まきた@VetEpi

酪農学園大学をベースに、発展途上国と日本の獣医疫学に取り組む獣医師のブログです。

無事国際学会終了

2012-08-28 20:32:09 | 仕事
2012年8月24日(金)

8月12日にベトナムへ、16日にハノイ発、17日に日本着、18日に日本発、オランダ着の強行軍で出張続きでした。

国際獣医疫学経済学会(ISVEE)では、新たに若手の国際派日本人獣医疫学者2名も加わり人数も増え、非常に有意義な数日間を過ごすことが出来ました。やはり3年経つといろいろトレンドというか、重要視されることが変わってきます。技術革新もあります。

そして、我々若手にとっては、3年の間に積み上げた実績と人脈の成果を強く感じる機会となります。写真は、国際家畜研究所(ILRI)プロジェクトで、現在で合計80本に及ぶ論文、プレゼンでの発表、来年には100に届くと推測されている驚異的なインパクトを残した「Safe food, Fair food」プロジェクト(蒔田がコーディネーターを務めた)からの参加者での写真です。左から、ベルリン自由大学マックス・バウマン教授、研究代表者ILRIデリア・グレイス博士、モザンビーク学生アナベラ・カンバサ、タンザニア食品医薬品局エドガー・マフンディ、在コートジボワール・スイス科学研究所博士課程学生シルヴァン・トラオレ、そして私。後ろに見えている4枚のポスターは全てSafe food, Fair foodからの発表です。

我が国の口蹄疫のメンタルヘルス研究は、私の口頭発表でしたが、非常に好評で、部屋は満員、終わってからたくさんの人に声を掛けられました。現在まで多くの日本の人に知ってもらおうと、6本和文の論文を公表して来ました。しかしISVEEでは、今度は英語の論文を公表してほしいという声が多く聞かれました。この問題を世界の人たちも受け止めてくれているので、是非公表し、このような起こって欲しくない悲劇がもし起こってしまった場合、我々人間はどのようにそれを背負い、共に歩いて行かねばならないかを、一緒に考えて欲しいと思います。

さてー、来週からは、ILRIや他大学から様々な国の学生を招いて、2週間「非正規流通のための参加型食品リスク評価研修」を開催します。果たして喉が持つかしら。こちらも、海外からは注目されています。一つ一つクリアして行かなきゃね。


石巻に行ってきました。

2012-07-17 21:07:55 | 仕事
2012年7月15日(日)。

7月13日の実習後、急いで空港に向かい、仙台空港からはレンタカーで石巻に入りました。
日曜に帰ってくるまでに、仮設住宅3か所で参加型調査を実施しました。

石巻市役所のホームページからは、復興計画をダウンロードできるのですが、現実には復興に向けて、やはりとても大変な課題が山積みです。

仮設住宅に住んでいる人たちは、当然のことながら住宅から出て家を建て、生活を再建したいのですが、年配の方々は、年を取ってからの就職はなかなか口もなく、家を建てようとしても融資を借りることは出来ないので、本当に途方に暮れています。昼間はそれでも仮設で出来た仲間と話して気を紛らわしていますが、夜になると不安を覚えて眠れないそうです。

私たちが知りえた情報を、どのように生かして役に立てばいいのか、まだ検討は付きませんが、とにかく文章にしなければならないので、すでに取り掛かっています。

それでもよかったのは、傷つきながらも明るく前向きにいるたくさんの人たちに出会えたこと。

「光が欲しいんだ。」

そう一人の方がおっしゃいました。
光を与えてあげたい。私も心からそう思います。

夢を一つずつ!

2012-07-17 20:49:19 | 仕事
2012年7月10日。

疫学で有名な大学院で学び、獣医疫学者として国際機関で働いていた環境から、国際環境が整っておらず、疫学も全くなかった場所で一からのスタート。

仕事を始めてから丸二年が経過しましたが、とうとう学生が自分の意志と力で、私が所属していた国際家畜研究所(ILRI)で2か月間研究する切符を手に入れました。この学生も、かなり私にしごかれて、すねたり落ち込んだりしていましたが、とうとうやりました。奨学金合格の知らせを学生がメールで受け取り、研究室は思わず拍手と歓声で包まれました。

大学の名前が十分でないのか、それとも学ぶ意思のある若者が少ないのか、それとも疫学という分野がまだ知られていないのか分かりませんが、私のところで大学院生として学びたいという若者は未だ現れていません。しかしながら、世界に旅立とうとしているこの学生や、他の学生に影響されて、いずれ近いうちに若い力を大学院に目一杯ぶつけようとする若者は、きっと出てくることでしょう。

夢を一つずつ!これからも前を向いて頑張って行きたいと思います。


4年生の研究室決め

2012-06-12 23:03:38 | 仕事
2012年6月12日(火)。

うちの大学では、今の時期に獣医学科4年生の研究室決めをやります。

自分が学生のころは、何年生から研究室所属になったか、ちょっと昔過ぎて忘れてしまいまいたが、自分たちの代に、みんなが出来るだけ納得して研究室を決めることが出来るように制度を変えて、同級生の意見を聞きに回っていたのを思い出します。私はと言えば、下手なりに音楽を頑張っていたので、一番自由がききそうな実験動物学教室に入ったのでした。そして見事に音楽ばっかりやっていたのでした。

今日、学生が研究室決めの最終日程ぎりぎりでうちの研究室に来て、最後はくじ引きだから来れるか分からないけれど、本当に疫学を勉強に来たい、と熱く、そして面白おかしく語って帰って行きました。世界の貧困削減や災害対応、人獣共通感染症の疫学を実施しているうちの研究室に共感してくれる学生は結構多く、彼女も、大学に入り目的が定まらなくて部活にエネルギーを注ぎ込んでいた中、うちで話を聞いて目標が出来、勉強に身が入ったと言ってくれました。

そういう志を持った学生さんと出会えるのは、大学に来て本当に嬉しいことです。教員は常に年老いて疲れが抜けなくなるけれども、若いやる気のある学生さんと出会うと、本当に疲れが抜け、こちらまでやる気が戻るような気がします。いや、戻ります(汗)。

今の5年生も結構志が高い子がいて鍛えがいがあるのですが、4年生も志のある人たちが多いので、さらにパワーアップすることは間違いなしです。最近は、他大学から院生が顔を出しに来たり、ほんと盛んになってきました。ちゃんと院生が取れるのも、恐らくかなり近いことでしょう。いやあ、助かるなあ。もうちょっとで研究もフルスケールで回り出しそうです。

サウス・カロライナより

2012-03-16 07:15:00 | 仕事
3月16日(金)

さて今日は、サイスカロライナ医科大学で行われていたベイズ疾病マッピング研修の最終日。

扱う範囲を広げないと現実問題に対応できない一方、新しい知識、技術の取得には、出来るかどうか不安にもなります。
これまで痒いところに手が届かなかったことがかなり出来るようになるわけですが、後は大学院生の志願者が必要となります。今後の日本疫学の発展に寄与できればと思います。

誰か優秀な人、いないですか?いたら手を挙げてくださいね。

こちら最高気温は26度にもなります。明日北海道に帰るのが怖い。。。
アメリカ南部の料理も楽しんだし、他の参加者とも仲良くなりました。さて、最終日を楽しんで行こう!

「それでは、生きていてください。」

2012-02-02 21:42:49 | 仕事
2012年2月2日(木)。

標題は、つい先ほど気仙沼に住む大学の後輩から電話を切るときに伝えられた言葉です。

酪農学園大学は、昨年の震災直後、3月後半から学生が中心となって被災地で活動して来ました。その活動に携わった教員がプロフェッショナルレベルでの活動をするため活動費を申請していたところ、三井物産から助成金を頂き、石巻市役所と提携して環境リスク評価を実施しています。

今日は、仙台で三井物産に助成された団体の交流会があり、参加して来ました。驚くほど幅広い職域、専門性を持って、震災の復興を助ける活動が行われているのだということを知りました。しかも、国が緊急予算について、様々な段階での議論、承認を取るのに時間がかかるのに対し、三井物産は迅速に方針を変え、フレキシブルに震災対応をしております。三井財団というのは、私は別に個人的に賄賂を受け取っているわけではないですが、全く素晴らしい組織です。

今回の交流会では、世界レベルに立った知見も得ることが出来ましたが、それより、現場で活動されている方々とも対話することが出来、まさに原点に立ったような会議でした。

私は、途上国で、いくつか(も)身の危険を感じる体験をして来ました。安全な日本に帰ると、いつもギャップを感じていたものです。しかし、仙台に来たついでにおよそ8年ぶりに話した気仙沼の後輩は、見事に途上国での内紛や、ヒマラヤ登山といった類の経験後に自分が口にしたような言葉で電話を締めたのでした。

彼にとって津波は過去ではない。

私もいくつも研究課題を抱えていますが、震災、放射線問題は、ちゃんと見つめて行かなければならないと理解しています。まだまだ、手が届いていないところが存在します。除染活動を行っている元名古屋大学教授に、「南相馬市にいらっしゃい」とも言われました。本当に、時間の許す限り尽力したいものです。心底、日本と世界の危機のために尽力されていらっしゃる、そして実力がある方々とお会いできて、本当に良かったです。

消費者側に立つと、凡人の私たちに出来ることは、少なくとも問題意識を失わないことかな。たまにでも、会話に出してみたり、何か募金を募っていればわずかでも気持ちをあげることかも知れません。それでも、私も一消費者として続けようと思います。申し訳ないけれど、そこにずっと住んでいないので、自分の完全なリアリティではありません。

そして、研究者としては、小さい組織なりに、ポイントを絞って、しっかり石巻市役所に知見を伝え、政策決定に役立てていただければ幸いです。ま、失敗することはあっても、しっかり生きて、明日を、一年後を、10年後を迎えて行きましょう。

教育の醍醐味

2012-01-29 00:04:32 | 仕事
2012年1月29日(土)

教育の醍醐味、なんて言葉を聞いたことがありましたが、本日体験しておりました。
酪農学園大学獣医学科に日本で初めて独立の獣医疫学ユニットが出来てもうすぐ2年。今年度は、初めて「獣医疫学」という独立科目を通年で教えて来ました。

慣れない教育で、毎週の準備に追われ、学生からはたまに「動物を治せる獣医さんになりたいんだから疫学なんて興味ない」なんて言葉もぶつけられながらなんとかやって来ました。つたない授業だったと思いますが、疫学の基本から、応用の実例、経済学、社会学、精神保健衛生、GISと幅広く社会のニーズに応えられるように教えて来たつもりです。

先ほど、定期試験の評価を終えたところですが、自由記述での回答で、伴侶動物、産業動物、公衆衛生、野生動物、環境学の様々な分野を題材に、みんななんとも立派に疫学研究計画を書いてくれました。疫学について理解した130数名の獣医師が、2年後には酪農大から卒業します。2年後には、疫学の考え方を有した獣医師が社会に出ていくんだ、と考えると、本当は研究の方が興味はあるけれど、教えるのもやりがいがあるものです。

今日はよく眠れそうな気がする。いやー、良かった。

口蹄疫被災農家の精神的ストレスに関する論文

2011-12-28 21:12:34 | 仕事
2011年12月28日

2010年に宮崎県で起きた口蹄疫は、今でも宮崎県の農家さんたちの中では終わっていません。中には復興し、前に進んでいる逞しい方々もいらっしゃいますが、それでも今でも非常に生々しく、辛い日々を過ごされている方々がおられます。

今日、自宅に、拙著「2010年に宮崎県で発生した口蹄疫により被災畜産農家が受けた精神的ストレス」が掲載された「畜産の研究」一月号が届けられました。東日本大震災で霞んでしまっている面が多々ありますが、口蹄疫は現在進行形で被災者に影響を与え続けています。

このブログを読まれた方、どうか口蹄疫を忘れないでください。私はまだ苦しんでいる方々を助けたいし、少し他人事でこれまで過ごされている畜産関係者に、自分のこととして再認識してもらいたい。また、消費者の方々にも考えていただきたいのです。

口蹄疫の精神的被害の調査分析は、現在進行中です。年の瀬ですが、被災者のことを考えると、ある程度返上で頑張ります。被災者とそのご家族の皆様、どうか命だけは大切にしてください。小さな手ですが、それでも手が届くように頑張りますから。

2012年2月4日には、札幌コンベンションホールにて、口蹄疫に関する市民公開シンポジウムが開催され、お話しします。2月11日には東京で、口蹄疫を考えるコミュニケーションワークショップが開催され、ここでもお話しさせていただきます。もしご興味があればお教えください。

一人一人の大切な命、みんなで守りましょう。

学生とケニヤへ

2011-09-14 03:16:08 | 仕事
2011年9月14日(水)

9月5日から、9月13日まで、学生7名をケニヤに連れて来ました。今日はエチオピアで、国際家畜研究所(ILRI)で4年に渡り携わってきたSafe food fair foodプロジェクトの締めの会議を開催しています。明後日からは、人獣共通感染症の国際学会がやはりエチオピアで開催されます。

ケニヤに連れてきた学生7名のうち6名は昨日無事に日本へ出国しました。石油パイプラインからの爆発事故でご心配をお掛けしていますが、皆無事です。

ケニヤへは、海外に初めて出る学生も含めて連れて行きました。途上国は皆始めてだったようで、緊張した感じで始まり、初日からスーツケースを他の客に間違われて持って行かれるなどアクシデントもありましたが、皆楽しく過ごすことが出来ました。

特に今回の研修では、スラムに住む子供達の教育をしている学校で理科の授業をさせていただき、その子たちが通っている教会に行ってさらに交流を深めました。そして、国際家畜研究所(ILRI)のトップサイエンティストから講義を受けました。学生達は、初めて「貧困」と向き合うことになったのですが、非常に貪欲に学び、積極的に活動してくれました。傍から見ていても、日を追うごとに成長していく様子が見て取れ、とても有意義な時間を過ごすことが出来ました。

ILRIでは、クローン羊の「ドリー」を作った先生とディスカッションをする機会にも恵まれ、本当に意義深かったと思います。なかなか仕事をする時間が取れず大変でしたが、こういうことも大切ですね。

感染症モデリングコースに参加して

2011-07-23 17:35:28 | 仕事
2011年7月23日(土)。

20日から22日(昨日)まで、アメリカのコーネル大学で、感染症の数学モデリングのコースを受けてました。今は、朝の5時半です。溜まっていた論文の仕事が終わったので、これから一寝入りした後、すぐ日本に帰国です。こちらは、からっとした暑さです。

短いコースだからあまり期待出来ないかと思いきや、かなりインテンシヴで非常にためになりました。しかし、それと同時に奥の深さも垣間見てしまったのも事実。ヨーロッパと同様、アメリカの整った環境、この分野の科学の進み具合に衝撃を受けました。

我が国がどうやって追いついて行ったらいいか、非常に悩ましいところです。相談し、協力し合える場を設けなければならないと強く感じました。海外に助けを求めるだけでは対等ではないので、日本にいる、数学や物理、統計などの分野の素晴らしい人材とコラボするのも大切だと思いました。その前に、コラボ出来そうな人材を探さなければ。

優秀な教諭陣と参加者に会えたのは、とても収穫でした。参加者に非常にキレる人がいましたが、疫学で有名なカリフォルニア大デービス校の疫学の先生でした。教材に使われていた論文の著者がふらっと教室に来ましたが、エディンバラ大学で僕がPhDをやっている時にポスドクをしていた人でした。これも驚き。

久しぶりにいい刺激を受け、また将来の方向性の模索に役立った3日間でした。さあて、少し寝よう。飛行機に乗り遅れない程度に。。。