空飛ぶ自由人・2

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東京ベイ東急ホテルでランチ

2023年09月24日 23時00分00秒 | わが町浦安

先日のこと。
友人と共に、↓のホテルに行きました。


東京ベイ東急ホテル


浦安を縦に走るシンボルロードの最終地点の海沿いにあります。

このレストランでランチを。


広々とした座席の片側に


オープンスペースが。

実は、このホテルのまん前の海で花火大会が催されるのです。

絶好のロケーション。
それを目的に建てたようなホテル。
なのに、2回しか恩恵にあずかれなかったという、
可哀そうな話。
そうです。
コロナで3年間花火大会は休みだったのです。

でも、今年は10月21日(土)に、
4年ぶりに開催。

当日、既にこのレストランは、
予約で一杯だそうです。

この席が絶好の場所。

この正面に花火が上がります。

パンや


サラダが並んでいます。

デザートも。

週替わりパスタ、週替わり窯焼きピッツァ、
シーフードのブラックカレー&ライス、週替わり魚料理、    
週替わり肉料理、ブイヤベース風サフランスープガーリックトースト、
ビーフステーキジュドブッフとディアブルソースフレンチフライ添え
などの中から一品注文すると、あとはビュッフェ形式

まずサラダ。

パンも。

今回はパスタと


ピザを頼み、二人でシェアしました。


パスタは2400円、ピザは2500円。
つまり、一人2450円(税込み)で
パン、サラダ、オードブル、デザートが食べ放題。

ソフトドリンクも飲み放題。
味もなかなか。
これがデザート。


アイスも。


コスパはかなりいいですが、
実はこのホテル、12月一杯で閉館
開業して5年しかたっていないのに。
東急は撤退の決断が速いといいます。
理由は、「ホテル建物所有者の変更に伴い」ですと。
つまり、売却したということでしょう。
おそらく購入したのは、他のホテルチェーン。
ホテル以外に使い道のない建物ですから。
どこのホテルになるかは未公表。

朝食もサンドイッチ、

お茶漬け、

うどん、

どんぶり

それに、洋食・和食・玉子料理・デザート・ドリンクのビュッフェで、
2900円とかなりの高コスパなので、
一度来てみようと思っています。


小説『ゴリラ裁判の日』

2023年09月22日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

主人公は雌のニシローランドゴリラ↓、

名前はローズ
カメルーン↓のジャー動物保護区のジャングルで、


父・エサウをリーダーとする家族と共に暮らしていたが、
実は、母親のヨランダとローズは特別な存在だった。
母娘ともども、言語を理解でき、
手話で話すことができるのだ。
ジャングルの中の研究室で手話を教えてもらった結果だった。

手話を使って人間と「会話」をすることができたゴリラには、
先例として、「ゴリラのココ」↓がいる。


2018年、カリフォルニア州で46歳で亡くなった。

ヨランダの知能は5歳児程度だが、
ローズは高校生並。
好奇心と向上心に満ちており、
その上機知とユーモアまでそなえている。
まさに、並の人間以上の存在だった。

父親が他のゴリラグループの攻撃を受けて亡くなったので、
母娘はアメリカに行くことになる。
ローズは映像を見て学習する能力があり、
研究所でアメリカのドラマなどを観て、
アメリカは「夢の国」だと、
憧れがつのっていたのだ。
母親は映像を観ての学習能力はなかった。
そして、ベンチャー企業で開発された
手話を音声に変換できるグローブを装着、
人間と音声で会話できるようになる。
「声」をも獲得したのだ。

グローブのメーカーのCMに出演し、
世界に衝撃を与えた後、
渡米後、1カ月の隔離期間を経て、
シンシナティの動物園のゴリラパークに入り、
そこのグループに加えてもらう。
雄ゴリラのオマリはローズの夫になる。
(ゴリラは一夫多妻制)

ローズは「会話するゴリラ」として人気者となり、
夫のオマリたちと動物園で幸せに暮らしていた。
ある日、柵を乗り越えて男の子がゴリラ舎に侵入し、
オマリがその子をひきずり回したため、
動物園職員により、銃殺されてしまう。

これは、ハランベ事件という、似た事件が実際にあった。

ハランベ事件・・・2016年5月28日の午後、
         米国シンシナティの動物園で、
         囲いの中に落ちた男の子を手荒に扱った
         雄のゴリラ・ハランベ
         (体重190キロ以上のニシローランド・ゴリラ)が
         射殺された事件。
         男の子の命が危険にさらされているとして、
         麻酔銃を使わず即座に実弾射撃に及んだ園側のふるまいに、
         厳しい批判、擁護論、様々な意見が飛び交うことになった。

しかし、ゴリラだから殺処分が許されたというが、
人間だったらどうなのか。
事件はもっと精査され、
責任を問われる者があぶり出され、
ふさわしい罰が科せられるはずだ。
ローズはそれを求めようと決意し、
動物園を訴える

「夫が殺されたら、警察を呼ぶ。
 犯人が裁かれないなら裁判を起こす。
 普通のこと、私は間違ったことをしていない」

裁判の結果、ローズ側は敗訴。
一旦引いたローズだったが、
紆余曲折の後、上訴し、
司法の壁、人間とゴリラを隔てる壁に挑戦する。

本書はハランベ事件をモチーフとしている。
もしもハランベに「遺族」がいて、
射殺は不当だと訴えることができたなら?
その裁判は、様々な要因を内包していた。
人間と動物の区別は?
「人権」とは?
動物の命と人間の命は価値が違うのか?

ただ、作者は、この話はハランベ事件より早く着想していたという。

作者は言う。
「いちばん書きたかったテーマは
人間の限界というか、人間というものの枠組みです。
人間というものの枠組みは僕たちが思ってるものとは違うんじゃないか
っていうところがいちばん大きなテーマなんです。
ただ最初は人間が進化した時に人間の枠組みから出てしまうものは何かないか、
こぼれ落ちるものは何かないかっていうのを考えていたんですよね。
そしたら調べていくうちに引っかかったのが「人権」で。
人権って全ての人間が持っている、
全ての人間に平等に当てはまると言われますし思ってますけど、
その「全ての人間」が何を指すのか(の定義)がないんですよ。
それが僕の中ですごく衝撃で。
それを小説にしたいなと思ったのがきっかけなんですね。
だから最初はゴリラの話じゃなかったんです」

裁判で負けた後、ローズは報道陣に言う。

「私は諦めた。
 正義は人間に支配されている。
 裁判は動物に不公平だ」
「裁判官も陪審員も全て人間。
 誰も私たちゴリラのことを理解しない」

これは深い示唆に富んでいる言葉だ。
昔、アメリカでは黒人に「人権」はなかった。
殺されても、犯人はつかまらない。
裁判をしても、陪審員は全員白人。
誰も黒人のことを理解する者はいない。
更に言えば、
昔、女性にも人権はなかった。
女性の参政権が認められたのは、
まだ一世紀前にも満たない。

ジャングルの研究所には、
サムとチェルシーという男女の研究者がいるが、
二人の研究課題は
「類人猿は文章を作れるか」の再研究。
既に、先行する研究者によって、
その能力は否定されている。
ローズの発見は、その結論をくつがえすものだった。

手話を音声に変換するグローブを付ける際、
どの声色にするかを選ぶ場面も興味深い。
低すぎる声、高すぎる声、
お嬢さんのような声、役員のような声。
そして、ふさわしい声を得た時、
ローズは開発者のテッドに言う。
「テッド、私は自分の声を見つけた。
 とてもいい声。ありがとう」
そして、サムとチェルシーにも声で感謝する。
「サムとチェルシーもありがとう。
 二人がいなかったら、
 お母さんも私もただの普通のゴリラだった。
 言葉も分からず、
 人間の文化も知らなかった」
その装置では、
罵倒や汚い言葉、下品な表現
は翻訳しないようにプログラムされているのも面白い。

途中、ローズは自分の立場に悩む場面がある。

私はゴリラではない。
私は人間でもない。
ゴリラと人間の合間で彷徨(さまよ)う何かだ。
私は誰かに理解してもらいたかった。
私の気持ちを。
私の孤独を。

研究所を訪問して来た上院議員の力で、
ローズはアメリカに行くが、
それがカメルーン政府からアメリカに対する
10年間の貸し出し、というのだ。
(パンダと同じだ)
なにしろ、ニシローランドゴリラは、
絶滅危惧種
ゴリラはヒガシゴリラ(ヒガシローランドゴリラ、マウンテンゴリラ) 
ニシゴリラ(ニシローランドゴリラ、クロスリバーゴリラ) 
に分類され、いずれも絶滅危惧種に指定されており、
ワシントン条約により国際取引が禁止されている。

ローズのCMに対して、
CGだ、ロボットだ、特殊メイクだと疑う声が上がる。
映画「猿の惑星」を観ているからね。
その疑惑は記者会見で吹っ飛ぶ。
記者たちは、ローズの言語能力、知性や機知に驚く。
特に、記者がゴリラの生殖について無礼な質問した時、
「もしあなたが他の記者の前で、
 あなたのセックスライフを語ってくれるのであれば、
 その後で質問に答えます」
とい返すあたりは痛快。

ローズには姓が与えられる。
ローズ・ナックルウォーク。
これは前肢を握り拳(ナックル)の状態にして地面を突いて歩く
ゴリラ独特の四足歩行のこと。


ローズは、この姓を気に入る。

ローズは最初の裁判に負けた後、
誘われてプロレス興行団体に入り、
プロレスをするが、
ここはちょっと行き過ぎか。
体重100キロ未満だから可能かもしれないが、
筋肉の能力が人間を遥かに越えているのだから。
プロレス興行に際し、
「動物虐待反対!」のプラカードが現れたのは笑えた。

裁判の中枢にあるのは、
動物の取り扱い。
動物は人間より劣っている、
人の命は動物に優先される。
差別だ。

新しい裁判の弁護士ダニエルは自信を持って言う。
「(勝つには)君が人間になればいいだけさ」
「いや、君はもう人間なんだ。
 僕以外の誰も気付いてないが、君は立派な人間だ。
 君だけじゃない。
 ゴリラはみんな人間なんだ。
 もちろん、オマリも人間だった。
 だから君とオマリを救うために必要なのは動物の権利じゃない。
 君たちを守るのは人権だ。
 だから裁判で負けるはずがない」
そして、証人に立った類人猿学者を追及し、
「人間と動物の違いは、複雑な言語体系を持つか否かだ」
という見解を引き出す。
つまり、言葉を持つローズは人間なのだ!

そして、ローズは裁判の最後に、次の言葉を口にする。

「たとえ私が檻に閉じ込められていても、私は人間である。
 たとえ私が未熟でも、私は人間である。
 たとえ私が間違いを犯しても,私は人間である。
 たとえ私がゴリラでも、私は人間である」

ゴリラの裁判を通じ、
人類の存在や
差別の歴史まで想起させる、
高級な寓話
アメリカで映画化されないか。

昨年のメフィスト賞受賞作

メフィスト賞・・・講談社が発行する文芸雑誌「メフィスト」から生まれた
         公募文学新人賞。
         ジャンルは「エンタテインメント作品(ミステリー、ファンタジー、
         SF、伝奇など)」という大まかな区分。

筆者の須藤古都離(すどう・ことり)。


卓抜な着想、構成力、表現力と、
とても新人とは思えない快作を生んだ。
メフィスト賞は、下読みを雇わず、
編集者が自ら全応募作に目を通すというが、
この作品にぶち当たった時の
編集者の驚愕と歓喜が目に見えるようだ。

 


ドラマ『6IXTYNIN9 シックスティナイン』

2023年09月21日 23時00分00秒 | 映画関係

[ドラマ紹介]

タイ発のクライムミステリー。

業績不振の保険会社から
くじ引きで解雇されたトゥムは、
自宅の前に届けられた箱を明けてみると、
そこには、莫大な金額の札束が入っていた。
部屋番号の「6」が
ネジの緩みで逆転して「9」になっており、
間違って届けられたらしいのだ。
それは、犯罪組織が取引相手に渡す予定の金であった。
すぐに怪しい男が二人押し入って来て、
金を奪おうとするが、
殺されそうになったトゥムが
とっさに持った包丁で刺されて死んでしまう。
(正当防衛だ)

その上、別なボスによって送られた男が
クローゼットに隠れていると、
隣室の麻薬扱いのグループの偵察を頼みに来た警官と
撃ち合って、二人とも死んでしまう。
なぜか死体が増えていく

一度は警察に出頭しようとしたトゥムだったが、果たせず、
死体の処理に箱を買い、
階下の住人の話からヒントを得た、
沼に箱を捨てようとするが・・・

ひょんなことで事件に巻き込まれた不運な女性が
もがけばもがくほど窮地に陥る、
という展開が面白い。

これに、階下の女性と警官の関係や、
保険会社のCEOと
麻薬のボスの暗躍や
ラッパーの入れ墨騒動などがからむ。

様々な人間の思惑が
あるマンションの中で展開し、
どんどん死体が増えていくのがブラックで、
何だかタランティーノの映画みたいだった。

と思ったら、
このドラマ、
1999年の同名映画のドラマ版で、
監督・脚本のペンエーグ・ラッタナルアーンは、
「タイのタランティーノ」と呼ばれているらしい。
オリジナル作品は、
各国の国際映画祭で絶賛されたという。

死んだ者を運ぶ天使たち(天使には見えない)が
車で(なぜ)死者受付係の前に死者を連れて来て、
受付の中年女性が本名を入力して、「Deleat」キーを押して
天国(または地獄)に送り込む、
というシステムが笑わせる。
(天国もコンピューターを使うのか。)
で、この経緯が、
後でとんでもなく可笑しい展開を呼ぶ。
これも笑える。

背景にタイ政治の混乱が置かれているのも興味深い。

窮地に陥ったトゥムが
親友まで殺され、
偽造パスポートでフィンランドに逃げようとするが・・・
その結末はご自身がお確かめ下さい。

拾い物のタイのサスペンス。
もう少しテンポを上げてもいいのでは、と思うが。

Netflixで配信中。

6話完結 計4時間37分


危険な道路

2023年09月20日 23時00分00秒 | 様々な話題

日本の道路網は整備されていて、
舗装されていて、
土が出ている道路など稀ですが、
世界には危険な道路が沢山あります。
写真を見ると、笑ってしまうようなもの、
ホントかな、と思うようなものもあります。

ステルヴィオ峠(イタリア)

この峠は標高2700メートルで、
東アルプスで2番目に高い舗装された峠です。
180度のカーブが60か所あり、運転は困難。
谷との境目には、
低いコンクリートの障壁があるだけ。

メキシコ連邦高速道路1号線

ベニートフアレス半島横断ハイウェイとして知られています。
ベニート・フアレスとは、メキシコで最も尊敬される英雄の一人。
途中で頻繁に峠があり、特にここはそうです。


四川チベット高速道路(中国)

成都とチベットのラサまでの2142キロメートルを走行し、
15日程かかるといいます。
旅行中に気候が変化し、
雨が降ると道路が泥沼になってしまいます。

アトランティック・オーシャン・ロード(ノルウェー)

このルートはもともと20世紀初頭に鉄道として計画され、
計画変更により放棄されたものです。


道路に打ち寄せる巨大な波が行く手を阻みます。

マウンテンサイドロード

照明、手すり、警告標識はありません。
道路自体も十分に危険ですが、
羊やヤギの群れがいるとさらに危険になります。

天門山(中国) 

                                
天門山国立公園は、中国中南部の張家界市にあります。
ケーブルカーは全長7455メートル、
標高1279メートルを誇り、
「高山の旅客索道としては世界最長」です。

ロード13ヒーローズ(中国)

山奥の村が外界との連絡手段のため、
村長率いる地元の村民13人によって堀り進められ、
完成まで約5年の歳月を費やし
1977年に開通しました。
その13人の男たちに敬意を表して、
「13人の英雄の道」と呼ばれています。


高さ約5メートル、幅4メートル。
トンネルには35の窓があり、長さは約1250メートル。
かつては外の世界から切り離されていた小さな村に、
今では何千人もの観光客が訪れています。

江島大橋(日本)

鳥取県境港市と島根県松江市の江島とを結ぶ橋。
この橋の完成前は、
船が通るたびに7~8分橋が通行止めになり、
14t以上の車は橋を通れず遠回りをしなければならなかったので、
その不便を解消する為に造られたのがこの江島大橋。
この橋の完成により、
大型トレーラーや観光バスの移動時間短縮に繋がり、
大型船舶は橋の下を通過することができるようになりました。


全長1446メートル、
勾配は6.1%(島根県側)、5.1%(鳥取県側)
水面からの高さは44.7メートル。
「ジェットコースターブリッジ」と呼ばれています。
CMにも使われ、
「これはCGでは?」と疑われましたが、
正真正銘実在する橋。

スキッパーズキャニオンロード(ニュージーランド)

ニュージーランドで最も風光明媚なルートの1つである
スキッパーズロードからアクセスできます。
ここはかつては金の採掘で賑わっていました。

フェアリーメドウズ(パキスタン) 

                       
道路の名前は素敵ですが、
砂利道なので整備が悪く、
多くの人がこの道路で命を落としています。

ルクソールアルフルガダ通り(エジプト)


危険がありそうには見えませんが、
問題は夜。
山賊やテロリストが車を銃撃するので、
ライトを消したままに走るため、
死亡事故や正面衝突につながります。

ハルセマ・ハイウェイ(フィリピン)

ルソン島北部に位置し、
中央山脈のバギオからボントックまで。
最高点は海抜2200メートルに達し、
フィリピンで最も標高の高い高速道路となっています。

ナイジェリアの道路

こんな所にこんな道路が本当にあるのでしょうか。

どうもあやしい。

 


小説『博覧男爵』

2023年09月18日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

東京国立博物館と上野動物園の開設に尽力し、
「日本の博物館の父」として知られる田中芳男
(天保9年8月9日[1838年9月27日] --大正5年(1916年)6月22日)
の生涯を描く。

信濃国飯田城下で典医を務める医師田中隆三の三男として生まれた芳男。
父・隆三は芳男に漢学を身に着けさせ、特に
「人の人たる道は、この世に生まれたからには
自分相応の事をして世用を為さねばならない」
と教え諭した。

18歳の時、名古屋に出て
博物学者としても著名であった伊藤圭介の門下に入り、
西洋医学を身に着けた他、博物学や本草学を学んだ。

24歳で、幕府の蕃書調所(洋書調所)に仕え、
物産学・本草学の研究開発に当たることとなった。

28歳の時、パリ万国博覧会に渋沢栄一らと共に出張。
航路の寄港地では、植民地の現実を目の当たりにし、
パリで、田中は驚愕する。
博覧会本館は鉄骨とガラスを使用し、
エレベーターまで備えていた。
その衝撃は大きく、
諸外国に比して近代文化での著しい遅れを痛感する。

この時、
国立自然史博物館や動物園や植物園が、
広い敷地内に併設されていた、
ジャルダン・デ・プラント(パリ植物園)を
博物館の見本とすることになる。

翌年帰国する前日、大政奉還。
まさに時代が変わる激動の時
明治政府の官僚として従事、
これ以降、日本に博物館を設置して、
日本人の目を世界に向けさせることを企図する。
博物という言葉は、広く物を知るという意味を含んでいる。

「百聞は一見に如かずと申しますように、
そこを訪れる人々は、
まさに実物を見て見識を深めることができます。
文字を読めない人にもわかりやすく、
子供にも興味を持ってもらえるでしょう。
ひとりひとりの知見に厚みが増せば、
国全体の底力も上がろうというもの」

その後、ウイーン万国博覧会(明治6年[1873年])に備えて、
全国各地から取り寄せた出品予定品を公開するため、
湯島聖堂大成殿で湯島聖堂博覧会を実施。
これが後の上野の博物館につながる。

パリ万博の時はスエズで荷下ろしして、陸路を運び、
その後船で地中海を航行したが、
ウィーン万博の時は、スエズ運河が開通していて、
そのままの船で地中海に入った。

その後、フィラデルフィア万博(明治9年)にも芳男は派遣されている。
この時、ベルが考案したた電話機、
レミントン社のタイプライターなどが出品されていた。

黒船の来航で開国を迫られた日本が、
外国の文化に触れ、
近代化に突き進む、
そういう時代に生きた人物。
パリ万博で欧米文化の底力を痛感し、
軍事や産業を中心に明治維新が進む中、
日本が真の文明国になるためには、
武力に頼らない日本の未来、
知の文明開化を成そうとした。

その原点とでもいうべき、
飯田城下の屋敷の天井に掲げられていた
五大州・五大洋の世界地図で、
世界に目が開かれたのも興味深い。
なにしろ、それ以前の日本人は、
世界はおろか、日本全体の姿さえ把握していなかったのだ。

物語の始めの方で、ある人が
「学ぶ」ということの本質を
芳男に向かって語る場面がある。

「何事にも好奇の心で向かえば、
珍しい物を集める楽しみ、
それについての知見を得る喜び、
そして、未知なることを学ぼうという
意欲を味わうことができる」

まさに「知らなかったことを知る」喜びが、
学ぶということなのだ。
学校の授業とは、先生が生徒の知らなかったことを教えてくれるもの。
そんな場所で、他のことをしていたり、
寝ていたりするのは、
本当に愚かだと思う。

流入してきた様々なを植えて、
種まきの時期を調べ、
その料理法を研究する場面など、
ああ、こうして西洋の食材が取り入れられたのだな、と感慨深い。
キャベツや香港菜(白菜)、カリフラワーなどはこの時、入って来た。
平菓花(アップル=リンゴ)の苗もこの時のもので、
それが寒冷地での農作物となっていく。

博物館の設置場所として上野が選ばれた経緯も面白い。

土地の広さをはじめ、
火事や風水害、地震への備え、
来館者の行き来がしやすいこと、
周囲の景観などを考え合わせると、
東叡山寛永寺境内、
つまり上野の山がもっとも適しているとの結論に達していた。

今考えても、絶好の場所に作られたと言える上野は、
博物館、美術館が密集する、文化の発信地だ。
東京国立博物館や国立科学博物館だけでなく、
上野動物園も併設した理由も分かる。
ジャルダン・デ・プラントをお手本にしたからだ。
植物園だけは、
既に小石川植物園があったので、
上野に作ることは断念。

紆余曲折あったが、
ようやく、念願の博物館が開館
黒船が浦賀に来航したのは1853年、
明治維新は1868年、
上野の博物館の開館は1882年、
明治15年だから、
驚くほど早い。
芳男は2代目館長を務めた。

開館の時、芳男は父が教えてくれた「三字経」の一節を思い出す。

「犬は夜を守り、鶏は晨(あした=夜明けのこと)を司る。
いやしくも学ばずんば、
なんぞ人と為さん。
蚕(さん)は糸を吐き、蜂は蜜を醸(かも)す。
人学ばずんば、物に如(し)かず」

1915(大正4年)、男爵を叙爵。
本書の題名の由来だ。
芳男は生涯、農林水産業や博物学の発展振興につとめ、
1916年(大正5年)6月22日、永眠(79歳)。
墓所は谷中霊園にある。

2016年(平成28年)、
国立科学博物館で芳男没後100年記念企画展開催。
前日には、胸像の除幕式が行われた。

日本の博物館のあけぼのに、
こういう人物がいたということを伝えてくれる、
志川節子の労作。
勉強になった。