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日本のテレビ ”下手な役者に薄っぺらい脚本、ベタな演出、そして ”(デーブ・スペクターが語る)

2017-08-23 | Weblog

下手な役者に薄っぺらい脚本、ベタな演出、そして、プロダクションへの忖度――。

日本のドラマ業界が抱える数多の問題点を、各局の情報番組でコメンテーターを務めるデーブ・スペクター氏が敢えて喝破する。

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僕は日本のテレビ番組すべてがダメと言ってるワケではありません。ニュース、バラエティ番組は世界的に見てもレベルが高いと感じています。ただ、ドラマだけは本当にひどすぎる。20~30年前と比べて進歩するどころか、どんどんクオリティが下がっている。特に問題なのは役者の演技力。僕もテレビ業界で仕事をしてるから、あんまり厳しいことは言えませんが……。まぁ、演技のレベルはあらゆる先進国のなかでもぶっちぎりで最悪だと思いますね。

もちろん、なかには面白いと感じるドラマもあるんです。「家政婦のミタ」みたいに伝えたいテーマのハッキリした、ハイコンセプトな作品は欠かさず観ていました。役所広司や樹木希林、桃井かおりをはじめ、芝居のうまい役者もいる。名作として印象に残っているのは97年にTBS系で放映された「青い鳥」ですね。主演した豊川悦司と夏川結衣の不倫逃避行を描いているんですけど、オーバーな演技は一切なく、どのシーンも抑制が利いていて画面から緊張感が伝わってきた。でも、どうして20年も前のドラマを取り上げるのかと言えば、それ以降、大人の鑑賞に堪える欧米型のドラマが作られていないからです。

連ドラに出演する役者の8割は、とにかく芝居が大げさで「わたし、いま演技してまぁす!」と顔に書いてある。それに、喋り方が不自然だからセリフに集中できない。以前から不思議に思ってるんですが、日本の役者はセリフの途中に奇妙な間を一拍置くんです。「なんで、そういうことを、言うんだ、君は?」といった感じで。あと、セリフの語尾で息を吐きますよね。「この前さ(はぁー)、どうして(へぇー)」、と。溜めを作って聞きやすくしているつもりかもしれないけど、セリフが隙間だらけで素人っぽい印象しか残らない。だって、僕らが会話をする時に、そんな勿体ぶった喋り方しないでしょ。その上、すぐに感情を剥き出しにして怒鳴る。大声でセリフを叫ぶことが、気持ちのこもった演技だと勘違いしてるんだろうね。

とはいえ、役者だけを責めるのはかわいそう。何しろ、日本のドラマに出演してるのは、芝居経験に乏しい、モデルやアイドル上がりの素人同然の芸能人が多すぎるから。制作スタッフも大変ですよ。撮り直す時は、「こっちの技術的なことで、もう一回お願いします!」と言うんですけど、本当は芝居の技術が足りないだけ。しかも、厳しく指導して女優に泣かれたら面倒だし、どっちみち良くならないから、適当なところで切り上げる。これで傑作ができると思いますか。

僕は単に日本のドラマの悪口を言いたいワケではありません。むしろ、素晴らしい作品を生み出すために建設的な議論がしたい。それだけに、いつまで経っても下手な役者を使い、海外ドラマに学ぼうとしないテレビ局のドラマ作りの姿勢には失望してるんです。

実は、欧米ではここ10年ほどテレビドラマの「黄金時代」が続いています。

火付け役となったのは99年にスタートした、現代版「ゴッドファーザー」と言うべき骨太な群像劇「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」。それ以降、ケビン・スペイシーが製作総指揮を務めた政治ドラマ「ハウス・オブ・カード」や、圧倒的なオリジナリティが魅力の「ブレイキング・バッド」といった話題作が続々と登場しています。第一次大戦前後を舞台に貴族と使用人の人間模様を描く、イギリス発の「ダウントン・アビー」は、世界で最もヒットしたドラマになりました。そして、「ゲーム・オブ・スローンズ」は言うまでもない。

正直、こうした海外ドラマは制作費も映画並みなんですが、作品の完成度はもはやハリウッドを凌駕している。映画業界全体が儲からなくなったせいで、ハリウッドが手掛けるのは海外でもウケやすい大味なアクションや、コミック原作ばかり。僕もかなりの映画好きだったけど、いまや映画館に足を運ぶのは年に2、3回程度。一方で週5~6本の海外ドラマを欠かさず観ている。それくらい、いまの海外ドラマは面白い。たとえば、「ブレイキング・バッド」のストーリーはこうです。末期がんを宣告された田舎町のサエない化学教師が、障害を抱える息子に財産を残すため覚醒剤の密造に手を染め、闇社会とのトラブルに巻き込まれる――。

こんなドラマを日本のテレビ局がゴールデンタイムに流せますか? 

しかも、これだけ型破りなストーリーなのに、徹底的にリアリティーを追求していて、主人公の息子役には実際に脳性麻痺で下半身が不自由な俳優をキャスティングしている。その結果、一般的には無名な役者しか出演していないのに、アメリカで社会現象を起こすほどの大ヒットを記録したわけです。もう日本とはドラマを取り巻く環境が全く違う。
 
ジョージ・クルーニーの出世作となった医療ドラマ「ER」では本物の看護師を役者として使い、手術シーンで現実と同じ動きをさせる。オペ中の会話も医学用語をそのまま使って臨場感を演出するんです。刑事ドラマにも必ず元警察官をキャスティングしますね。

日本でも医療ドラマが流行ってますけど、テレ朝の「科捜研の女」では主演の沢口靖子の白衣が、まぁ、パリッとしてキレイなこと。過酷な職場なはずなのに、いつ見ても白衣にノリが効き過ぎてるせいで現実味がありません。他のドラマで気になるのは、子役の衣装がオシャレすぎること。ふつうの家庭は、子供に毎日新品の服なんて着せないって!「ブレイキング・バッド」の主人公なんてL.L. BeanやGAPのヨレヨレのシャツしか着ない。細部へのこだわりがないとドラマ全体のリアリティーをぶち壊してしまうんです。

プロダクションとの癒着を断つ

最近は日本でもCSやBS、HuluやNetflixで日常的に海外ドラマを観ることができます。海外ドラマを観慣れてくると、日本との差は一目瞭然。下手な役者に薄っぺらい脚本、ベタな演出、安っぽい映像技術と、日本のドラマには負の要素が詰まってる。しかも、予算は削られる一方でしょ。知らぬが仏を決め込んでいるのはテレビ局関係者だけです。

では、日本のドラマが欧米に追いつくにはどうすればいいか。

それにはまず、役者を変えることです。無名でも芝居のできる俳優をキャスティングすれば間違いなくドラマの質は上がる。しかも、演技の下手な「大物」や「アイドル」を外せば予算も浮きます。

でも、それができないワケです。

原因は、日本のドラマがキャスティング先行で進められるから。テレビ局がドラマ制作で大事にしているのは、視聴者ではなく芸能プロダクションとの関係です。テレビ局の幹部がプロダクションに接待されて、「うちの子、頼みますよ」と言われたら断れない。加計学園と同じで忖度なんですよ。それで「大抜擢」されるのは、演技力どころか一般常識もないカワイイだけのタレント。スターバックスのバイト面接でも落ちるような、ね。結局、テレビ局がプロダクションの意向を汲んで「大抜擢させた」だけのこと。バラエティ番組と変わらない仕組み。

少し考えれば、この体質がおかしいことは誰にでも分かります。一流の寿司屋が接待攻勢を受けたからといって、マグロの仕入れ先を変えますか? それで店の評判が落ちたら客が離れてしまう。こんなことが続けられるのはテレビ業界だけでしょう。本当に有難いですね、視聴者に感謝しないと。

アメリカではテレビ局幹部の給料がもの凄く高いから、そもそも接待文化がない。彼らはプライベートな時間をムダにして接待に付き合ったりはしません。仕事が終われば帰宅して、家族と一緒にドラマを観ています。それが日本だと、制作現場は深夜1時過ぎまで撮影と編集に忙殺され、幹部になれば平日は毎晩のように接待、休みはゴルフ。日本で誰よりもテレビを観ていないのはテレビ局関係者なんです。もちろん、海外ドラマを研究して、演出やカット割りを学ぼうなんて考えもしない。

ですから、日本のドラマの質を上げるには、まずテレビ局とプロダクションの癒着を断ち切らないとダメ。テレビ局は2年間、ドラマの制作から手を引いて海外ドラマだけを流す。そして、携帯電話の番号を変えてプロダクションとの縁を切る。さらに、これまで接待されていた時間を使って海外ドラマを本気で勉強する。そこまでしてくれるなら、僕はいくらでも応援します。

(日本のテレビは2年間ドラマ制作をやめよ――デーブ・スペクター 新潮45 2017年9月号掲載から)

文:デーブ・スペクター(放送プロデューサー)
米国ABC 放送のプロデューサーとして来日。アメリカをはじめとする海外の情報や映像等を日本に紹介している。09年度にオリコン「好きなコメンテーターランキング」第1位を獲得。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


チンコロ野郎の安倍 高校生のスピーチを恐れ 口封じにでる

2017-08-21 | Weblog

管理人:チンコロ野郎とは、ヤクザ用語で、人間として器量がない、小物であるという卑下の意味である。

長崎市の市民団体「高校生平和大使派遣委員会」は、1~5月に「高校生平和大使」の選考会を15都道府県で開き、約500人の応募者から22人(高校1~3年の男性2人、女性20人)を選んだ。1998年から毎年派遣しており、今年で20代目だ。

22人は広島や長崎で研修を受けた後、8月20~23日にジュネーブの国連欧州本部を訪れ、核兵器廃絶を求める署名21万4300人分を国連軍縮局に届け、代表の高校生が国連軍縮会議でスピーチするはずだった。

ところがである、チンコロ野郎の安倍は日本の平和に向かって一途な高校生の想いを踏みにじる卑劣な行動にでたのである。実際、高校生らは純粋だった。被爆者らと面会し聞き取った生の声を代弁すべく一生懸命だった。平和祈念式典で恥じらいもなく、一字一句違わぬ前年の“コピペ”を読み上げる安倍とは大違いだ。高校生諸君、この安倍ヤクザ政権の仕打ちを一生忘れないことだ。

高校生平和大使演説見送り 核禁止条約への言及懸念か

平和大使たちは核兵器禁止条約への共感を示しており、関係者は「日本政府が署名しないと明言する条約について演説で言及されることを懸念したのではないか」と指摘した。

ジュネーブ軍縮会議日本政府代表部は「今年は軍縮会議の議事上、適当でないと判断した」と説明した。

高校生平和大使は今月二十一~二十二日にジュネーブの国連欧州本部などを訪れ、二十二日に軍縮会議を傍聴する予定だが、過去三年連続であった演説は予定されていない。

関係者によると、大使を派遣する市民団体「高校生平和大使派遣委員会」が今年も軍縮会議での演説を打診したところ、外務省の担当部局である軍備管理軍縮課から「今回は難しい」と回答があった。明確な理由の説明はなかったという。

 cf:

若い世代で核廃絶を 高校生平和大使結団式 NNNニュース

第20代高校生平和大使が決まりました! 実行委員会

 http://peacefulworld10000.com/archives/3384

高校生平和大使 アホの安倍に”原爆も原発も根は一緒”と説く

http://blog.goo.ne.jp/mapjp/e/a07103b3b498d2cd4e141de93c3eef8e


高校生平和大使の核廃絶演説中止の背後に安倍腹心の軍縮大使…集団的自衛権にも暗躍した防衛官僚が軍縮会議の代表者に

スイスのジュネーブ軍縮会議で「高校生平和大使」による演説が見送られたことが波紋を広げている。

高校生平和大使は、日本の高校生が国連に赴き、核兵器廃絶を訴える活動。1998年に始まり、近年では2014年から3年連続で核兵器廃絶の演説の機会が与えられ、ジュネーブ軍縮会議の本会議で高校生がスピーチを行っている。また、活動20年目にあたる今年は、核兵器の廃絶と平和な世界の実現を目指すための署名が過去最高の21万4300筆も集まった。

8月17日には、高校生平和大使に参加する長崎県の高校生3人が田上富久長崎市長を表敬訪問。軍縮局幹部の前での演説を予定していた女子高生が「微力ながらも、世界に核兵器の廃絶を精いっぱい訴えてきたい」と抱負を語っていた(毎日新聞8月18日長崎版)。

ところが、その核廃絶の願いを届ける高校生の演説が、今年は不可解なことに、直前で白紙になってしまったのだ。

いったい何が起きたのか。

当初、高校生平和大使は22日に国連へ決議文を提出し、軍縮会議の場でスピーチをする予定だったが、共同通信によれば、18日に急遽取りやめとなったことが判明。軍縮会議日本政府代表部は「今年は軍縮会議の議事上、適当でないと判断した」としている。

一方、東京新聞は〈関係者によると、大使を派遣する市民団体「高校生平和大使派遣委員会」が今年も軍縮会議での演説を打診したところ、外務省の担当部局である軍備管理軍縮課から「今回は難しい」と回答があった。明確な理由の説明はなかった〉と報じている。

つまり、日本政府側が高校生平和大使側に、説明もなくストップをかけたというのだ。

20日付けの西日本新聞では、引率する元教師が取材に対し「正式に見送りを伝えられたわけではないので何とも言えない」とした上で、「政府が反対している核兵器禁止条約を平和大使が『推進すべきだ』と主張してしまうことを、外務省側が恐れたのではないか」と推測しているが、実際、そういうこととしか思えない。 

対米従属の先兵だった元防衛官僚を軍縮大使にした安倍政権

周知の通り、日本は“唯一の被爆国”であるにもかかわらず、核保有国であるアメリカなどとともに、核兵器禁止条約に反対の姿勢をとり続け、交渉にすらも参加しなかった。今月7日の国連採択後も日本政府として「署名しない」と明言するなど、世界の潮流である核軍縮へ強固に反発している。

さらに安倍首相は、今年の広島と長崎での平和式典でも露骨な態度を見せた。松井一実広島市長が「日本国憲法が掲げる平和主義を体現するためにも、核兵器禁止条約の締結促進を目指して核保有国と非核保有国との橋渡しに本気で取り組んでいただきたい」と求め、田上長崎市長が「核兵器禁止条約の交渉会議にさえ参加しない姿勢を、被爆地は到底理解できません」と強く批判したのを尻目に、安倍首相はあいさつで核兵器禁止条約に一切言及しなかったのだ。

そう考えてもやはり、今回の高校生平和大使の件では、政府側が強くプレッシャーをかけて、高校生による国連での核廃絶スピーチを阻止したと考えるのが自然だろう。

さらに、このスピーチ取り止めには、軍縮会議日本政府代表部大使(軍縮大使)の人事が関係しているのではないか、ともいわれている。

この軍縮大使というのはその名のとおり、ジュネーブ軍縮会議の日本政府代表なのだが、昨年12月の人事で、その責任者に安倍首相と近い防衛官僚の高見沢将林氏が就任していたのだ。

軍縮大使に外交官ではなく、元防衛官僚が就任するのは異例中の異例。

実際、ここ20年をみても、民間から起用された猪口邦子氏(現・自民党参議院議員)を除いて全員が外務省出身者だった。

しかも、高見沢氏は昨年の退官まで、一貫して日米安保畑を歩んだ元エリート防衛官僚で、第二次安倍政権では安全保障担当の内閣官房副長官補として官邸入りするなど、安倍首相の覚えがめでたい人物。

集団的自衛権の行使容認を議論する首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の事務局を仕切り、2014年の閣議決定の際には高村正彦・自民党副総裁や横畠裕介・内閣法制局長官らとの「秘密会合」で政府案を練り上げたほか、日米安保体制=対米従属の固定化を目指す安倍政権の裏方をつとめてきた。 

軍縮大使は民主党時代、米国に沖縄基地を県外移転しないよう提言していた

その高見沢氏がいかに“日米安保の権化”であるかを示す、こんなエピソードもある。沖縄の基地負担減を目指した民主党政権が、米軍普天間基地の「県外移設」を掲げた際、当時、防衛政策局長だった高見沢氏が、2009年10月、当時のキャンベル米国務次官補に「(民主党の県外移設案に)あまり早期に柔軟性を見せるべきではない」と耳打ちしたことが、ウィキリークスが公表した米国の公電によって明らかになっている。

また、1996年の辺野古代替施設建設の日米交渉時には、オスプレイの配備を念頭に置きながらも、地元側に明言しないよう米側と想定問答集を調整したとされるなど、高見沢氏は米側を慮る日本政府の方針を陰に陽に実行に移してきた。

こうした経緯を踏まえれば、安倍政権が高見沢氏を軍縮大使に異例の起用をしたのは、あきらかに核兵器禁止条約に反対する米側と歩調をあわせ、国連でのネゴシエーションや国内の世論調整を担わせるためだろう。

今回の高校生平和大使の演説取りやめも、その延長線上にあると考えるべきだ。もっとも、高見沢氏による直接の指示があったかは現段階では不明だが、少なくとも、安倍政権のもとでは、市民が核兵器廃絶の思いを述べる機会さえ奪われてしまうことは間違いない。こんな政権が被爆国にふさわしいのか、わたしたちはいま一度よく考えるべきだろう。2017/8/22 リテラ

 

特命全権大使・軍縮会議日本政府常駐代表

 

髙 見 澤    將    林 髙 見 澤 將 林 (たかみざわ のぶしげ)
(昭和30年9月 長野県 生)

特命全権大使
軍縮会議日本政府常駐代表

昭和52年    上級職国家公務員試験(法律)合格
昭和53年  3月 東京大学法学部卒業
  4月 防衛庁(現・防衛省)入庁
平成7年 8月 防衛庁防衛局防衛政策課信頼醸成・軍備管理企画室長
平成11年 7月 防衛庁防衛局調査課長
平成14年 8月 防衛庁防衛局防衛政策課長
平成16年  7月 防衛庁長官官房審議官
(兼)情報本部副本部長
平成17年  8月 防衛庁横浜防衛施設局長
平成19年  9月 防衛省運用企画局長
平成20年 1月 防衛省防衛政策局長
平成23年 8月 防衛省防衛研究所長
平成25年 7月 内閣官房副長官補
平成28年 12月 軍縮会議日本政府代表部 特命全権大使
 

http://www.disarm.emb-japan.go.jp/itpr_ja/About_us_jese.html

 


安倍の人事後遺症、まったくやる気をそぎ落とされる 御用メディアも“過去の人”扱いに

2017-08-20 | Weblog

やる気感じられぬ安倍首相 

広島、長崎挨拶でも力入らず

(写真・時事通信フォト)

内閣支持率低迷や、読売新聞1面に〈首相「3選望まず」6割今の総裁任期まで *1〉という見出しが躍るなど、安倍晋三・首相の求心力が低下している。

そうした中、「『ポスト安倍」レースでも一歩抜け出した』などと岸田文雄・自民党政調会長をこれまで“親安倍メディア”といった見られ方をされていた読売新聞や産経新聞が持ち上げだしている。

政治ジャーナリスト・野上忠興氏が語る。

「読売や産経は主張の近い安倍政権中枢に食い込んで情報を得てきたが、当分続くと思われていた安倍政権に突然、終わりが見えてきた。次に反・安倍の石破(茂)政権ができると、これまでのように情報が入ってこなくなる可能性があるから、“岸田政権誕生”にも保険をかけておこうという計算でしょう。

もっとも、肝心の岸田氏は約5年間の外相時代も重要な外交懸案に成果らしい成果を上げていない。日朝関係は拉致問題の解決どころか逆にミサイル危機が高まり、ロシアとの領土交渉も進展がない。評価する材料が乏しいから〈安定感は抜群〉(産経)など、抽象的な持ち上げ方しかできないのがわかる」

そんな“後継者”がフレームアップされればされるほど、安倍首相が応援団メディアから“過去の人”扱いされつつある様子が鮮明になってくる。

その安倍首相は内閣改造後、これまでとは人が変わったように自信と「やる気」が感じられなくなった。

自ら「結果本位の仕事人内閣」と名づけた組閣人事が終わると、首相は広島(6日)と長崎(9日)*2で原爆犠牲者慰霊平和祈念式典に臨んだ。

広島でのあいさつの冒頭、「原爆死没者」を「原発」と読み違えたのを訂正したあと、こんなくだりが続いた。

〈真に「核兵器のない世界」を実現するためには、核兵器国と非核兵器国双方の参画が必要です。(中略)そのため、あの悲惨な体験の「記憶」を、世代や国境を越えて、人類が共有する「記憶」として継承していかなければなりません。昨年、オバマ大統領が現職の米国大統領として初めて……〉

この挨拶文は長崎でもほぼ同じ内容。一字一句違わぬ部分ばかりの、いわゆる“コピペ”だったしかも、祈念式典の挨拶文は毎年新たに書き換えられるはずが、今年は半分近くのワードが昨年の流用だったのである。

官邸のスピーチライターも投げやりなら、そんな原稿を通した官邸幹部たちも、気にせずに読みあげた安倍首相も仕事に身が入っているとは思えない。原因は人事失敗の後遺症にあるという *3。

自民党元役員が語る。

「改造人事では伊吹文明・元衆院議長らが入閣を固辞したと伝えられているが、そんなもんじゃない。総理が白羽の矢を立てた大臣候補に次々に断わられ、組閣本部ではA4判の紙に書かれた名前がどんどんバツで消され、1枚じゃ足りなかったという」

内閣改造で心機一転どころか、泥船の安倍政権に「乗り込みたくない」という党内の本音を思い知らされて、いわば“思考停止”に陥っているとの見方である。

※週刊ポスト2017/9月号

*1

首相の「総裁3選望まず」6割…読売・早大調査

読売新聞社と早稲田大学現代政治経済研究所は、政治意識に関する全国世論調査(郵送方式)を共同実施した。

安倍首相にいつまで首相を続けてほしいと思うかを尋ねると、「自民党総裁の今の任期が切れる2018年9月まで」41%と「すぐに退陣してほしい」23%と合わせ、総裁3選を望まず、今の任期内での退陣を求める人が6割を超えた。「党総裁の次の任期が切れる21年9月まで」は16%、「なるべく長く続けてほしい」は14%だった。8/10 Yomiuri

*2

「あなたはどこの国の総理ですか」

安倍晋三首相は九日、長崎市内で被爆者五団体の代表らと面会した。代表らが、七月に国連で採択された核兵器禁止条約への署名を求めたが、首相は広島原爆忌に続き「ゼロ回答」。参加者からは「直接訴えれば何か発言してくれると思ったが、肩透かしを食らった」と落胆の声が上がった。 

長崎県平和運動センター被爆者連絡協議会の川野浩一議長(77)は、五団体を代表して首相への要望書を手渡す際に「あなたはどこの国の総理ですか。今こそあなたが世界の核兵器廃絶の先頭に立つべきです」と同条約への署名を迫った。

要望書は、禁止条約への不参加に「長崎の被爆者は満腔の怒りを込め、強く抗議する」と明記。同時に安全保障関連法や「共謀罪」法制定、首相(自民党総裁)の九条改憲発言への危機感も盛り込んだ。

これに対し、首相は、核兵器のない世界の実現には核兵器保有国と非保有国の「双方の参画が必要だ」と従来の主張を繰り返した。改憲発言などへの懸念には全く触れなかった。8/10Tokyo

*3

福田元首相、安倍政権を批判 「国家の破滅近づく」

福田康夫元首相は2日、東京都内で共同通信のインタビューに応じ、学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画や「森友学園」への国有地払い下げなどを踏まえ、安倍政権下の「政と官」の関係を批判した。「各省庁の中堅以上の幹部は皆、官邸(の顔色)を見て仕事をしている。恥ずかしく、国家の破滅に近づいている」と述べた。2014年に発足した内閣人事局に関し「政治家が人事をやってはいけない。安倍内閣最大の失敗だ」との認識を示した。中央省庁の公務員の姿勢について「官邸の言うことを聞こうと、忖度以上のことをしようとして、すり寄る人もいる」などと指摘した。8/2 Jiji


国民をバカにしてきたトランプ氏と安倍氏 

支持率急落に共通点

日米の政権中枢を長くウォッチしてきたジャーナリストの落合信彦氏はいま、現政権の先行きに関して極めて悲観的なスタンスをとっている。
* 
44%から、36%へ。55%から、35%へ。

何の数字か、分かるだろうか。

前者は、トランプの今年1月から直近までの支持率の変化だ。

後者は……もう分かっていただけたと思う

(トランプ大統領の支持率はワシントン・ポストとABCテレビの共同調査、安倍首相の支持率はNHK調べ)
 
トランプと安倍が仲良く大統領専用機「エアフォースワン」に乗り、27ホールも一緒にラウンドして「互いに信頼関係を築いた」と蜜月を演出していたのはおよそ6か月前のことである。

そこから、これまた仲良く支持率を落としたわけだ。

2人とも本人や家族、側近に次々と疑惑が噴出し、「暴言」「失言」で国民の心が離れていくところまで、悲しいことにそっくりである。

トランプは、就任後半年の支持率としては戦後最低の数字となった。それでもこの男はツイッターで、「この時期に支持率40%程度なのは、悪い数字ではない」「まぁ、大統領選挙の時に、やつらの世論調査が一番間違っていたけどな!」と強弁した。

安倍は、メディアによっては20%台まで下がった支持率を受けて、さすがに「国民の信頼回復に向けて努力を重ねる」と殊勝な物言いをしたが、ここまで信頼を失ったのは、「どうせ加計問題も森友問題も、誤魔化し通すことができる」と、トランプ同様に国民をバカにしてきたからだ。

ここまでそっくりなトランプと安倍、最後は2人仲良く辞任するという結末を迎えるのではないか。

※SAPIO2017/9月号