〈本日の奉仕品〉 の誘惑

私は午後の一刻をスタバでコーヒーを飲み
そのあと食品コーナーを冷やかして歩くのがいつもの日課である。
今の時期は格別食べたいものや欲しい物もないので手には何も持たず、文字通りぶらつくのである。

あの日、何時もの調子で見回っていると惣菜コーナーに
〈本日の奉仕品コロッケ2個/100円〉が目に留まった。
好物の牛肉コロッケがまだ1袋私の来るのを待っていたのだ。
私は嬉しくなってサッと手で掴みそのままレジに並んだ。

しかし、列が動きレヂが近づいてくると、次第にプレッシャーが高まった。
どうも恥ずかしい、裸同然の紙袋を下げてレジを通る姿が
まるで後期高齢者の一人暮らしを宣言しているように思えてきたのだ。
もう並んで居られないのである。

買い物籠にコロッケを入れて目立たぬようにレジに並ぶことにした。
しかし、コロッケ一つではなんだか寂しげである。
そうだコロッケが友達を欲しがっていると思えたからもういけない、
気の弱い私はもうコロッケ一つでレジを抜ける勇気の無いことを悟った。

結局、レトルトカレーを3個にキムチに長十郎梨1個に・・・と
手が忙しく食材を集めて篭をあらかた一杯にした。次いでにレジ袋も買った。

気分爽やかにレジを通過することが出来て、コロッケの悩みはさっぱり消えていた。


本日も平穏なり