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[衆院選] 違憲状態の選挙

2012-12-09 | Weblog

忘れてはいけないことがある。衆院選が「違憲状態」のまま行われていることだ。国会は衆院解散直前に「〇増五減」の衆院定数是正を行ったが、適用されるのは今回の衆院選の次から。消費税増税法を成立させた民主、自民、公明の三党は次の通常国会で定数削減を行うと約束したが、衆院選の論争では削減論議は脇に追いやられている。国民に負担を強いる前に行うべき身を切る改革は、すっかりかすんでいる。

 「違憲状態での選挙は間違いだと分かっていて、なぜ今まで是正しなかったのか。増税はできて定数是正はできないとは…」 (東京都板橋区、無職市川宏さん、68歳)

 選挙戦で各党党首の口から、選挙が違憲状態で行われていることへの反省や、定数削減についての言及は数えるほどだ。

 野田佳彦首相は六日、愛知県稲沢市で「定数削減に一番熱心な政党だ。着実に前に進める」と訴えた。しかし身を切る改革を実行せずに衆院を解散したのは首相自身だ。「違憲状態選挙」には触れていない。

 自民党の安倍晋三総裁も、この問題にはほとんど言及していない。六日、和歌山市で行った演説でも「何としても政権奪還する」と熱弁を振るったが、身を切る改革には触れていない。

 最高裁が衆院の一票の格差を「違憲状態」と判断したのは昨年三月。その後、一年九カ月間、各党は選挙制度、定数削減の議論をしてきた。だが与野党が駆け引きを繰り返すだけで結論は出ず、具体的な手だてを講じることなく選挙戦に突入してしまった。

 公示前日の選挙人名簿登録者数では、一票の格差は二・四三倍。違憲状態と指摘された二〇〇九年の前回選挙の時の二・三〇倍よりも広がった。つまり「違憲状態」は、さらに悪化している。

 消費増税の前に国会が身を切る改革を行うべきだということは、与野党の多くの党が共有している認識でもある。にもかかわらず、この問題が主要争点になっていない。政治の本気度が問われてもしかたない。

 衆院選での各党の公約はどうか。具体的な定数削減を主張しているのは民主党、日本維新の会、みんなの党など。一方で、公明党や共産党、社民党は選挙制度改革と同時に議論すべきだとしている。自民党は「通常国会で結論を得る」と、解散前に民主、公明両党と合意した内容を書いているだけだ。

 新しく選ばれる議員で構成する来年の通常国会で、中身のある身を切る改革を実現するためにも、各党幹部たちが具体案をぶつけ合っておく必要がある。2012/12/9 TOKYO

 

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11/30:

最高裁が示した「違憲状態」を是正しないまま行われる12月16日投開票の衆院選を巡り、1票の格差是正を求める山口邦明弁護士のグループが国を相手に選挙実施の差し止めなどを求めた訴訟で、最高裁第1小法廷=横田尤孝(ともゆき)裁判長=は30日付で、訴えを却下した1、2審判断を支持し、上告と特別抗告をいずれも棄却する決定を出した。弁護士グループの敗訴が確定した。

 1、2審とも「選挙の差し止め訴訟を起こせると定めた法律の規定はない。訴えは不適法だ」と判断。小法廷も「上告理由に該当しない」と退けた。

 山口弁護士は記者会見し、「最高裁が憲法違反と判断した定数配分規定で再び選挙をやるのは、普通の人が考えればおかしい。人権侵害が行われようとしているのに裁判所が止めないとはどういうことか」と憤った。MAINICHI

11/21:

今回の衆議院選挙で1票の格差の是正を求めている弁護士グループが「憲法違反の状態と判断された区割りのままでの選挙は許されない」として申し立てていた選挙の差し止めについて、東京地方裁判所は認めない決定をしました。弁護士は決定を不服として東京高等裁判所に抗告することにしています。

最高裁判所は、去年、最大で2.3倍の格差があった3年前の衆議院選挙について「憲法違反の状態だ」とする判決を言い渡しましたが、今回の衆議院選挙は現在の区割りで行われるため、1票の格差の是正を求めている弁護士グループが「区割りが見直されないままの選挙は許されない」と主張して、手続きの差し止めを求めていました。

これについて、東京地方裁判所の川神裕裁判長は21日夜、「最高裁の判決に反する区割りのままでの選挙を防止したいという気持ちは理解できる。しかし、差し止めは認めることができないうえ、手続きを止めてしまうと国政の停滞を招くおそれもある」と指摘して、申し立てを退ける決定を出しました。

弁護士グループは、決定を不服として東京高裁に抗告することにしていますが、衆議院選挙までには最高裁の判断を求めたいとしています。

 11/16:

「違憲状態」のまま解散、弁護士ら無効提訴へ

 議員1人当たりの有権者数の格差(1票の格差)を是正するため、国会で「0増5減」が16日に成立する見通しだが、来月の衆院選には間に合わず、最高裁に「違憲状態」とされた区割りのまま選挙が行われる。

 格差の是正を求めてきたグループの升永英俊弁護士は15日、東京・霞が関で記者会見し、来月の投票日翌日に選挙無効を求める計60件の訴訟を14高裁・支部に一斉提訴する方針を明らかにした。

一方、国政選挙の度に提訴してきた山口邦明弁護士らのグループは、16日の解散後、選挙の差し止めを国に求める訴訟を東京地裁に起こす方針だ。選挙に先んじて提訴するのは初の試みで、メンバーの三竿(みさお)径彦(みちひこ)弁護士は「格差を是正しないまま選挙を行うのはおかしい」と話す。YOMIURI

 11/17:

一票の格差、前回参院選は「違憲状態」 最高裁大法廷:

「一票の格差」が最大5倍となった2010年7月の参院選をめぐり、弁護士らが「投票価値が不平等なのは憲法違反だ」と、各地の選挙管理委員会を相手に選挙無効(やり直し)を求めた訴訟の判決で、最高裁大法廷は17日、「違憲状態」とする判断を示した。

 選挙無効の請求自体は退けたが、「都道府県ごとの選挙区を改める必要がある」などと述べ、現在の仕組みそのものの見直しを求めた。15人の裁判官のうち11人の多数意見。

 最高裁はこれまで、参院選で「違憲」と判断したことがなく、その手前の「違憲状態」も、最大格差が6.59倍に達した1992年選挙をめぐる判決(96年)の一度だけだった。6倍を下回る格差について、「違憲状態」と判断したのは初めてだ。ASAHI

 

判決後、「違憲判断 歴史的判決」と書かれた張り紙を手に、記者の質問に答える升永英俊弁護士(中央)ら原告団=

17日午後3時44分、東京都千代田区の最高裁前

メッセージボードを手に最高裁に向かう升永英俊弁護士(前列左から2人目)ら原告団=17日午後1時51分、東京都千代田区