最期については、実際の彼の最期がどうであったかは別として、映画としては映画館に向かうところから男の美学。そういう部分も含めてデリンジャーを変に美化し過ぎることなく描いたのは良かったと思う。美学についても男臭く描いていないのは良かった。でも、なんとなく入り込めず。あまり多弁じゃないのに最期の決意なんかが伝わってくるという感じは全体的にそうで、それは深いし、そういう描き方自体が美学なんだと思うけれど、おもしろかったかというと・・・。ちょっと重厚感がなかったかなぁ。あと、グッと来る見せ場が少なかったかも。

音楽は全部かっこよかった! 特に銀行を襲うシーンの曲。当時のシカゴを再現した美術や衣装、そしてセットもいい。アール・デコな感じにウットリ。でも、あんなに街中で銃撃戦が頻繁に起こる所に住みたくないなぁ(笑)


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コメント (8)
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