1992年にSEGAからModel1基盤作品処女作としてリリースされた「バーチャレーシング」はF1(一応厳密にはフォーミュラーカーではあるものの特にカテゴライズはされていないようですが)を題材にした3Dポリゴンレースゲーム。フルポリゴンで再現されたグラフィックとのちにデイトナUSA/デイトナUSA2やスカッドレースでも採用された4段階の視点切り替えシステムを搭載し(このシステムでSEGAは特許を取っています)、当時としてはリアルな挙動で大ヒットした名作レースゲームです。Model1基盤のスペック確認用に開発されたゲームで、これの成功がきっかけでやはりこちらも名作格闘ゲーム「バーチャファイター」がリリースされることとなり、また本作が成功してなければデイトナUSAシリーズもスカッドレースシリーズも存在しなかったでしょう。デザイナーは鈴木裕氏。ほかに名越俊洋氏、光吉猛修氏などのちにデイトナUSAを開発する方々もかかわっています。
本作は何度か移植版が出ており、まず1994年にAM2研自らがカードリッジに3Dチップをぶち込む(当時任天堂がFXチップとして同じことをやっていました。SFC版スターフォックス、ワイルドトラックスなど)ことで移植を実現。さすがにポリゴン数・フレーム数ともに減ってしまっており見た目は劣化しているものの業務用のプレイ感覚を忠実に再現、同じ年にはメガドライブの追加モジュールであるSuper 32X用に追加コース・車種を新たに加えた「V.R Deluxe」が発売。こちらは32bitモジュールのSuper32X用に開発されただけにポリゴン数も増え、フレーム数も20fpsに向上。追加BGMも高い評価を受け、のちにガラケー向け3Dアプリとして本作が移植されるほどの名移植となっています。
ただしV.Rとして移植度が高いのはこの2作品のみで、次世代機に移行した95年のセガサターン版はなぜか発売元・開発がタイムワーナー・インタラクティブ(旧テンケン)に移行。テンケンらしいカオスな説明書は評価されたものの、移植度はV.R DXに劣る出来でファンを失望されました。
それからしばらくV.Rの移植はなかったのですが、2004年に「SEGA AGES」シリーズとしてセガ旧作をリメイクしたシリーズを出した際にPS2に再び移植されることとなりました。それが本作「バーチャレーシング・フラットアウト」です。
開発は3D AGESが担当。本シリーズは後半M2がModel2基盤のエミュレーターを用いた作品(ラストブロングス、バーチャファイター2、ファイティングバイパーズ、電脳戦記バーチャロン)をリリースするまでは変なアレンジを施すのが特徴で、アウトランはフェラーリ・テスタロッサ風の車から詳細不明のスポーツカーに変更したうえで3Dにリメイク(当時Outrun2が稼働していたにもかかわらず)するなど微妙な評価だったのですが、本作は見た目に関してはタイトルにもなっているフラットシェーディングを施し、車の書き込みも細かくなり、さらに業務用では30fpsだったフレーム数が60fpsに向上してはいるものの生ポリゴンそのままなグラフィックやアーケードのセレクト画面(”ボタンでシートを調整してください”のアナウンスも再現しているのは感涙!!)、チェックポイント痛快時に流れるBGMなどは業務用をそのまま踏襲。さらにV.R DXとは違う新コース、新車種も追加するなどこれでV.Rの移植版としては決定版がリリースされたのかと思われたのですが…
上記SS通りクッソダサいタイトルスクリーン、なぜか挙動が大幅に変更されており、妙にドリフトしやすくなった業務用のフォーミュラー、敵車に接触すると簡単にスピンアウトしてしまう仕様に改悪、ノーマル設定の周回数が5周→4週に減ってる(ため本来ファイナルラップ時に流れるBGMは周回数をロングに設定しないと聞けない)、アーケードモードのエンディングをなぜかバッサリカット(ちなみにこのエンディング自体は一応収録はされていてチャンピオンシップでシリーズ優勝すると見れるらしいです)など、見た目以外のアーケードの差異が多すぎる困った移植になっています。やっぱりMD版V.R DXを超えることはできませんでした。これならModel1版をベタ移植してくれたほうが良かったのでは…もともとAGESシリーズは低価格で販売されているのも特徴でしたし。
とはいえ見た目に関してはこれまで移植された作品の中で最も業務用に近い移植になっていますし、AGESシリーズ初期移植の中では原作に近い再現度で、ハードやゲーム自体の入手のしやすさからあくまで雰囲気を楽しむのであれば本作を購入するのも悪くはないんじゃないかなぁと思います。入手できるのであればSuper32X版V.R DXをお勧めしますが…