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株に出会う

独自開発のテクニカル指標で株式市場の先行きを読む!

ケースシラー住宅価格指数(2011年5月度)に見る微細な変化

2011-08-21 10:22:28 | 金融全般
世界経済の成長率見通しが引き下げられ、米欧の債務危機が高まっておりますが、リーマン・ショック以後、リバウンドを強めた筈の世界経済が、何故このような結果になってしまったのか?

その根本原因は、まずは米国の住宅価格の下落基調が、一旦2009年春に底打ったかに見えて、実は、その後も二番底をつけるほどに下落していたためでした。住宅価格がコンスタントな上昇に転じない限り、金融機関が抱え込み、あるいは飛ばしている不良債権処理は、FRBが幾ら金を注ぎ込んでも、それが贈与でない限り、いつかは返済しなければならないため、一向に進みません。

そのため、筆者もずっとケースシラー住宅価格指数を追跡している訳ですが、その価格指数の5月度までのデータを見て、少々微細な変化に気づきました。それは、いわゆる二番底から脱しつつあるのではないかとう兆候です。データをまとめます。

◆リーマン・ショック後の最安値を付けた月(季節調整前)

 2009年2月 --- 2カ所(デンバー、ダラス)
 2009年3月 --- 2カ所(サンフランシスコ、ワシントンDC)
 2009年4月 --- 2カ所(サンジエゴ、10地区平均)
 2009年5月 --- 1カ所(ロス・アンジェルス)
 
 2011年2月 --- 1カ所(シアトル)
 2011年3月 --- 9カ所(フェニックス、マイアミ、アトランタ、ミネアポリス、シャーロット、ニューヨーク、
                クリーブランド、ポートランド、20地区平均)
 2011年4月 --- 4カ所(タンパ、シカゴ、ボストン、ラスベガス)
 2011年5月 --- 1カ所(デトロイト)

これを見て歴然なのは、確かに2009年5月に一旦底打ちはしました。しかし、今年の2月から二番底が始まり、そのピークは今年の3月だったということです。その後、4月、5月と改善し、ついにはあのバブルに沸いたラスベガスも、不況が深刻だったデトロイトも、底を打ったかに見えます。(デトロイトは6月にまだ落ちている可能性はありますが。)

もう1つ注目して欲しいのは、底打ち時期は全米20カ所についてはバラツキがあるものの、ちょうど4ヶ月で終了していることです。2009年2月~5月と2011年2月~5月はピタリと期間が一致しておりますね。

もちろん、データには誤差があり、この程度の傾向は一時的な兆候に過ぎないのかも知れませんが、それでもこの微細な変化には注目しておきたいところです。懸念材料は8月に入ってからの株式の大きな下落と景気後退観測で、3ヶ月遅れのケースシラー住宅価格指数に更なる下落のサインが現れているかも知れない点です。これは11月度にならないと分かりません。

いずれにしても、今の世界経済の不安定要因の「癌」である、住宅価格指数の動向については、引き続きフォローしていきたいと思います。

なお、欧州(特に南欧)の住宅バブル崩壊は米国よりも後になったため、欧州債務危機の原点とも言える住宅バブルの後遺症は、米国よりも深刻度が高いと見ております。

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アメリカ住宅価格は2番底を突破か

2011-06-07 06:14:58 | 金融全般
ケースシラー住宅価格指数の2011年3月度版が先月末発表されました。結果は惨憺たるものでした。

全米20地区のうち、前月より上昇した地区はたったの2ヵ所(ワシントンDCとシアトル)だけでした。

また、金融危機後の最安値をマークした地区は11地区です。2009年2月から3月の時の1番底をまだ上回っている地区はダラスとボストンだけですが、これも近く下回る可能性が高い。

価格動向の中心的地区としてモニタリングしているロスアンジェルス地区は、2009年5月に159.18ポイント(季節調整前)で一旦底打ちましたが、2010年7月の176.27ポイントをピークとして下落を続けており、3月現在で167.77ポイントです。

2008年7月にこのモニタリングポイントのロスアンジェルス地区の下落目途の数字を142ポイントと試算しましたが、後25ポイントほどの下落が想定できるのかも知れません。1年で10ポイントほどの下落ですから、およそ後2年半(2013年9月頃)までは下落が続く可能性が見えて来ております。

これを受けてガイトナー長官は、住宅問題の危機からの脱出にはあと数年かかるだろうと述べるに至っております。

いずれにしても、この住宅問題の悪化が、アメリカ人の移動の柔軟性(家を売って職のある場所に柔軟に移動する)を阻害して雇用情勢の悪化が再度始まりかけており、住宅価格の下落や差し押さえに伴う消費マインドの低下を招いております。そこに新興国経済の成長鈍化と資源価格高騰での株安もあり、ここから半年後の世界経済をどう読むのかに苦心しているのが、今の株式市場の現状だと思います。
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今現在の日本の最大の危機とは

2011-04-29 18:44:43 | 金融全般
今朝、偶然スイッチを入れたNHKで、今回の大震災の補正予算審議のTV中継が行われておりました。他称(あるいは自称)、政界の水戸黄門、渡部恒三氏が「こんな時に政争に興じている場合ではない」と、いつもの調子で、涙ながらに田舎芝居顔負けの熱の入った演説をしておりました。

このやりとりを微笑みながら聞いて、しきりに頷いている多数の与野党議員を見て、一体この国の政治家はどういう人種なのだろうかと思いました。

国会議員は、当面の大震災の復興のための緊急処置を講じることはもちろん必要ですが、それだけに終わってしまうのなら、村議会議員と全く変わりありません。

もし国難と言うなら、より具体的にどういったことが国難なのか問題提起をし、それに対し、国家として今現在処するべきことを真摯に議論し、方向付けをしていくのが国会ではないかと思うのです。

「国家債務危機」(ジャック・アタリ著)、これこそが今回の大震災を契機として、何としても避けなければならない問題だと思います。

今、世界の耳目を集めているギリシャ。1800年から1949年までに計5回デフォルトをしております。その間ドイツも5回、イギリスは7回、ポルトガルも6回デフォルト。日本は戦後1回デフォルト。アメリカはまだゼロ回です。

とりわけドイツのデフォルトのケースが最悪ですが、これは、第一次世界大戦後にドイツに課せられた1320億金マルク(330億ドル)にも達する賠償金、当時のドイツのGDP比2000%にも及ぶ額に起因しておりました。

これはとても返済できる金額ではなく、その後、賠償金の延滞を理由にルール地方を占拠されたドイツは経済が破綻し、何と、マルクの価値が1兆分の1に下落するハイパーインフレに陥ってしまったのです。しかも、その後世界大恐慌が発生し、ドイツは再度強烈な不況に陥り、260億ドルにヘアカットし59年間払いにするヤング・プランが調印されました。

しかし、これでもまだドイツは賠償金の支払いが不能となり、1932年のローザンヌ会議で更に賠償金が30億金マルク(当初の44分の1)にまで減額されました。にもかかわらず、ドイツ経済は立ち直ることが出来ず、結局ナチスの台頭を許したのですが、そのナチスは賠償金の支払いを一方的に拒否。しかし、1990年のドイツ統一を機に支払いは再開され、何とアメリカへの債務は2010年10月4日に完了。完済までに89年を要したことになります。(しかしまだ他国への債務の支払いは2020年まで残っています。)

こうした事実は全く知りませんでした。

ドイツの場合は第一次世界大戦後の過大な賠償金が発端でしたが、今回の日本の大災害の場合は、規模の差こそあれ、復興資金のための国家財政の悪化が、「国家債務危機」としての引き金を引くことになることを最も懸念せねばなりません。

過去の歴史をひもとくなら、国家の債務というのが妥当な水準にまで低下し、国民の国家に対する信任が向上するためには、経済成長と大胆な歳出カットが必要なことが証明されております。

この2つをどうやって復興のための資金需要の急増の中で実現するのかこそ、国会議員に課せられた最重要の課題だと思うのです。

折しも、格付け会社2社は日本国債の格付けの引き下げ(もしくは引き下げの示唆)を行っております。日本国債のCDSも2008年から5倍以上に急騰し、110bp(1.1%)にまでなっております。ヘッジファンドは、格付け会社の動きと軌を一にし、日本国債の空売りで、それこそ未曾有の利益をたたきだそうと虎視眈々と狙っております。

そこでヘッジファンドが上げる利益は、金利水準が2%上がっただけで巨額の利益となり、その分、日本の金融機関は計100兆円の損失が生じて、自己資本はもちろん吹っ飛び、日本経済は大混乱に陥ります。その金融機関に公的資金を投入しようにも、国債発行以外には手段のない政府は、更にその足下を見透かされて、国債金利をスパイラル的に上げていきます。

こうなると、リーマンショックどころの話ではなく、まさに日本沈没。第一次世界大戦後のドイツのようなハイパーインフレを伴う大混乱に陥ること必至です。

このシナリオは決して非現実的なことではありません。これをどうやって救うのかこそ、今の政治家に課された最重事項ですが、経済成長の息を止める安易な復興税を始めとした増税の話や、国債増発の話しか出てこないのが、全くもってこの国の悲劇としか言いようがありません。

ここは将来のハイパーインフレを招来しないためにも、新規国債に頼らない復興資金捻出と、それこそ国家公務員の給与の大胆なカットなどを含む、歳出削減による資金捻出、それに、コンサルタントの吉田繁治氏が言っているような、外為特会の持つ外貨準備を構成する米国債を売っての資金捻出などについて、真剣に議論し実現して欲しいものです。

日本が手持ちの米国債を売れば、確かに米国債は大きく金利上昇するでしょう。中国も追随して売るかも知れません。それはそれで世界経済の大きな波乱要因となるかも知れませんが、かといって、日本発の信用恐慌で世界経済が沈没する、そのリスクと比べてどちらがよりましかについて、日本の政治家に判断させるのは所詮無理なことかも知れませんが、政策を決定する権限を彼らが握っている以上、何としても政治家連中を動かして、この「国難」を首尾良く回避させる方策を実現させる以外にありません。

悲しいことですが、このような国の命運の帰趨を制するような決定事項を、その能力のない政治家に託す以外にはないという、この悲劇の結末については、国民全体で受け止める以外にはなさそうです。
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アメリカ住宅価格は2番底に向かってまっしぐら

2011-02-26 21:40:09 | 金融全般
最新の2010年12月度のケース・シラー住宅価格指数を、今日、じっくり眺めてビックリしました。

昨年10月頃から再度下落に向かっていることは分かっていたのですが、2006年6月のピーク以降、最低価格を付けている地区の数がこれほどまでに急増しているとは思っておりませんでした。

以下に、全米20地区の実態をまとめます。

                      季節調整前  季節調整後

◇2009年に最低価格をマークした地区数:

          2009年 2月      1       1
          2009年 3月      2       2
          2009年 4月      1       1
          2009年 5月      1       4

    ===この後、住宅価格は持ち直した。====

◇2010年に最低価格をマークした地区数:  

          2010年 3月      1
          2010年11月      0       2
          2010年12月     14      10

全米20地区のうち、季節調整前では14地区までがバブル崩壊後の最安値を付けております。それも11月までに比べて一気に増えております。

これはとりもなおさず、2006年後半からのバブル崩壊以後にローンが支払えなくなって差し押さえられた7百万戸が、今後更に増えることを意味しております。ちなみに昨年末では、およそ1570万人がネガティブ・エクイティ、つまり家の価値が借金を下回る状態にあるとされており、これはその前の3ヶ月に比べて180万人増です。そのため、昨年12月に安値を付けた地区が一気に増えてしまったのでしょう。

なお、全米20地区の昨年12月段階の指数は142.42ポイント(季節調整前)ですが、ピークは2006年6月の206.52ポイントでした。それに先立つ2ヶ月前、日銀の量的緩和の停止がありました。これによりヘッジファンドなどによる、いわゆるゼロ金利の円のキャリートレードができなくなったのです。数10倍から100倍ものレバレッジをかけてMBSやCDOを買っていたファンドは、喩え僅かな金利上昇でもそのレバレッジ相当分の金利負担が生じるため、円資金が逆流することになったのです。その効果が現れたのが量的緩和の停止から3ヶ月目でした。

言ってみれば、リーマン・ショックの引き金を日銀が引き、そのしっぺ返しを受けて、その後に日銀も再度ゼロ金利に戻ってしまった「自作自演?」に近い物語が、米国およびそれよりも酷い欧州の住宅バブルとその崩壊の裏側に隠れているといえます。

因果は巡る。。。
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このままでは債務不履行に??

2011-01-08 10:50:30 | 金融全般
昨日1月7日の日経夕刊に、連邦債務残高の上限(14兆2900億ドル)まで残り3350ドルしかなく、3月末にも上限に達するため、ガイトナー財務長官が議会に上限引き上げを要請した、という記事が掲載されておりました。このままでは国債発行が出来ずに、米国が債務不履行(デフォルト)になってしまうと重大な発言をしております。

しかし、実際に米国がデフォルトを起こす前に、バタバタと倒れる国がギリシャを始めとして沢山あります。その破綻リスクを示すのが、CMEが算出しているCDS市場に基づき算出された累積債務不履行確率です。これはCPD(Cumulative probability of default)としてCMEグループのCMA DataVisionが計算しております。

この2010年3QのCPDレポートによると、5年以内に破綻する確率がもっとも高いのはベネズエラの54.2%です。2番目がギリシャ(48.7%)ですが、6位にアイルランド(33%)、9位にポルトガル(30.2%)が入っており、その後はルーマニア、ラトビア、ハンガリー、アイスランド、と続きます。スペインは21位(18.4%)。イタリアは23位(16.1%)です。

最下位はノルウェーの71位(2.1%)で、以下、フィンランド、スエーデン、デンマーク、ドイツ(3.4%)、スイス、オランダ、オーストラリアと続き、アメリカは63位(4.2%)。日本も何と60位と健闘。(5.4%)

こうしてランキングを見ると、ユーロ圏が見事に2分されておりますね。これは互恵的な関係をユーロ圏が放棄したら、ユーロが持たないことを示しております。

ところで、過去3ヶ月で最もパフォーマンス(改善度)の良かった国が、何と日本となっております。これは不可解ですが、円高の遠因(逃避通貨扱い)は、このあたりにもあるのかも知れません。

アメリカのスペシャル・レポートを見ると、昨年の年初からは下げてきているものの、州の中ではイリノイ州がカリフォルニアを僅差で抜いてワースト1となっております。このイリノイ州は余程お金がないらしく、50億ドル分の請求を6ヶ月間未払いで放置しているという話です。イリノイ州のCPDは21%で11位のラトビアあたりに並んでおります。

このCDS市場での評価は、あくまでもCDS市場に参加しているごく少ない参加者の見立てによるものです。しかし、時には少し前のソフトバンクのように株式市場にまで波及してきます。

このCPDがどのように今後変化していくのかを見ることにより、日本の財政破綻時期についての1つの示唆を与えるものと思われます。

今はまだ日本以上にやばい国が59か国もあるぜ!という訳ですね。しかし、スペイン、イタリアが先に逝けば、これは世界経済と金融が持たないでしょう。そうなる前に、国際社会では、かつてのニクソン・ショックでアメリカがドルの金との兌換を停止したような、大きな出来事がある日突然起こるはずです。そうでないと世界が持たない。ある日突然というのは、事前に発表すれば金融システムに大混乱が生じてしまい、それこそ収拾がつかない事態を招くからです。
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