「トイレ行きたくなっちゃった。」
「あぁ、いいよ。場所は知ってるね。」
トイレの中はシンプルで石丸電気のロゴ入りのカレンダーと木枠の時計が掛けてあった。
辰雄が戻ると曲はクラシックではなくMJQの軽やかなリズムに変わっていた。
「これ、今気に入ってるんだ。どう?なかなかいいだろ?」
「ジャズなの?」
「モダンジャズカルテットだからジャズだよ。」
「あんまりジャズって感じしないみたい。」
「新しい感じがするだろ?」
「音楽は新しいのがいいの?」
「古いのも新しいのもどっちもいい。いいものはいい。」
「デジタル時計はどう?」
「あれはすごく便利だけど大切なものを犠牲にしちゃた感じがするなぁ。」
「大切なものって?」
「辰雄君ほら、後ろの時計一回見てすぐ前向いてみて。」
「うん?」
「今何時だった?」
「1時35分。」
「あと何分で2時?」
「25分。」
「すぐ分かるよね。」
「そのくらい分かるよ。」
「デジタルだとそうはいかないんだ。」
「どうして?」
「感覚かな。」
「ふーん。」
「どっちが好きかは別として、アレは時間を感覚じゃなくて数学にしちゃったものだね。アナログならぱっと見て一瞬で何分前か分かるけどデジタルじゃそうはいかない。」
「時間の引き算って難しいもんね。」
「チラッと見て、まだ早いとかもう帰らなくっちゃとか感覚的に判断できる。デジタルは数字で足し算したり引き算したり、頭で考えなくっちゃいけない。」
「算数は得意なんだけど時計の計算は難しいよね。」
「十進法じゃないからね。」
「じゅっしんほう?」
「正しくは『じっしんほう』だけどね。時計は12進だったり60進だったり5跳びの数え方だったりするからうんと難しい。」
「そんなの誰が作ったの?」
「そう言われてみると知らないなぁ、今度大学の図書館で調べてみよう。」
「じゃぁ帰るね、本借りてくよ」
そう言ってカバンに2冊の本を入れた。1冊は音楽雑誌、もう一冊はヌードグラビアだった。
「あぁ、いいよ。場所は知ってるね。」
トイレの中はシンプルで石丸電気のロゴ入りのカレンダーと木枠の時計が掛けてあった。
辰雄が戻ると曲はクラシックではなくMJQの軽やかなリズムに変わっていた。
「これ、今気に入ってるんだ。どう?なかなかいいだろ?」
「ジャズなの?」
「モダンジャズカルテットだからジャズだよ。」
「あんまりジャズって感じしないみたい。」
「新しい感じがするだろ?」
「音楽は新しいのがいいの?」
「古いのも新しいのもどっちもいい。いいものはいい。」
「デジタル時計はどう?」
「あれはすごく便利だけど大切なものを犠牲にしちゃた感じがするなぁ。」
「大切なものって?」
「辰雄君ほら、後ろの時計一回見てすぐ前向いてみて。」
「うん?」
「今何時だった?」
「1時35分。」
「あと何分で2時?」
「25分。」
「すぐ分かるよね。」
「そのくらい分かるよ。」
「デジタルだとそうはいかないんだ。」
「どうして?」
「感覚かな。」
「ふーん。」
「どっちが好きかは別として、アレは時間を感覚じゃなくて数学にしちゃったものだね。アナログならぱっと見て一瞬で何分前か分かるけどデジタルじゃそうはいかない。」
「時間の引き算って難しいもんね。」
「チラッと見て、まだ早いとかもう帰らなくっちゃとか感覚的に判断できる。デジタルは数字で足し算したり引き算したり、頭で考えなくっちゃいけない。」
「算数は得意なんだけど時計の計算は難しいよね。」
「十進法じゃないからね。」
「じゅっしんほう?」
「正しくは『じっしんほう』だけどね。時計は12進だったり60進だったり5跳びの数え方だったりするからうんと難しい。」
「そんなの誰が作ったの?」
「そう言われてみると知らないなぁ、今度大学の図書館で調べてみよう。」
「じゃぁ帰るね、本借りてくよ」
そう言ってカバンに2冊の本を入れた。1冊は音楽雑誌、もう一冊はヌードグラビアだった。