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IPOの抽選について(改訂)

2005-11-03 22:10:44 | 折々の随想
以前にこの問題についてブログに書きましたが、ある人のブログへのコメントを筆者が寄せた内容が、その後の筆者のこの問題に対する考え方が最も整理されておりますので、改訂版として再掲します。以下は、IPOの割当をどうするかを巡って、業界の集まりがあった時に議長を務めた方(多分、どこかの証券会社のお偉方でしょう)と、ブログの管理人のやりとりが前段にあります。それに対する私のコメントです。少々、意味内容を明確にしたり、誤植部分は直してあります。

【以下、筆者のコメント】

この問題、確かに難しいですね。まず、IPO株というのを証券会社の一般商品と同列に扱うかどうか?扱うなら投信とCBのような抱き合わせ販売は、業界では合法的なのかどうか?(注:昔はよく売れない投信と値上がり確実のCBを組み合わせて売っていたという、そのブログの管理人のエピソードが話の前提にあります)

新規公開であろうとなかろうとIPO株も原則的には一般商品だと思いますが、他の業界の場合、例えばゲーム業界では不人気商品と人気商品の抱き合わせは景表法上不当とされるようです。IPOが今はプレミアム化しておりますが、逆でも同様ですね。では、抱き合わせ販売は避けるとして、特定顧客との関係において恣意的に割り当てることがいいのか、そうでないのがいいのかという点ですが、これは昔問題になった損害補填云々で、これまた問題にはなりなせぬものでしょうか?IPOが不人気化した場合には、特定の顧客への押しつけ販売につながる行為ですが。

以上2つの点が問題にならないのであれば、堂々と特定顧客を優遇してIPOを配分するのが、営業を重視する証券会社としては当然の動きだと思います。しかし、仮にそうだとしても、これから個人を中心に顧客を増やしていかないと淘汰される業界だとすれば、そのような昔ながらのお客しか大事にしない証券会社で良いのだろうか、という一面をきちんと考えることも必要かと思います。私は、抱き合わせ販売や損害補填を堂々と許されている業界とは縁を切りたいと思う方です。

では、仮にIPO株が一般商品扱いでないとした場合はどうでしょうか?こんな商品があるかどうか私は存じませんが、あえて想像すれば、一種の当選保証付き宝くじのようなもの、あるいは、キャンペーンなどで一等商品スイス旅行とするようなものでしょうか。このようないわばキャンペーン商品の割当は一体どうすれば良いのかということになります。一般常識では、厳正なる抽選でということになりますよね。私も一度社内でその厳正なる抽選の監視人に担ぎ出されたことがあります。それはそれは厳正でした。また一部の証券会社が導入しているポイント制度のような、抽選確率を差別化する方法がありますが、これも一見良さそうですが問題があります。些細なことですが、どうやってきちんと差別化するかということです。今の方法は1銘柄毎に抽選結果は多分リセットされます。リセットされなくても、例えば、その証券会社で上位1万人(計30万人の全顧客中)に入っていても、今の当選倍率ではいつも外れ続けるという「くじ運」の悪い顧客をどうやってきちんと「差別化」するのか、しかもそれを他の顧客にも見える形にするのかという問題が残る訳ですね。これはプライバシー保護の観点からいっても、説明がつかない問題ですね。それならいっそのこと、完全抽選でよいではないかという議論はそのあたりから出てくるような気がします。そして、何よりも抽選倍率を取引額などにより差別化するという発想そのものが、IPOはキャンペーン商品(つまり、基本的には割当を受けた人が儲かるもの)であることを前提としております。

そうなると次の問題は、IPOをキャンペーン商品ととらえることは、そもそもBB価格が低すぎることを前提にしておりますので、仮に誰もが損するIPOを証券会社が「キャンペーン商品」として販売するなら、それこそクレームが続出することでしょう。ということは、本来IPO価格と初値が同値であるべきとするならば、キャンペーン商品という位置づけは成り立たないということになりますね。
(注:その会合で最後に出た話が、今のIPOの初値が高すぎるということになり、それに対する管理人の意見として、本来初値と新規公開値段は同じであるべきであると言われたことに対してのコメントです)

私なりの結論は、IPOはキャンペーン商品でもなく、値上がり確実の特別商品でもない、単なる一般商品であると位置づけ、株は、買っても上がることも下がることもあるとのリスク説明(必ずありますよね)に基づいて売るということにする、そして、割当より希望者が多ければ、四の五の考えずに完全抽選とする。(取引程度に応じて抽選倍率を差別化するという発想は、下がることもあることからするとおかしいことになります)もし、希望者が少なくて余ったら、それは証券会社の営業に押しつけるのではなく、IPOを発行する企業に了解してもらう、といったことにどうも落ち着いてしまうのですが、皆さんも含めいかがでしょうか?

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以上が、この問題に対する筆者のコメントですが、最後の部分の、売れ残ったらそれで仕方ないことにするとのくだりは、業界の慣行、つまり引き受けた以上全株をその証券会社のお客に売るのが証券会社の当然の責務である、ということとは相反するとは思います。そのため、売れ残りが出ないよう、公開価格のディスカウント率が上がってきたのでしょう。しかし、副作用として、魅力あるディスカウント率であればあるほど割当希望者が殺到し、初値も切り上がりすぎるという、今の問題が出てきた訳ですね。しかし、ここは冷静に本来のあり方であるそのブログに管理人が言っている「初値=公開価格であるべし。」という原則に立ち返るのがよろしいのでは、と筆者も思います。
コメント
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