ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

金融腐蝕列島 呪縛:サラリーマンが熱くなる1作

2005年12月19日 | 映画♪
最近、仕事のモチベーションが上がらなくって、これはいけないと一念発起!して、久々に高杉良原作の「金融腐蝕列島 呪縛」を見る。実際に1997年の総会屋利益供与事件で揺れた第一勧銀の改革派「四人組」がモチーフとなっており、悪しき日本型経営を引きずった旧態依然とした「OLD」経営陣に対して、強制捜査という無政府状態のなか、ミドルクラスの四人が立ち上がり改革を引っ張ったという。サラリーマンであれば少なからず、企業として在るべき姿と悪しき慣行や上の意向ばかりを気にする無責任な上司たちにやるせなさを感じたことはあるだろう。かってはこの映画や小説を見ては、この四人組とまではいかなくても、少なくとも自分は真摯に仕事に取り組まねば…と感じたものだが――。

1997年、東京・日比谷。丸野証券の利益供与事件による総会屋・小田島の逮捕により、300億円という不正融資疑惑が持ち上がった朝日中央銀行(ACB)本店に東京地検特捜部の強制捜索が入った。ところがACBの上層部は責任を回避しようとするばかり。そんな上層部の姿勢に腹を立てた〝ミドル4人組〟と呼ばれる企画本部副部長の北野(役所広司)、同部MOF担の片山(椎名桔平)、同部副部長の石井(矢島健一)、広報部副部長の松原(中村育二)らは、ACBを闇社会や古い慣習などの「呪縛」から解き放ち、旧きボード(役員)を総辞任させ、新頭取に中山常務(根津甚八)を推そうとするのだが…

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まぁ、とりあえず「企業」をモチーフとした熱いドラマだ。よくハリウッド映画であれば1人のヒーローが活躍して、企業の悪事を暴き、改革するといった形なのだろうが、これは非常に日本文化を反映した、リアルな形の物語となっている。何処までが事実に基づいているのかはわからないが、企業にとっての正統性ともいうべきヒエラルキー、権力構造がある種の空白状態になった時、その危機感からこのような志士が生まれることは珍しくはないだろう。

まぁ、事実うちの会社でも、まぁ、このような不祥事が発覚したからというわけではないけれど、あまりにもだらしないマネージャー層にあきれ果てて、危機意識の高い担当者、若手が中心に勉強会などが起こったりしている。

それにしても企業というのは変なところだ。

もちろん企業というのは利益を追求していく存在なのだが、社会的市民としての役割が求められる(大)企業になればなるほど、今のヒルズ族などとは違って、価値的な目的・目標というものが求められる。つまり松下幸之助が水道哲学を唱えたように、自らが社会の発展や幸福にどう関わり、それを実現した対価として利益を得ているという形が求められるのだ。そしてそれはただの言葉ではなく、企業の「求心力」としても働くことになる。

にも関わらず、そうした理念を求め掲げながらも、実情はそうではない。お客よりも上司の顔色をうかがい、決断もできず、創造力もない、そういったマネージャー層が跋扈し、担当者もそれを見習う。真面目に現場に関わろうとする人間が出世が遅れ、社内で気配りができるものが出世する…なんてことも珍しくない。

もちろんそうした企業の反映が長続きするはずもなく、負のスパイラルに入ってしまうと、気がつくと立ち上がることのできない状態になっていたりする。と、分かっていても、その瞬間瞬間の対応は、あくまで理念とはほど遠い姿となってしまうのが現状だ。

何故、シンプルにそれぞれが掲げている理念や顧客指向になれないのだろうか。

まぁ、もちろん企業が直面する世界はそんな単純じゃないし、根回しのようなものが結果、物事をスムーズに運ぶということも多々ある。幕末の多くの「志士」のような議論が決してその当時を正しく認識していたわけでもなければ、理念だけを唱えればいいわけでもない。担当としての、部門としての「部分最適」が必ずしも企業としての「全体最適」と合致するわけではなく、また企業全体としての方針のために担当の意見が覆されることもあるだろう。それぞれのポジションによって、対応方法が異なってしまうのはある意味仕方がないのだ。が、問題の本質はそんなことではなく、結局、出世だったり、自らのポジションを守るために、本来のあるべき姿とはかけ離れたことをしてしまうことだ。

そうした状況をこの四人組は変えようとする。

たすきがけ人事や年次にこだわる旧経営陣に対して、若い新頭取を立て「改革」を断行しようとする。「真相調査委員会」の設置や総会屋との断絶を図ろうとする。こうして改革は進められて行く。

映画では改革が進んだところで終わるのだが、現実はどうなのか。旧第一勧銀で活躍した四人組も現実ではヒーローでありつづけるけたわけではない。北野役の江上剛氏は既に銀行を辞め作家として活躍しているし、四人組のリーダー格だった後藤氏は彼らが生み出した斎藤頭取と折り合いが悪くなり、現在は西武グループに出向といった状態だ。無政府状態の時に活躍した四人組も、ある程度秩序を取り戻し、新しいヒエラルキーが成立してしまえば、上司にとっては目の上のたんこぶだ。

明治維新やペレストロイカなどもそうだけれど、旧い秩序から新しい秩序への「革命」を導くものは必ずしも新しい秩序に求められるわけではないのだろう。破壊者だはなく、秩序を創りあげる者こそが求められる。それは企業にとっても同じであって、結局、企業というものが「人」で成り立っている以上、「理念」や「理想」だけでは人を統率することはできないのだろう。「感情」というものをどのように吸収し、あるいは排除するか―そうしたことも必要なのだろう。

【評価】
総合:★★★★☆
企業も日本的です:★★★★★
昔はもっとやる気になったのに:★★☆☆☆

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