チャイムが鳴ったので玄関に出てみるとやっぱり老友O氏だった。見知らぬ老人
と二人で立っている。
O氏から再会しようと電話が有ったとき私は「元気になったらこちらから連絡する」
と断っていたのに・・・鼻にチューブを差した姿を自称85才のO氏に見せたくない
からなのだが、それでもO氏は押し掛けてきた。
O氏は「まだ元気だね」と妙な言い回しで私の健康を喜びながら綺麗にかたずいた
部屋を眺め回した。私がヘルパーさんに身の回りの世話を頼んでいることをご存じ
ないのだ。
彼は私が元気にしているのを不思議そうに眺め、病気の事や入院生活、酸素ポンベ
のことなど細々聞いてくるので些か閉口したし疲れた。
我々は暫く雑談したがそこは老人同士(私が一番年少の積り)聞き取りにくい声で
ボソボソと話しをし時々声にならない声で笑った。
私には重苦しい時間が過ぎて、O氏はその少しだけ曲がった腰を上げた。そして
テーブルに置いた私に用意したはずの手土産の苺の包みを引き寄せた。
玄関に出てO氏を見送ったが、なんとO氏が運転席に座ったのには驚いた。
彼は自分で運転してきたのだ。私の記憶では彼の免許証は去年で切れているのに。
まあいいか、Oさんもそう長くは乗れないのだから私は「Oさんお巡りさんと事故
にはくれぐれも気をつけて」とどこかで聞いた忠告をいい見送った。
私はO氏との交友のおわりが近いと感じた。
お わ り
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