まきた@VetEpi

酪農学園大学をベースに、発展途上国と日本の獣医疫学に取り組む獣医師のブログです。

ケニヤで身の回り品を処分するコツ

2010-07-31 01:09:25 | 異文化
7月30日(金)。

身の回り品を処分することは、海外勤務、留学をする人にとっては、必ず通らなければならないことです。処分する時、日本人の間で売ったり譲ったりするのが一番楽ですが、中には私たちのように、各国の人たちやケニヤ人に売ることが必要な環境にいる人たちもいます。

先週友人のフランス人に、丁度いいアドバイスをもらったので、今日は難なく裁くことが出来ました。

鉄則として、

1.ケニヤ人には、前以て数日前から処分する日を知らせてはいけない
2.基本的に「早いもん勝ち」のルールがある

という2点は必ずわきまえておかなければなりません。

数週間前、イルリに住んでいたオランダ人の家族が、処分の2日前に、処分品のリストと処分の日時をメールで職場に流しました。

すると、、、

事務方の現地採用職員、博士号を持った科学者もこぞって家に押し寄せ、家の中に入ってきては品物を見せろ、これは俺によこせ、私によこせ、という大騒ぎが二日間続きました。小さい子が3人いて、お母さんが、

「時間を指定したじゃない、出てって!」

と叫んでもお構いなし。。。恐ろしいことになりました。当日時間が来てバザーが始まると、あちらこちらで争いが始まり、まるで巣に群がる蜂のようだったと。。。友人は言っていました。

私は決して人種差別やそういうことで書いているのではないのですが、文化人類学的、社会学的アプローチが獣医学にも必ず必要だという意見は、こういう事例を見ると誠に本当だなと感じます。

友人のアドバイス通り、妻と前日から綿密に計画を詰め、本日午後2時に一斉メールを流し、4時にバザーを開きました。

メールを出した後すぐにこの「早いもん勝ちルール」の存在に気が付いたのですが、プリペイド携帯のお金が切れて妻に前以て忠告することが出来ませんでした。午後3時55分に住んでいる家に戻ってみると(職場の敷地内)、やはりフライングで押しかけていた女性がいて、妻がすでに一番の目玉商品の電子レンジを渡していました。。。時間通り来た人たち、ちょっと遅れて来た人たちは、かなり残念そうでしたが、全く争いなく終わりました。

何故だか分かりますか?

早いもん勝ちルール

が最も尊重されるからではないのかと、私は思います。

ですから、これからケニヤに住まれる予定のある人は、今から日本でも、早いもん勝ちの練習をしておいて下さい。日本で人間関係に支障を来たしても、当方では責任を負いかねますので悪しからず。


国際機関職員のポテンシャル

2010-07-29 23:29:03 | 仕事
7月29日(木)。

人間というのは、違う環境に移ると、能力に応じて程度の差はあれ適応するものです。適応する時に、どれくらい必要とされる能力を発揮しうるか、ということをパフォーマンスと呼び、潜在能力はポテンシャルと言います。

ポスドクは正規職員と違って、プロジェクト外の仕事については、なかなか意思決定の中心に入る機会が、私の場合あまりありませんでした。しかし、正規職員の忙しさを傍から見ていて、きっとこの人たちが仕事している緊張感、スピードというのは、ある程度野放しで好きに仕事していた自分の領域とは違うのだろう、とは感じていました。

日本で就職してから、兼任していることもあって、一気に忙しくなりましたが、昨日終えたナイロビでのワークショップでは、新たな領域を体験することが出来ました。ワークショップの準備と本番とを通して、課長(オペレーションリーダーとILRI(イルリ)では呼ばれる)と仕事させて頂いたのですが、国際機関の課長/部長級レベルの仕事のスピードとレベルは、正直言ってプロジェクト単位のレベルと違っていました。視野も違うし、仕事のインパクトを出すのにマスメディアにどうやって発信するか、国をどうやって動かすか、などなど即座に最適の状況に導こうとします。ドイツの援助団体GTZと一緒に仕事を出来たのも新鮮でした。私は、やりながら感じたのは、「まだ伸びるな」という実感でした。仕事しながら成長するのを、久しぶりに実感できました。実際、イルリ内でもポスドクから兼任科学者に契約が変わったので、それ相応のパフォーマンスを提供しなければなりません。

誰でも、状況が許されるなら、チャンスがあれば難しいと尻込みしないで、是非挑戦すべきだと思います。やってみた時に、自分のポテンシャルの限界が見えたら、それはそれでラッキーで、緩やかな方向に逆戻りすればよいし、まだポテンシャルの範囲内と感じたら、とりあえずやってみるといいでしょう。

私は日本をベースにすることになりますが、日本は優秀な国ですから、きっとそういう領域が存在すると思います。後は、どういった機会に恵まれるか。どんな仕事をするにしても、どれだけ人の役に立つか、という視点だけはいつまでも忘れないようにしたいと思います。

のびのびと

2010-07-29 00:11:21 | 家族
7月27日(火)。

家族は無事到着し、職場(兼任です)であるILRI(国際家畜研究所)敷地内の上司の家に泊まっています。上司は今週はエチオピアです。夜中に布団を子供に巻き取られて起きたり、ブラシのような頭が顔の上に乗っかってきて起きたり、単身赴任では全くなかった新鮮な経験をしています。

子供は、日本で英語を忘れたかと思いきや、親友達と再会して、本当にのびのびと敷地内を駆けずり回って遊んでいます。英語も友達の顔を見たとたんに思い出したような感じです。

日本では、学校から帰ると近所に仲のよい子がいなかったので、いつも家にいました。意地悪な子もいたようで、すっかり自信を無くした時期もありました。そんなことが嘘のように本当にのびのびと遊んでいるので、やっぱりケニヤが息子には合っていたということが分かりました。

来月には北海道の小学校に転校です。北海道の文化は、どことなくイギリスやケニヤと人の付き合い方が似ているような気がします。転校も多い学校らしいので、早く馴染めるように祈っています。

ま、今はしっかりケニヤを楽しんでもらいましょう。

指折り数えて

2010-07-24 23:26:40 | 家族
7月24日(土)。

いろいろ理由がありまして、この一年間は、家族と離れている期間がとても長い一年間でした。特に2月から今日、この日までは、5ヶ月間単身赴任が続きました。4月からは新しい勤務先に移ったので、仕事と生活のセットアップに追われ、結構大変でした。

もう20分で家族は関西空港を出発し、明日には会うことが出来ます。これから、夢の家族での生活が始まります。

思い起こせば、2004年の9月初めから11月末までの3ヶ月間、エディンバラに留学してしばらくは一人で生活環境を整え勉強をしていました。大学から空港に向かうバスの中の風景を、今でも覚えています。バスの中では、タンザニア人の先輩たちが早口のスワヒリ語で何やら話していて、一人いる私には会話に入る隙もありません。一人ぼっちという感情と、待ちに待った家族が、1才の息子が無事着くだろうかという心配とが入り混じって、何とも言えない不安な感覚でした。

今回はそんな不安な感覚はあまりないけれど、この期待感は、何となく似ています。とにかくこの7ヶ月間は、ここには書けない事情と大変さで、1、2ヶ月に一度家族と会うのを楽しみに、しょっちゅうカレンダーを眺めたり、指折り数えて毎日あと何日で会えるだろうかと確認しながら過ごして来ました。それがもう今日で終わる。

家族で暮らせるというのは、どんなに幸せなことでしょうか。今日は、寝るのがとても楽しみです。どうか、無事に遅れずに飛行機が到着しますように。

久しぶりの東アフリカ2週間

2010-07-22 00:25:20 | Weblog
2010年7月21日(水)。

7月6日にナイロビに着いてから、これまで滞っていたプロジェクトを再稼動するのに、そして実は4月から自分自身の契約がちゃんと片付いていなかったので、1週間目は、雑事に追われました。

雑事に追われている間に2週間目に突入してしまい、7月12日(月)から16日(金)の一週間は、上司と共に、アジスアババ大学獣医学部博士課程の集中講座「リスク分析」をボランティアでこなしました。思い起こせば2006年に初めてフランスでリスク分析を習った時、新しい概念に非常に混乱し、自信をなくしたことがありました。その自分が今は教えている。教え方もまあまあ上手く行ったと思います。継続は力なり。

17日(土)は、エチオピアでのプロジェクトで学んだ学生に最後の個人講義と分析の改善に取り組みました。

夜11時にエチオピアを発って夜中にナイロビに戻り、18日(日)には、午前中は1年半お世話になったケニヤのキューナ教会に、午後は久しぶりにキューナ教会を運営する市橋牧師宅で日本人の聖書の学び会に参加しました。そこで、ルワンダでツチ族、フツ族の和解と平和の活動に従事していらっしゃる佐々木先生ご一家とお会いすることが出来ました。私は、日本での口蹄疫発生で、農家と行政側の溝が残らないように、なんとかルワンダの和解プロセスから学べないかとここ最近よく考えることがあったので、この偶然にとても驚きました。

ルワンダで佐々木先生は、ツチ族、フツ族両者が集い、お互いに辛かった気持ちを皆の前で吐露することでお互いに相手の辛さを理解し、憎しみを越えて許し合う交わりを持っています。また、両者共同で幸せのかご作り、野菜作りなどの作業を行っている他、大虐殺が起こった時、家を破壊した側は、お詫びにグループで相手の家を再建してあげる作業を行っています。詳しくお知りになりたい方は、以下のURLを訪れてみてください。

http://rwanda-wakai.net

7月19日(月)。エチオピアに行く前日の土曜日に、ショッピングセンターで知らない間に車の助手席を壊され、車内を詮索されたようです。エチオピアにいる時に平日は車を共同使用しているフランス人の友人に連絡を受けたので、今週は、泊まっている宿の管理者と確認の話し合いをし、今日は修理の見積りに行ってきました。全くいろんなことが起こります。昨日は寝ていたら近くで発砲事件がありました。

今日は一応、また一つ学生の分析が終わりました(やっていることが高度なので、修士レベルの学生だと一人で分析出来ないのです)。広域研究プロジェクトは面白いですが、教育のことを考えると、質は上がらないと思います。やはり、徒弟制度じゃないけど、学生は研究者の傍にいて、定期的に顔を合わせて指導を受ける距離にいないとだめだと私は思います。

今後は国内、国外を問わず、勤務先の酪農学園大学では、少なくとも一定期間は傍にいて指導する体制を構築し、それを崩さずやって行こうと考えています。