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株に出会う

独自開発のテクニカル指標で株式市場の先行きを読む!

スローモーションで忍び寄る危機

2010-04-17 08:58:56 | 金融全般
GDP比190%の公的債務を抱えた日本について、このところ海外メディアが矢継ぎ早に論評しております。このままでは「持続不可能」というのが共通した認識ですが、2015年には、国内貯蓄の金融機関経由での国債買いの原資が枯渇するとIMFは試算しており、それをうけて、一部の外国投資家はすでに、日本国債の金利上昇を睨んだ動きを取り始めております。

中でも、英エコノミストの記事がこの問題の現状をよくとらえていると思います。英文の原文も添付しておきます。

4月8日の同誌の記事と併せてご覧ください。

過去、日本人はこうした危機に対して有効に対処した経験はなく、結果的には戦争や、地震などで壊滅的な被害を受けないと立ち上がらない国民性であるとの指摘は、まさにその通りですね。

しかし、金利上昇と円安が招く国家破綻は、過去の戦争にも劣らぬ打撃を人々の生活に与えるはずです。

IMFのいう2015年ではなく、あと2-3年が臨界点に達するポイントと見ております。
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ゲームオーバーあるいは後の祭り-日本の財政

2009-12-27 23:07:49 | 金融全般
今年8月29日のブログで「日本の借金事情と将来展望」と題した記事をアップしました。その後、政権が代わり民主党の来年度予算の骨格が固まりました。

そこで、8月29日の記事のアップデートを行いたいと思います。日経新聞によれば、2010年度末の国債残高は637兆円で前年度比+37兆円とされておりますが、財務省の発表資料によると、今年9月末現在で既に国債だけで694兆円に達しております。このあたり、日経新聞のデータ出所が実に不可解なのですが、とりあえず、9月の財務省発表の国債及び借入金現在高の864兆円を採用して試算します。

◆国債および借入金残高:864兆円(対GDP比:182%)09年9月末現在

前提:IMFは、かつてイギリスが史上2度にわたって返済ができた対GDP比217%までは許容できると言っておりますので、これを限度とします。また、毎年の新規国債発行は2010年度並の44兆円とします。

◆5年後の国債残高:(44兆円X5)+864兆円=1084兆円

◆GDP実質成長率:1.4%(2010年度政府見通し)

これが5年間続くと仮定します。現在473兆円のGDPは5年後には507兆円に。

◆5年後の国債残高の対GDP比:1084兆円÷507兆円=213%

単純計算では、IMFが許容できる対GDP比での国債残高は、5年後でもぎりぎり満たしております。

これが44兆円の発行をなんとしても守るために政府が言っている財政規律の意味だったのです。

問題は、今後5年間に年44兆円の国債発行をした結果、果たしてその時点の財政がその後も耐えることができるのかどうかという点です。

試算1:

2010年度予算では国債費を20.6兆円(今年度比+3000億円)としております。当初財務省が想定した長期金利2.5%の場合21兆9158億円となるはずでした。(8月27日の報道記事)21年度当初予算での利払い費比率は46%、残りの54%は元本償還費でした。来年度は2.5%の金利想定ではなく現状に合わせて2.2%程度に下げたものと思われます。

(これは実勢金利ではなく、当年度に万が一の金利高騰があっても予算上は対応できるための、かなり水位の高い金利であることに留意)

2.2%の想定長期金利利率が今後5年にわたって続く保証はありません。アメリカ並みの3.5%へと上昇することは想定しなければなりません。この金利上昇分だけ今後とも国債費が上昇するものと思われます。

そこで、2010年から2014年度までの想定長期金利を以下のように設定します。新規国債は毎年44兆円とします。国債費には元本償還費も含みます。

・2010年度末:2.2%→国債残高908兆円、国債費:20.6兆円
・2011年度末:2.4%→国債残高952兆円、国債費:22.8兆円
・2012年度末:2.8%→国債残高996兆円、国債費:27.8兆円
・2013年度末:3.2%→国債残高1040兆円、国債費:33.28兆円
・2014年度末:3.6%→国債残高1084兆円、国債費:39兆円

試算2:

さて、2014年末の国債費の39兆円がリーズナブルにまかなえるかどうかです。1.4%のGDP成長率が今後続いたとしても、GDPは現在の+7%増の507兆円にしか伸びません。この比率で税収が伸びたと仮定します。

・2014年度末:税収見込み=37.4兆円(2010年度見込み)X1.07=40兆円

試算3:

2010年度の一般会計は、国債費を除いておよそ72兆円です。この歳出基準を2014年まで守ると仮定します。そうすると、

2014年度:(一般歳出72兆円+国債費39兆円)-(税収見込み40兆円+新規国債発行44兆円)=27兆円の赤字。

この27兆円の赤字を消すことが、財政規律を守り続けるためにはどうしても不可欠です。

◆対応策のまとめ:

この27兆円の赤字を消すことができたとしても、国債費は元本が増え続ける限り膨張をし続けます。かつ、一般歳出の上昇圧力は社会保障費の年平均増加だけでも1兆円ありますので、そもそも2010年度並の72兆円に押さえ込むことは至難の業です。

しかしながら計算上は、次のような対応が考えられなくもありません。

・歳出:72兆円+社会保障費年1兆円増=77兆円(2014年度一般歳出規模)+国債費39兆円=116兆円。

・歳入:税収40兆円  
・ギャップ:116兆円-40兆円=76兆円。

対応案:一般歳出カット3割→77兆円X0.3=23兆円
    消費税増税+27%(32%へ)=2兆円X27%=54兆円
    計77兆円。

これが新規国債発行をゼロにし、国債費を39兆円に打ち止め、IMFの対GDP比の国債残高を217%程度に押さえ込むためのシナリオということになります。

しかし、5年後の歳出カットの3割はともかく、消費税の+27%というのは無理でしょう。4年間は上げないと言っている訳ですから。

となると、税収増の範囲内での控えめな新規国債発行を続けながら、歳出カットを更に積み上げる以外にはなくなりますが、77兆円の一般歳出予算をいくらカットしてもゼロにはできません。

このように見ていくと、計算上は完全に日本の財政というのは袋小路へと入り込んだのではないでしょうか。

これが外国から見てゲームオーバー、あるいは後の祭りと言わしめている理由です。後は、いかにして世界経済へのインパクトを最小にする「日本の安楽死」を見いだすかという点だけが残されております。

この絶望的な状況は、過去の財政の分析をすれば誰でも容易に推定できることです。それを民主党は4年間は消費税を上げないと声高に叫んでいるのは、財政の現状に対する無知蒙昧か意図的な政治キャンペーンとしか思えません。

この結果は民主党の責任ではない訳ですから、今からでも遅くはありません。一刻も早く、国のあり方の将来展望とともに、財政再建計画を出すべきでしょう。

国際社会とマーケットから見放され、スパイラル的な金利高騰が円安を招き、輸入物価の急上昇から激しいインフレになり、半分近くの国民が食料の入手にも困難をきたすようになってからでは、いかにも遅い。それは第二の「敗戦」を喫するのと同じことです。その時になってもまだ「国民の生活が第一」と言える政治家がいるなら是非お目にかかりたいものです。
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アメリカの賃金とサラリーの推移

2009-11-14 08:37:12 | 金融全般
収入が増えないと個人消費も増えないとよく言われますが、アメリカのBureau of Economic Analysisのデータベースに、賃金とサラリーのインダストリー別の年度推移のデータがありましたのでご紹介しておきます。

まず目を惹くのは、政府部門のデータが昨年の第4四半期以降も上げ続けていることです。過去もずっとそうでした。実に安定的。景気には関係なし。

これに対して、民間部門の方は当然ながら不況期には減りますが、それでも2001年1Qから2Q,2Qから3Qの不況期には400億ドル程度の減り方しかしておりませんでした。

ところが、今回の不況では2008年3Qから4Qに306億ドル減ったのは致し方ないとして、2008年4Qから2009年1Qには何と2526億ドルも減少しました。

しかし、2009年1Qから2Qでは900億ドルに、2009年2Qから3Qにかけては87億ドルの減少となり、ほぼ底打ちしております。

このモーメンタムからすると、プラスに転じるのも時間の問題のように思えますね。これがアメリカの消費に今後大きく貢献してくるものと思います。

これは失業者数や失業率より先行する指標として使えるのかも知れません。
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グローバル・アセット・クラス・バブル

2009-11-03 11:02:14 | 金融全般
皆さん、景気の二番底を気にしていることが、このブログへのキーワード検索でよく分かります。

ところが二番底どころか、グローバル・アセット・クラス・バブルが崩壊すれば、それこそ「未曾有の2乗」にもなる困難が、この先待ち受けていることを、今では良識派メディアの代表格となった英フィナンシャルタイムズが、ルービニNY大学の教授の言として伝えております。(無料のプロファイル登録をすれば全文が読めます。)

以下は、筆者の急ごしらえのエッセンスの拙訳です。

◇米ドルの下落で、ドルキャリートレードで得た投資家のリターンは、この3月から50-70%にも及ぶ。うち20%はドル価値の下落からのリターン。

◇一方で、FEDによる1.8兆ドルものMBSを含む資産購入でボラティリティが落ち、VAR(Value at risk)も低下し、グローバル・アセット・クラスへの投資を、現在のところ安全にしている。

◇この政策は、自国通貨高を防御するために、外貨準備が積み上がった海外中銀からの資金流入を促し、その結果アメリカの財政赤字を緩和し、かつ米株式市場とクレジット市場をバブルへと導いている。

◇更に良いことは、このドル安は海外市場で稼いだ米国企業のドルベースでの利益を嵩上げし、株式市場の活況を招くことができている。

◇こうした無謀とも言えるアメリカの金融政策により、英国、日本、スウェーデンなどでも同じゼロ金利に近い量的緩和政策が行われており、それがグローバルな量的緩和を余計に進行させている。

◇アジアやブラジルの中銀は、ドル安(自国通貨高)に立ち向かい、そのことで返って、自国での短期金利を更に低くしている。

◇こうして、ドル安が招いているキャリートレードでのネガティブ借り入れ(上述の20%のこと)をますますネガティブにし、グローバル・アセット・クラスはますます大きく膨らんでいる。

◇ところが、円キャリートレードの時のように、ある日このバブルがバースト(破裂)した時、ドルをショートしている投資家の猛烈なドルの巻き戻し(買い戻し)があるのは、先に経験した通り。

◇何故、このドル・キャリートレードの巻き戻しがあるのか?それは、第1にドルはゼロにはならないこと。どこかで止まる。それが起きるとネガティブリターンは突如ゼロになる。第2に、FEDはもうボラティリティの低い状態を支えきれない。来春には1.8兆ドルの購入プランは終わる。第3にアメリカの第3四半期と第4四半期の景気の上方修正で、FEDによる金融引き締めが遅かれ早かれ来る。第4に、二番底の恐怖や地政学的なリスク(米国=イスラエルとイランとの軍事的な衝突)によりリスク資産からの逃避が起こる。

こうしてドル・キャリートレードは終わり、ドルの強烈な巻き戻しが始まる。

◇これはしばらくの間は起きそうもない。しばらくは資産バブルをより大きくするだろう。しかし、これが大きく、そして長く続けば続くほど、そのバブルのクラッシュ度合いも大きくなるだろう。

◇どうやら、FEDもその他この政策に関与する人たちも、この彼らが作り続けているモンスター・バブルに気づいていないようだ。彼らが盲目でいればいるほど、より激しくマーケットは落ち込むだろう。

以上です。これは二番底などという生やさしい事態ではありません。世界がついに地獄の淵まで落ち込むことになるのか?
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ニューノーマル

2009-10-12 09:49:59 | 金融全般
今日の日経3面に、ピムコのエラリアンCEOへのインタビュー記事が載っておりました。キーワードは、かつての成長経済には戻らないという意味で、ニューノーマル。

彼は、2007年に世界経済の構造転換を著書で予測したそうですが、簡単なインタビュー記事の中に、今後の世界経済の見通しに対しての示唆に富む発言がありましたので、読んでいない方のために、少々おせっかいとは思いますが、筆者が注目した視点を中心にご紹介しておきます。

◆失業率は景気の先行指標へと変わりつつある。

 ここまで雇用情勢が悪化すれば、働いている人ですら失業に備えて消費を抑え始めるだろう。
 失業率は10.5%をピークに2年ほどで7%程度にまでしか下げ止まらない。
 1つの理由:担保価値が毀損した住宅ローンを抱えて、人々が職がある地域に動けない。

◆焦点は世界経済が(ニューノーマルの)低成長に円滑に移れるかどうか。

 保護主義の機運が心配。貿易が滞れば成長に急ブレーキをかけるだけでなく、物価の急上昇を招きかねない。

◆政府が危機対策を進めた結果「政府の時代」が到来した。

 民間が競争原理を働かせるのに比べて、経済全体の運営が非効率になる。物価上昇が始まればスピードは速い。

 世界的に財政赤字が膨らんだ。国債発行も急増している。民間の資金需要が回復して社債の発行が増えれば、債券市場では資金の取り合いが起きて金利の高騰を招く可能性がある。

以上が発言のポイントです。

特に青字部分に注目しています。何故今、ゴールドが不気味に上昇をしているのか、これではっきりと分かりますね。

最近のドル安で打撃を最も受けているのが、ドルペッグの元を持つ中国に対して輸出競争力を失う新興国と、同じくドルにペッグした自国通貨を持つ産油国です。そのため原油は下がりません。

問題は最後の部分です。

1兆8千億ドルにまで膨らんだマネタリーベースの相当部分は、新興国への投資に振り向けられ、新興国通貨高(ドル安)を演出して、投資リターンのドル換金率を最大化しようとしているのは分かりますが、資金需要の回復により、債券市場で資金の取り合いが起こって金利が高騰するとの箇所です。

筆者の想定は下記のようなものです。

①マネタリーベースの拡大で市場にあふれた資金のかなりの部分は、金融機関により米国債へと再投資されている。(ジム・ロジャーズに、債券バブル相場と言われるほど。)

②新興国投資で稼いだ金をドル安で最大化し、かつ米国債の利回り分で、FRBが引き取っているモーゲージ債などの買い戻しを行う。

③新たな買い手がいなくなった米国債市場では、バブルが弾けて金利が上がり始める。この段階で世界経済が軌道に乗っていれば民間の資金需要が増えるため、金利の高騰を招く。

エラリアンCEOは、米国が1-2%の成長を取り戻す形で世界経済が回復していく可能性は60-70%あると言っております。

逆に言うと、30-40%は失敗する可能性があるということですね。
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