2017/7/3 田中龍作ジャーナル
籠池前理事長は懸命に抵抗したが、警察は両脇を挟んで演説会場の外に持って行った。=1日、秋葉原 撮影:田中=
それは罪人が連行されてゆく光景だった。都議選最終日の7月1日午後、秋葉原で事件は起きた。安倍首相が自党候補の応援演説に入るため、警察は厳重な警備態勢を敷いていた。
「安倍辞めろ」コールが鳴り響く会場に、森友学園の籠池泰典・前理事長は到着した。午後4時をわずかに過ぎた頃だった。
籠池氏は安倍首相の顔が見えるように、自分の声が届くように、と前に進んだ。警察から促されたとの説もある。
権力側にとっては思うツボだった。籠池氏にとっては運のツキだった。
籠池氏は引きずり出されるようにして歩道から街宣車の停まるロータリー側に持って行かれた。
そこを警察官に取り押さえられた。そして演説会場の外に連れ出されたのである。
田中は警察官に聞いた。「籠池さんを排除する(法的)根拠は何ですか?」と。警察官は質問を無視した。
驚いたことに籠池氏を取り巻いていたマスコミ記者から、その質問は出なかった。
その後、警察は「混乱を避けるため(排除した)」とマスコミを通じて説明している。
「混乱を避けるため」は、安倍首相に批判的な人物を排除するための こじつけ に過ぎない。厄介な人物を駅前という公共の場所から外に連行するのだ。超法規的措置である。
籠池前理事長だけが警察に排除されるのではない。安倍首相に批判的なフリージャーナリストが公共の場所から つまみ出される 日が遠からず来るような気がしてならない。
籠池前理事長の姿は、編み笠を被らされ、白い着物を着せられた「引かれ者」という言葉が似合った。=1日、秋葉原 撮影:田中=
安倍首相の後ろで拍手する自民党議員。キム・ジョンウンの後ろで拍手を送る北朝鮮高官のようだ。=1日午後4時45分頃、秋葉原 撮影:田中=
不都合な人物は排除し、自分に批判的な言辞は受け入れない・・・安倍政治の本質を凝縮した光景が繰り広げられた。
東京都議選はきょうが最終日。夕方、安倍晋三首相が秋葉原で自民党候補の応援演説に入った。街頭での演説はこれが初めてだ。場所はAKBカフェ前。首相が愛して止まないアイドルグループのグッズ販売などでおなじみだ。
首相は加計疑惑や強引な国会運営をめぐって、ヤジが飛ぶことを恐れていたと伝えられている。このため警察の警備は厳重を極めた。
警察から強制排除される籠池前理事長。この国は表現の自由どころか、演説を聞く自由も奪うのだろうか。=1日午後4時30分頃、秋葉原 撮影:田中=
森友学園の籠池前理事長が会場にいたところを、私服警察官に見つかり、力づくで排除された。籠池氏は安倍首相から寄付された100万円を懐に入れていた。
カネを返そうとすると、この国では予防拘禁されるのだろうか?
午後4時過ぎ。街宣車の正面に位置する場所に「安倍辞めろ」の横断幕がひるがえった。タテ4m、ヨコ5mくらいの大横断幕だ。自民党スタッフたちが党のノボリ旗を連ねて隠そうとした。
首相の到着30前頃から「安倍辞めろ」の横断幕がひるがえった。=1日午後4時頃、秋葉原 撮影:島崎ろでぃ=
上に政策あれば下に対策あり。市民グループは横断幕を右に移動させた。「安倍辞めろ」コール、「帰れ」コールが交互に繰り返された。
安倍首相の到着が近づくにつれコールの声は大きくなる一方だった。制服警察官と自民党職員は抑えようと前に立ちはだかった。
「安倍辞めろ」の横断幕を隠すために自民党青年局のノボリ旗が数えきれないほど登場した。「臭い物にフタ」。安倍政治の姿がよく表れていた。=1日、午後4時30分頃、秋葉原 撮影:田中=
タイミングを合わせるように、日の丸の小旗を持った青年数人が横断幕の下に乱入してきた。青年たちは「安倍辞めろ」の横断幕を引きずり降ろそうとした。市民グループが横断幕をしっかりと握りしめて手放さなかったため、最後まで横断幕はひるがえったままだった。
自民党のノボリ旗を立てた青年らが、街宣車の後ろからゾロゾロと湧くように出てきた。ヒットラーユーゲントかと見紛うほどだ。
日章旗の小旗を持った青年たちが、横断幕を引きずり降ろそうと乱入してきたため、現場は一時騒然となった。=1日午後4時30分頃、秋葉原 撮影:田中=
「帰れ、帰れ」「安倍辞めろ、安倍辞めろ」のコールは最後まで途切れることはなかった。記者クラブメディアにチヤホヤされてきた安倍首相にとっては衝撃だったことだろう。「王様は裸だ」と知らされたのだから。
「マスコミはちゃんと報道しろよ」。ある聴衆が報道陣に向かって声をかけた。きょうの事件をメディアがありのままに伝えれば、あす投票の選挙に少なからぬ影響を与えるだろう。
籠池夫人の姿も会場にあった。「昭恵さん・・・」と叫んでいた。=1日午後4時頃、秋葉原 撮影:島崎ろでぃ=