辰雄は朝から何となく落ち着かなかった。
歯磨きのコップを落としたり、シャツを前後ろに着てしまったり、靴を履いてから部屋のカギを忘れたことに気がついたりした。
自分でも今日は何だかずれてると感じて、出勤前だったが駅まで歩く途中少しだけ遠回りして小さな神社にお参りをした。
いつもは5円玉で済ます賽銭を500円玉に奮発してきちんと厄払いのお祈りもした。
先輩の紹介で会社勤めを始めてから丁度3年目の朝だった。
いつも通り一番前の車両に乗り、そこが一人分空いていれば必ず運転席の見えるガラス窓に向かって立った。
二駅ほど先の駅は都心への地下鉄が乗り入れているターミナル駅になっているのでどっと混み合ってくる。
これ以上もう入らないと思ってもまだまだホームには人が溢れ、発車のベルが鳴り終わる頃、ドアが閉まり始めてもなお詰め込まれてくる。
辰雄はもみくちゃになりながらもお気に入りのその場所だけは離れたくなかった。押される度に金属製の手摺りを握る手に一層の力を込めて奥へ押し込まれるのを凌いだ。
歯磨きのコップを落としたり、シャツを前後ろに着てしまったり、靴を履いてから部屋のカギを忘れたことに気がついたりした。
自分でも今日は何だかずれてると感じて、出勤前だったが駅まで歩く途中少しだけ遠回りして小さな神社にお参りをした。
いつもは5円玉で済ます賽銭を500円玉に奮発してきちんと厄払いのお祈りもした。
先輩の紹介で会社勤めを始めてから丁度3年目の朝だった。
いつも通り一番前の車両に乗り、そこが一人分空いていれば必ず運転席の見えるガラス窓に向かって立った。
二駅ほど先の駅は都心への地下鉄が乗り入れているターミナル駅になっているのでどっと混み合ってくる。
これ以上もう入らないと思ってもまだまだホームには人が溢れ、発車のベルが鳴り終わる頃、ドアが閉まり始めてもなお詰め込まれてくる。
辰雄はもみくちゃになりながらもお気に入りのその場所だけは離れたくなかった。押される度に金属製の手摺りを握る手に一層の力を込めて奥へ押し込まれるのを凌いだ。