まきた@VetEpi

酪農学園大学をベースに、発展途上国と日本の獣医疫学に取り組む獣医師のブログです。

アフリカ眠り病の現場

2005-04-26 14:26:28 | 学業
4月26日(火)。

早朝ゲストハウスを出て、東を目指しました。2000年からの大学のプロジェクト現場を視察するのが今日の目的です。
プロジェクトは、1998年頃、アフリカ眠り病のアウトブレイクがあったウガンダ南東部の疫学調査と知識の普及、そして診療施設の改善でした。
アフリカ眠り病とは、ツェツェバエがトリパノゾーマ原虫に感染している動物やヒトから吸血した際原虫を体内に取り込み、さらに次のヒトを吸血する際に原虫を注入することによって感染します。原虫は感染したヒトの血液中に存在し、やがて脊髄、脳に進入し、神経症状を経て死に至らしめます。
末期で原虫が脳に侵入してしまうと、治療薬は血液脳関門を通ることが出来ないため有効ではありません。

さて、小さいとはいえ、近代的なビルもある、排気ガスだらけのカンパラを抜けると、右手には美しいビクトリア湖が見えたり、保護林、茶畑、ナイル川、そしてブッシュのある村落地帯へと変化に富んだ飽きない旅になりました。

昼2時頃、以前BBCでも取材、放送されたプロジェクトの現場、セレレの診療所に着きました。エリックが旧知の仲間と話に花を咲かせています。
まだアフリカ眠り病の現場を知らなかった僕は、看護婦のフローレンスに話を聞くうちに、これまで講義でしか聞いていなかったその病気が、きわめて現実味を帯びていくのを感じ取っていました。

検査台帳に並ぶステージの欄には、
末期。末期。末期・・・、の文字が続き、その右には、
「Dead」
といくつか書かれていました。

こんな村の奥地では、いまだに意識が低く、もしくは貧しいため、早期の段階で遠くから診断に訪れることは少ないようです。
眠り病よりもさらに数が多いのはマラリア。また、2000年に150人の死者を出したエボラ出血熱の発生地グルは、ここから北西に200kmの位置にあります。
これが東アフリカの現実です。

写真は月曜日に掲載予定です。