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【cinema】『サン・ジャックへの道』

2007-10-14 00:16:00 | cinema
'07.10.06 『サン・ジャックへの道』@ギンレイホール

TRAVEL CAFEを思いのほか早く出なくてはならくなったので、ギンレイホールへ行ってみる。ここは年々姿を消してく「名画座」を残そう頑張っている映画館。狭いロビーにも劇場内にもレトロ感があっていい。すでに公開終了している映画を2本立てで楽しむことができてお得。この日は『サン・ジャックへの道』と『ボルベール(帰郷)』だった。どちらも公開時気になっていた映画。『サン・ジャックへの道』は30分くらい始まってしまっていた。でも他にすることもないので見ることに。

「仲の良くない3兄弟(1人は女性)が遺産を相続する条件は、キリスト教の聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼の旅を一緒にすることだった・・・」という話。途中から見たので、当然旅の途中。兄弟達は総勢9名のチームで旅をしていた。なぜ、その9名で旅することになったのか、他の登場人物達は何故旅に出たのかはよく分からない。でも、それでついていけないということはない。そこまで複雑な話でもない。見ているうちになんとなく相関図が見えてくる。

旅する映画にありがちな、反目しあったり、助け合ったりしながら絆が生まれ、旅が終わる頃には「何か」を掴んでいるという、まさにそのまま。でも、そこに押し付けがないのがいい。全体的にコメディータッチというか、どこか俯瞰で見ている感じ。主人公達は特別に嫌な人達ではない。困った行動をする人物もいるけど許せる範囲。そして、彼らが特別信心深いわけではなさそうなのもいい。彼らの中にはきちんとした決意を持って参加した人もいるのだろうけど、3人兄妹たちは間違いなく参加したくてしたわけではない。まぁ、それもありがちな感じではあるけど(笑) キリスト教徒ではないので詳しくはないけれど、サンティアゴ・デ・コンポステーラは聖ヤコブの遺骨があるとされており、キリスト教の聖地。その地への巡礼は、信者にとって重要な意味を持つものらしい。そんな旅に嫌々ながら参加するという設定も面白い。

正直、特別感動したということはない。ただ、なんとなく見終わった後、彼らと共にやり遂げた感がある。よく旅は人生に例えられる。困難や苦しみを乗り越えた先に幸せがあるとか・・・。彼らも彼らなりに困難にあう。それは何もキリスト受難のようなものではない。普通の人に普通に起こりうる困難。土砂降りの雨の中宿がないとか。そういう小さな(結構辛いけど・・・)困難を彼らなりに乗り越えていく姿を笑っているうちに、私たちもキリスト教の聖地に辿り着く。聖地の大聖堂でのミサは荘厳。でも、ちょっと観光気分なのもいい(笑)

どうやら騙されて連れてこられたらしいけれど、見ていた中では唯一明確にこの旅に参加した理由のあるアラブ系の少年ラムジィ。彼は字が読めないという失読症を直す為メッカに向かっているはずだった。彼はこの旅の間に、3兄妹の妹クララに教えられて字が読めるようになる。彼のように目に見えた成長ではなくても、皆少し変化している。「巡礼の旅」の定義というか意義については良く知らないし、きっと様々なのでしょうけれど、メッカでアラーの神にすがるはずだったラムジィが、キリスト教の聖地に辿り着くまでに願いが叶えていたということが全てを物語っている。願いは神が叶えるものではなく、自分の力で叶えるものなのだ。でも「神」を信じることで、自分でも気付かない力が発揮できるならそれでいい。そして、そういう意味での「神」ならアラーの神もキリストの神も同じなのに・・・。おそらく、ラムジィの存在はそういうメッセージ。ちょっと怖そうなオバちゃんのクララが彼を受け入れるのもそういうこと。そういうのが押し付けがましくなくていい。

そして、とにかく全ての風景がいい。山道とか自然の中もそうだけど、途中立寄る小さな街もかわいらしいし、サンティアゴ・デ・コンポステーラも素敵。その風景だけでも見ていて楽しい。


『サン・ジャックへの道』Official site

コメント (2)
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