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株に出会う

独自開発のテクニカル指標で株式市場の先行きを読む!

選択的ペア理論など

2009-09-22 13:57:38 | 金融全般
昨日オセアニア県立図書館から借りた、ダニエル・コーエン著、「迷走する資本主義」(新泉社、2009年4月15日初版、1800円)は、ポスト産業社会である現代を理解するのに新たな視点をもたらしてくれる、フランス人の著作らしい大変ユニークな本でした。

150ページほどの軽い本ですので、あっという間に読めます。関心がある方にはお勧めします。

例えば、印象に残っているところでは、19世紀と現代のグローバリゼーションについての比較です。

特に19世紀の第一次グローバリゼーションのインパクトの大きさは、現代の第二次グローバリゼーションを凌駕する部分が多くあったようです。

それは<金融のグローバル化>と<国際的な移民>という、一見すると不可解に思う分野において端的に現れております。

◆1913年段階では、ロンドンのシティでは、国内預金の50%を外国に持ち出していたこと。フランスでも、国内預金の25%を外国に投資していたこと。
(現在は、例えば中国が米国の赤字を埋めているように、新興国によって先進国がファイナンスされているという、パラドキシカルな状況となっております。)

◆出生国とは異なる国に居住している人々を移民と呼ぶなら、1913年には世界人口の10%が移民に相当したこと。現在はたったの3%です。

◆契約の遵守や所有権の尊重といったことにおいても、19世紀においてはより急速な統合が確認されていたこと。ボンベイで締結した契約はロンドンで契約した契約と同じ効力がありました。

この19世紀のグローバリゼーションから得られる教訓は、現代のグローバリゼーションの帰結を考える上でも大変有益です。

◆1820年、イギリスの裕福度はインドよりも1人あたり2倍でした。しかし、1913年には所得格差は10倍へと拡大しております。このことから得られるシンプルな結論は、国際貿易は貧困国を豊かにするものではない、という結論です。
 
こうした事実は、国際分業体制の力学を考える時によく引き合いに出される、アダム・スミス(個人間)とリカード(国家間)の比較優位論(比較生産費説)によっては、こうした貧富の格差の拡大の問題は決して理解できない点を、コーエンは見事に例証しております。

こうした点は、まさにこれまでの筆者の常識的な概念を打ち破る、瞠目すべき事実です。

もう1つ、シカゴ大学でノーベル賞を受賞したゲーリー・ベッカーの「選択的ペア理論」も、この本で初めて知りました。この理論は、<社会が放置された場合>に展開される力作用を見事に示しております。

ベッカーの理論によれば、ある男女が結婚相手を見つけようとする場合、2種類の組み合わせが可能であると言います。1番目の組み合わせは、金持ち美男子と金持ち美女の組み合わせです。

これが実は、他の独身男性たちに激震をもたらします。何故なら、この組み合わせに該当しない恵まれない独身の男たちは、結婚相手としては、美しく金持ちの独身女性がいなくなるため、恵まれない者同士で結婚する以外、選択肢を持てなくなる可能性が生じるからです。

このくだりに、果たしてドキリともしない、現代の恵まれない独身男性の方々はいるものでしょうか?

そして、重要な点は、これと同じ論証が社会の隅々にまで行き渡るという点です。こうして、社会の各階層は、自らの階層よりも低い社会階層に対して閉鎖的となっていきます。

しかし希望はあります。

ベッカーによれば、上記とは異なる2つめの非対称な組み合わせが想定出来ると言います。醜く貧しい男が、美しく金持ちの女性と結婚することを想像することが、論理的には可能なのです。その理由は?月並みな表現をすれば、彼が優しいからです。

ベッカーの論証では、結婚とは、資産(時間、愛情、お金)を共有すると同時に、この共有資産を分配するルールを設定することだそうです。

醜い男は美女に対して、より多くのものが提供できると、きちんと説得できると、ベッカーの理論は示します。(ここ、大事ですよ)彼は、美男子よりもずっと優しくすれば、お金がなくとも美女に対してバランスをとることができます。彼には、そもそも優しさ以外は与えるものがありません。これが草食系男子が増えている真の理由でしょう。

そしてこの点こそが、あの陣内が藤原紀香に対して過ってしまった最大のポイントだったことが、この選択的ペア理論からも明らかですね。

この理論と同じことが、かつての産業社会、そして今のポスト産業社会にもあてはまることが、この本の著者が言いたかったことです。

これ以上は、この本を読んで頂く以外にはありません。他にも沢山、こうした新たな視点が書かれております。筆者が言葉足らずの論評するのはいかにも惜しい。
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アメリカ住宅問題に二番底は来るのか?

2009-09-19 14:30:28 | 金融全般
筆者がずっとトラッキングしているケース・シラー住宅価格指数が6月度で、全米20地区のうち、何と18地区で前月比で価格を上昇させました。まだ下落が続いているのはバブルに浮かれすぎたラスベガスと、自動車産業の凋落が著しいデトロイトの2地区だけです。

これに加えて、中古住宅販売も年率で7月は524万件にまで増え、もう住宅市場は底打ちしたとして、株価もこれに大きく反応しております。

今日のテーマは、これで果たしてアメリカの住宅問題が解決に向かっていると言えるのかどうかです。そのためには、最初にいくつかの事実を数字で確認しておきたいと思います。

■良い兆候を見せている数字:

1.アメリカ人の平均年収64000ドルで、第2四半期に売り出された住宅の72.3%は購入が可能。2008年第2四半期では、これが55%でした。(NAHBとウェルズ・ファーゴのレポート。)より厳しい年収42000ドルの場合で、頭金20%、30年固定金利、年収の30%以内の返済で算出した数字は63.7%ですが、1年前からは12.1%改善-7月現在。)

2.住宅ローンも30年ローンで、9月17日現在5.04%(フレディマック)という歴史的な低金利が続いています。(2001年のリセッションの時でも7%前後)

3.2007年比で約3倍の87000戸(2009年7月)の抵当物件を、公式には金融機関は保有しておりますが、これらが入手価格とほぼ同じ値段で売れ始めています。

4.政府のタックス・クレジット・プログラムには、すでに140万人のアメリカ人が応募。11月末までは、この応募で3年間家を購入したことのない、年収7万5千ドル以上15万ドル以下の人は、仮に税金を支払っていなくても住宅購入価格の10%、最高8000ドルまでのクレジット(現金還元)が受けられます。(減税政策ではありません。)

これにより住宅を初めて買う層の比率が50%を超えております。通常は20%程度。(このプログラムの絶大な効果を目の当たりにして、アメリカ政府はこれを延長するかどうか検討中。)

■悪い兆候の数字:

1.住宅ローンが支払えなくて住宅を手放した人は、すでに180万人に達っしておりますが、同じ程度の数字がこの背後に潜んでおります。それは、サブプライム・ローン利用者に代わって、今後、ALT-Aローン(信用スコアが低い人や書類不備な人用、最初は利払いだけも選べる)や、オプションARMローン=Adjustable-rate mortgage with the option to make a minumum payment(最初は低額のローン払いで、後から大きく増えるローン)での支払い不能者が急増する見込みだからです。エコノミストのこの記事の最後の図表(The reset economy)を参照。

注:Interest Only(利払い)だけの期間が過ぎれば、支払額は2-3倍にも跳ね上がることがある。オプションARMの場合は、利払いできなかった分はローン残に加えられるため、最初の借りたローン総額よりも高くなってしまう。
FRBの警告文書 何故、ここまでFRBは分かっていながらバブルを見逃したのか?


2.この第2四半期には、住宅の売り手が、買った時の値段より安く手放した比率が30%にもなっており、そのうち過去5年以内の高値圏で買った人は、ほぼ損を覚悟で売り払っております。

上記のエコノミストによると、全住宅ローンの23%が債務超過(家のローン額が家の現在価値よりも多い)です。ラスベガスではこれが60%にも達しています。これらは住宅差し押さえ予備軍ですが、この比率がドイツ銀行の試算では2011年には48%にまで増える見込みです。

3.アメリカ政府の住宅支援プログラムでは、400万人のターゲット層に対して、様々な条件が付くため、未だ23万5千人しか救えておりません。

4.金融機関が抱え込む住宅在庫には、値段が下がるのを避けるため、公にしていない、いわゆるシャドーインベントリー(隠れ在庫)が1年分ほどあると言われております。(アメリカ全体での住宅在庫は7月度で409万1千戸で、やはり同じく1年分程度)

■果たして、住宅問題の二番底は来るのか?

1.ケース・シラー住宅価格指数への評価:

これはこれで全米20地区を定点観測して、客観的に出しているデータであり評価できます。しかし実は、筆者もこのブログで以前に書いたのですが、2007年7月にも全米10地区で前月より価格が上昇しました。この時はこれで住宅価格が底打ちするのではないかと思った人が沢山いたようです。筆者もそのように思いました。ところが、それ以降、以前よりも激しい下落が始まったのです。

今回は10地区から18地区へと上昇地区は増えておりますが、それは上記の政府のプログラムや低金利と、これから上がるのではないかとのインフレ心理から来る買い急ぎの要因が絡んでのことと考えることが出来ます。

2.モーメンタムと失業率:

今のケース・シラー住宅価格指数の持ち直しや中古住宅販売の好調からして、特に新規購入層の急増にも支えられて、住宅販売のモーメンタムとしては上がっていると思います。しかしながら、ここからの認識が重要なのですが、これまでの住宅差し押さえのパターンと今回は決定的に異なります。

通常は、①景気の悪化 ②失業率の上昇 ③ローン支払いの滞り ④住宅の差し押さえの増加、といった順番で始まります。しかしながら、今回は全く異なるパターンです。

①歴史的な低失業率 & ②歴史的な住宅ローン金利低水準 & ③年率4%にもなる経済成長 & ④歴史的な高住宅価格水準 & ⑤詐欺的とも言えるローン貸付商法

その結果としての、⑥ローン支払いの滞り(最初はサブプライム)⑦住宅差し押さえの増加(最初はサブプライム)です。しかし、この最初の段階ではまだ世界経済は順調でした。

そして、リーマンショックを契機にして、⑧景気の極端な悪化 ⑨失業率の急上昇 ⑩ローン支払いの滞り(プライムやALT-A)⑪住宅差し押さえの増加 ⑫ローン支払いの更なる滞り(オプションARM)⑬金融機関の不良債権の増加 ⑭景気の二番底への降下 ⑮更なる失業率の上昇

もう後は書くのを止めます。こんなパターンは歴史上初めてでしょう。

■どういう解決策があるのか?

最後に、経済情勢と住宅問題の負のスパイラルからどうすれば抜け出すことが出来るのでしょうか?分かり切った人にとっては全くの平凡な蛇足ですが、

1.住宅ローン破綻者をこれ以上増やさないこと。

 しかし、新規住宅購入者向けにはインセンティブプログラムを延長することができても、既存のローン返済に苦しんでいる人々、それも安易なオプションARMなどで購入した人々は、本来住宅バブルが継続することを前提にローンを組んでおります。従って、住宅バブルを再燃させることが、皮肉にも第1の解決策となります。しかし、これは今の情勢では、麻薬患者の更生のために麻薬を打つようなものです。

2.政府マネーを住宅ローン破綻予備軍にも強制注入すること。

 何だか、亀井大臣を応援するような内容ですが、ここまでやると政府財政の破綻も現実味を帯びることはもとより、いわゆるモラルハザードの極致となり、果たして今の資本主義の枠内で成り立つことなのかどうか疑問です。

3.無理なくローン返済できるようなインフレ政策を導入すること。

 これはうまくやれば可能なような気がします。しかし、実質の住宅ローン総額を10%や20%減らすインフレでは、ローン金利上昇分からすると焼け石に水でしょうね。かといって、それ以上のインフレ政策をもしやれば、これは長期金利が急上昇することは必定でしょう。そうなると今の不況下では、民間経済と政府財政が共に破綻する最悪のシナリオも考えられます。

現実的には、これら3つを上手に組み合わせることとなりそうですが、それを首尾良くやり遂げる方策については、筆者の能力を完全に超えておりますので、今日のところは、ここまでの問題提起にとどめさせて頂きます。

追伸:本来、引用文献をきちんとリンクさせなければなりませんが、あれやこれや見ながらメモをとって書いた文章ですので、どの事実がどこから来たのかを改めて探し出すことは更なる時間を要します。最重要のエコノミストだけはきちんとリンクしましたので、これでご勘弁下さい。
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日本の借金事情と将来展望

2009-08-29 06:51:39 | 金融全般
==昨日の市場概況の補足コメントとして書いた記事を、問題が問題だけに独立して抜き出します。==

日本の公的債務の数字をご存じない方のために確認しておきます。 (今年の6月末現在。1兆円以下は四捨五入。)

  国債および借入金並びに政府保証債務残高:906兆円。
  地方財政借入金残高:197兆円(平成21年末見込み。)
  交付税特別会計借入金残高:34兆円。(同上)

  合計1137兆円。

となっております。(下の2つは、平成21年度地方財政対策の概要の5ページを参照。(退職金の積立不足分は含まれておりません。)

名目GDP:515兆円(2007年度)→公的債務比率:221%(2.2倍)

しかし、外国に知られていないのは、これが全てではないことです。厚生年金と国民年金の未積立債務が試算によってバラツキますが数百兆円もあります。

年金の積立額は、1年前でおよそ160兆円。金融危機で10兆円は失っておりますから、150兆円しかありません。しかし、国が支払い義務を負う公的年金の将来債務は、これでは到底賄えません。

そこで、将来の年金制度の維持が困難と国が判断して、年金制度を終了した時に政府が支払わなければならない過去債務は、2005年3月時点ですが、実に740兆円にも及びます。差し引き590兆円の不足です。

上記の1137兆円+590兆円=1727兆円となります。

対GDP比:335%(3.35倍)

IMFは、こうした日本の公的債務について、いつまで持続可能なのか、固唾を飲んで見守っていると言います。IMFは対GDPで3倍になれば、これは危険水域に達したものと見ているようですが、公的年金債務を入れれば、既にこの危険水域に達しております。(IMFの3倍の根拠は、GDPの2.2倍程度の債務なら、過去の歴史を見るなら、1815年と1945年にイギリスがそのレベルまで到達したものの、それを成功裏に処理を行うことが出来たという事実があるためです。)

次にこの公的債務残高が近い将来(5年後)にどうなっているのかを見てみましょう。

日本の公的債務残高の1137兆円(年金積立不足を除く)のうち、国管轄の国債については、予算上は10年物国債で利払い費は2%を計上しております。

これが、現在の不況下で、史上最低レベルの主要先進国並の3.5%になった世界を、以下に想像してみます。

・平成21年度当初予算:88兆5480億円
 -うち国債費     :20兆2437億円
  -うち利払い費   :9兆4202億円
  -うち元本償還費  :10兆8234億円

元本返済というのは、償還期限が来た国債を償還したことを意味します。来年度は、長期金利を財務省は2.5%と高めに見積もり、償還費と合計では、21兆9158億円とすることが8月27日に報じられております。

上記の利払い費は国が管轄する国債および借入金860兆円に対しての金利かと思います。平均では1.09%です。新発10年物国債は27日段階で1.295%ですが、これはボトムに近く、6月11日に1.56%をつけておりますので、平均では1.4%程度と推定されます。(短期国債の金利はもっと安いので、平均値では1.4%より下がって1%少々に落ちるのは当然です。)

そこで、この1.4%が、仮に5年後に景気が回復して、現在の欧米並の3.5%に上昇したとします。

現在860兆円の国管轄の国債は、今後21年度並の33兆円規模で毎年増えると仮定します。165兆円の純増ですから1025兆円ですね。これを5年後の国債残高とします。すると、

・利払い費(3.5%):36兆円
・元本の償還費    :13兆円(元本の増加率20%を暫定適用)

  計49兆円(当初、償還費を11兆円と計算ミスしておりました。以下、青字が訂正箇所。)

これに対して、歳入がどうなるかを見てみましょう。21年度の税収見込みは55兆2540億円でした。残りの33兆2940億円は国債、つまり借金でした。しかし、この税収見通しは、経済の急速な落ち込みで、民間では5兆円程度下回ると試算されておりますので、50兆円を計算上の前提条件とします。

この税収が仮に今後順調に経済成長をして毎年2%ずつ増えると仮定します。しかし、そうなっても、税収は今年度当初見込みの55兆円までしか増えません。

ところが、利払い費と償還費が49兆円ありますので、残りはたったの6兆円です。

平成21年度の社会保障費だけでも24兆8344億円です。これの4分の1しか賄えません。

つまり控えめに見て、他国の現在の長期国債と同じ金利に5年後になったとして、しかも、経済が毎年2%成長したとしても、国家財政はやっていけない、つまり破綻状態になることがお分かりかと思います。

この国債の利払い費と元本の償還費にほとんど消える国家財政の中で、(これも、実際は社会保障費の純増だけで毎年1兆円もあるので無理でしょうが)何とか21年度並の88兆5千億円の予算を組むと仮定するなら、約82兆円を何かの収入で穴埋めする以外にはありません。

この段階では、更なる金利上昇を市場は要請するため、新発国債の更なる増発は許されないと仮定すると、後は消費税のアップしかありません。82兆円分として41%のアップです。つまり、消費税が46%になるという世界ですが、これは幾ら何でも経済が持たないでしょう。すると、消費税を仮に5年後に25%に上げたとして(民主党は4年間上げないと行っているので、これは実際には不可能ですが。)残り21%は一体何で埋めるのか?これは、先進国では史上初の国家デフォルトを宣言するならいざ知らず、後はインフレ政策しかあり得ません。

仮に年平均のインフレ率を10%とします。すると、名目GDPも毎年10%の複利で増えますので1.6倍になります。これに準じて税収も50兆円X1.6=80兆円にまで膨らみます。しかし、利払い費なども49兆円に膨らんでおりますので、残りは31兆円です。21年度の当初予算での事業費(地方交付税交付金等を含む)は68兆円です。まだ37兆円も足りません。19%のインフレ率なら複利で効きますので、118兆円にまで税収が膨らみ、国債関連費49兆円を差っ引いても69兆円の事業費が残りほぼ帳尻が合います。

しかし、来年からすぐに年率19%のインフレに持っていけるとは、今のデフレ状況では考えにくい状態です。となると、最後の2年ぐらいで制御不能なほどのインフレに陥らざるを得ない可能性も見えてきます。このかなりきついインフレで、実は、国の事業費予算も増額を迫られますので、実際には今の品質レベルの予算執行は無理であるばかりか、年金収入にだけ頼るお年寄りは、インフレにより物価が2.36倍になりますので、6割近い実質収入の低下に見舞われる悲惨な事態となります。

注:上記は、消費税を5年目に幾らか上げた時の増収分は含まれておりません。

以上の計算は地方が抱える債務についてはカウント外ですが、地方も国に劣らずに借金に苦しんでおります。金利の上昇は、国と同じように地方財政も痛める筈です。

こういう根本的な問題を、政治家は真摯に受け止めて、その打開策を国民に示さない限り、いくら夢や希望をマニフェストに書いても、それは絵に描いた餅と言わざるを得ません。

今更ながらに恐るべきは、政治家や官僚の過去の無責任体制です。(今の政権政党に、民主党の政策を「バラマキ」と非難する資格は一切ないことは明らか。)

あの「世界一の借金王」と自称した、今はなき小渕元首相は、この借金の多さは自殺ものだと言ったそうですが、一体、これだけの持続不能な借金を後世に残して、これから自殺する政治家や官僚が果たしているのだろうか?

最後に、余計なことかもしれませんが、国民が国家に対して唯一、異議申し立てできる権利の1つ、「選挙権」を何があろうとも明日、特に若い方々、行使して下さい。放棄することは、今の現状と将来の「破綻」を「追認」することと同じであることをお忘れなく。

追加情報:その後のフォローアップ記事は、ここをクリックして下さい。
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イールドカーブによる景気予測

2009-08-22 09:21:55 | 金融全般
世の中の金融関係者の中には、様々な金融指標で飯を食っている方々が大勢いるようです。イールドカーブのスペシャリストもその1人です。

イールドカーブについては、やはりここピムコのサイトが専門的なことを含めて過不足なく説明しておりますので、軽くご覧下さい。

イールドカーブとは、簡単に言うと、短長期債の利回りを横に並べて曲線で現したものです。

そのイールドカーブとS&P500の株価曲線との対応を見せてくれるのが、ダイナミック・イールドカーブです。

右側のS&P500のグラフのお好きなところにマウスを当てると、左側のイールドカーブが変化します。左側のイールドカーブの下にボタンがありますが、Animateというボタンを押すと、連続的にイールドカーブが変化します。

そこで、とりわけ今般の金融危機の時に、このカーブがどう変化していったかを理解することにより、今後のこのカーブの変化による景気動向が予測できるという訳です。

イールドカーブと景気の関連性、特に逆イールドカーブの発生と景気後退の関連性については、①1年後の景気後退を高い精度で予測できたのはイールドカーブのみ。②1960年以降、6回の不況の前には逆イールドカーブが必ず出現、との研究者の報告もあります。

ちなみに、ダイナミック・イールドカーブの2008年3月19日あたりをご覧下さい。それまでの3ヶ月ものの短期金利がストーンと下まで落ちているのが確認できるかと思います。こういう状態をイールドカーブのステープ化と言いますが、これが観測されてから半年後に株価が底入れし1年後に景気の最悪期を脱するという見方があります。

半年後の2008年9月にリーマンショックが起こりました。その前の9月2日にNYダウは11790円までまだつけておりました。そして、1年後の今年3月6日にダウは大底をつけておりました。ちょうどステープ化の1年後です。

もう1つ、逆イールドカーブですが、左のチャートの20Yと30Yを結ぶラインが下向きになる時点を右のS&P500のチャートで探し当てると、2008年9月の後半頃であることがお分かりだと思います。10月に入るともう一目瞭然です。

そして、その逆イールドカーブが補正されるのが、3月の後半頃ですね。以後はそのまま長期金利レンジはフラット状態を保っております。このフラット状態は、FRBが住宅ローン金利を低く抑える政策を現在もとっており、それが功を奏している段階と言えますが、景気回復に伴う正常な金利上昇は、2003年年央あたりのカーブのようになる筈ですね。

しかし、今ここで長期金利が未だ上昇していないということは、景気回復が本物とは市場は見ていないということになりますが、ここで長期金利を上げては、アメリカ政府の数々の例外的な施策も水の泡に帰することになります。不景気下の金利上昇という最悪のパターンだからです。この綱引きをやりながら良く頑張っているのがFRBとアメリカ政府当局ということになります。

いかがでしょうか。かなり長期の経済動向を予測するには有効な指標のように思います。

昨年の3月にイールドカーブがステープ化したのを確認して、半年後までに株やその他を整理しておき、その更に半年後の今年の3月に景気が大底を打ったと見て、株式や商品の買いに入っておけば、結構なタイミングで今回の未曾有有の危機に対処することとができたと言うことになりますね。

世の中には、様々なことを研究している奇特な方々が大勢いらっしゃるようです。こうした見方も貪欲に吸収していかねば、これからの時代にはとてもついて行けそうもありません。
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世界の株式時価総額での休日の数字遊び

2009-08-09 08:45:13 | 金融全般
金曜日のアメリカの雇用統計の、アメリカ政府当局自身も当惑するような改善で、一気に世界経済回復への論調が増えそうな勢いですが、少し気になるのが、あの1929年の世界恐慌の時の強烈な株価の動きです。NYダウで見てみます。

1.1929年9月3日($381.17)→10月24日($299.47)一気の下降
2.192911月13日($198.69)→1930年4月17日($294.07)5ケ月間での切り返し

その後のことは書きたくありませんが、2年3ヶ月に亘る下落で、ついに$41.22ドルへ。

数字遊びは、上記の2に関連してのことです。1929年当時は底から48%切り返しました。金曜日現在NYダウは3月6日の6470ドルから金曜日の9437ドルまで45.8%切り返しております。

日経平均は昨年10月28日の6995円からすると49%増となっておりますが、ダウと同じ時期の3月10日の7021円を起点にすると48%増です。既に大恐慌時の切り返し%に並んでおります。

これだけだと何の変哲もなく、そろそろリバウンドも頭打ちか?程度の認識に終わるので、今日は、世界の株式時価総額に占める両国のポジションを昨秋から3段階に分けて眺めて見ました。( )内は世界シェア。 単位:ドル(千億ドル未満は四捨五入)参照:世界の時価総額マップ

■2008年1月~8月(大暴落前の平時
                    
 ★NYSE時価総額(ナスダック除く)    世界シェア     

  15兆1千億ドル~13兆4千億ドル 25.23%~27.01%

 ★東京市場時価総額(ジャスダックと大阪を除く)

  3兆9千億ドル~4兆3千億ドル    7.19%~7.55%

■2008年9月~2009年2月(大底をつけるまでの非常時

 ★NYSE時価総額(ナスダック除く)    世界シェア     

  13兆ドル~8兆7千億ドル     30.02%~27.63%

 ★東京市場時価総額(ジャスダックと大阪を除く)

  3兆3千億ドル~2兆6千億ドル    9.35%~8.4%

■2009年3月~2009年6月(非常時からの回復過程

 ★NYSE時価総額(ナスダック除く)    世界シェア     
 
  7兆9千億ドル~9兆9千億ドル   26.16%~25.44%

 ★東京市場時価総額(ジャスダックと大阪を除く)

  2兆6千億ドル~3兆2千億ドル    8.59%~8.16%

以上のデータから言えることは次の3つです。

1.世界シェアを見ると「大底をつけるまで」は、NYSEと日本市場に金が集まる。(円高、ドル高を招く。資産のリスク回避と称される。)

2.アメリカの時価総額シェアは、大暴落前の平時にほぼ戻っているのに対し、日本市場は、平時よりも時価総額シェアがかなり高め。

3.非常時から6月までの時価総額の回復度は、NYSEが14%、日本市場は23%と9%もの差がある。しかしながら面白いのは、株価の戻し率ほどには時価総額が戻っていないということです。つまりその分新興国市場へと資金が流れていることになります。

大恐慌の時はリバウンドが5ヶ月続きましたが、日米ともに3月を起点とすれば8月中旬がその5ヶ月目に当たります。これを乗り切れるのかどうかが勝負でしょう。

結論は、あまり新しい認識を導くことにはなりませんでしたが、いずれにしても、NYSEはほぼ平時に戻っておりこれが持続できるかどうか、日本市場は平時に比べても上げすぎの分の調整が入るのかどうかが焦点と言えそうですね。

この8月から9月がその見極めのための正念場となりそうです。
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