僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

「パトスとエロス」オーディオの基本

2008年12月03日 | ケータイ小説「パトスと…」
「ジャズ喫茶だからちょっと暗くて、しかも臭い。」
「クサイの?」
「うん臭い。珈琲と煙草と、あとなんて言うかオタク臭い。客もみんなズズジャっぽい。」

「岡田さんも仲間でしょ。」
「僕はジャズもクラシックもフォークもいっちゃうからオタクじゃないなぁ。」

「じゃぁ岡田さんはオーディオオタクだ。」
「うーん、どっちかって言うとそれかもしれない。辰雄君にもそろそろ感染してるんじゃないかな。中学生のくせにスピーカーの名前知ってるヤツいないだろ。」
「何か面白いんだもん。」

「辰雄君は理科系だね。」
「理科は好きだよ。」

「理科系の学校行ってアンプとか自分で設計したらいい。」
「うん、そうゆうのやってみたい。ソリッドステートのアンプがもっと進化して集積回路になっても真空管はなくならないって岡田さん言ってたよね。」
「そうだなぁ、音源もみんなデジタルになっちゃうと思うけど、レコードも多分なくならない。」

「オタクがいるからでしょう?」
「ちょっと違うかも知れないけどねぇ、古いものの良さっていうのは性能だけじゃないからね。」

「アンティークでしょう。」
「見た目のアンティークがいいって言う人もいるけど、そうじゃなくって、ものの基本があるのがいいんだ。」

「真空管は基本なの?」
「音を大きくするのがメインアンプ。トランジスタやICでもできるけど真空管を見てるとこっちの極から信号がやってきて赤く光ってるところで大きく育ってるって感じがするだろう、ほら。」




岡田さんとふたりでしばらくむき出しの大型真空管を見ていた。サンスイの格子模様から流れるヨーヨーマのチェロが大きくなったり小さくなったりした。頬が温かくなった。




「インテグレードサーキットじゃ見えないもんね。」
「プリアンプであちこちいじってきれいにするより何もしないでそのままの方がいいんだ。」




















コメント
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