空飛ぶ自由人・2

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羽生結弦の「GIFT」

2023年03月10日 23時00分00秒 | 様々な話題

2月26日、
羽生結弦が東京ドームで、
「単独公演」を開催した。


(呼び捨てにすると、娘に叱られるので、
 もう「選手」ではないが、
 「羽生選手」と称する。)
普通、フィギュアスケートのショーというのは、
沢山のスケーターが次々と出て来て、
それぞれの演目を滑る、というものだが、
これは、最初から最後まで羽生選手が
12曲のプログラムを2時間半にわたり、
一人で滑り切るのだ。

ファンにとっては理想的な内容といえる。
というのは、ショーや競技会の場合、
お目当てのスケーターは2人か3人で、
それ以外のスケーターの滑りに付き合わなければならない。
5~6分の一人の出演時間のために、
2~3時間を費やさねばならない。

ところが、「単独公演」は、
羽生選手だけしか出て来ない
徹底したファンのための集い。

寄席でも、お目当ての落語家の出番まで、
他の落語家の噺を聞かねばならない。
独演会といえども、前座が出て来るから、
全部、というわけではない。

それを、料金分、全部、羽生選手。
もちろん、疲れを癒すための時間は必要で、
映像でつなぐわけだが、
それでも、ファンにとって、
これほどコストパフォーマンスの高いイベントはない。

実は、昨年9月の単独ショー「プロローグ」の企画を聞いた時、
耳を疑った。
全力のパフォーマンスを何曲も続けなければならない。
体力的に、そんなことが可能なのか。

でも、イベントは成功し、
続いての企画が、この「GIFT」だ。
会場は通常のフィギュアの会場より大きい、東京ドーム。
観客席とリンクが遠い。
一体どうやるつもりだろう。

座席は抽選。
娘も応募して、
2階席をゲット。
娘は、1階を避けて、
全体を見渡せる2階席の
センター寄りの席を目指したという。
2万2千円。
1階席はもっと高かったらしい。
抽選に外れた人が沢山いたという。

たまたまその日は、
私はチームラボと二期会がコラボした
オペラ「トゥーランドット」を観に出かけた。
奇しくも、値段は同じ2万2千円。

帰宅すると、
「GIFT」は、
ディズニープラスで生中継中
丁度40分間の休憩で、
氷の整備が行われていた。

そして、始まった第2部。
驚いた。
東京ドームのバックスクリーン部分に巨大なスクリーンを設置、
その前にアイスリンクが作られ、
それを取り囲むようにコの字型に不思議な装置が並ぶ。


羽生選手自らがナレーションを務め、
プロジェクションマッピングを使った映像がリンクや周辺、
更に天井までも染め、
スポーツ、音楽、アートが縦横無尽にリンクして、
物語の世界を表現する。
そして、観客が持つライトが光り、
スタンドが光で埋めつくされる。
演奏は生の東京フィルのオーケストラと、特別バンド。
広い東京ドームを見事に生かした、
音と光とスケートの競演。

明らかに、演出も音楽も映像技術も
才能ある人々の仕事だと分かる。
ある箇所で、
もしかして、この演出家は、
リオのオリッピック閉会式で、
次回開催地・東京招待のパフォーマンスの演出をやった方ではないか、と思ったら、
やはり、そのとおりで、
Perfumeのショーを手がけている、MIKIKO先生
(なぜか「先生」と付く)だった。
東京オリンピックの開会式の演出を期待されながら、
諸事情で外され、
あの電通主導の平凡なオリンピック開会式となってしまった、
リベンジとも言える、素敵な演出だ。
音楽も素晴らしく、音楽監督は武部聡志という方。
松任谷由実さんのコンサートで音楽監督を務め、
「ファンタジー・オン・アイス」の音楽も手掛けてきた。
そして、映像技術。
ダンスカンパニー。
こうした一流の才能が
羽生選手一人のために結集したのだ。
そして、全体の構成は、羽生選手自らが考案し、
自身がつくった物語を元にショーが繰り広げられた。
つなぎの映像は、羽生選手のポエム。
そして、何より、羽生選手の華麗なスケーティング。

直接観ることの出来た観客は3万5千。
国内と台湾・韓国・ドイツで実施されたライブビューイングでは
計3万人が視聴したという。
しかも、翌日、1日遅れのディレイビューイングも行われたという。

羽生選手のパフォーマンスは、次のとおり。

前半
「火の鳥」
「ホープ&レガシー」
「あの夏へ」(千と千尋の神隠し) 
「バラード第1番」
6分間練習と
「ロンド・カプリチオーソ」

後半
「Let Me Entertain You」
「阿修羅ちゃん」
「オペラ座の怪人」
「いつか終わる夢」(ファイナルファンタジー10)
「ノッテステラータ Notte Stellata」

アンコール
「春よ、来い」
「SEIMEI」

アンコールでの「SEIMEI」の出し方。
素晴らしく感動的だった。

会場にいた娘は
オープニングから素晴らしすぎて涙が噴射し、
最後まですごいすごいすごいの連続。
本当に素晴らしいものを見せていただいて
もうGIFT前の自分に戻れないくらいの衝撃をうけたという。

涙腺崩壊だったらしいが、
もし私が会場にいても、
泣いたかもしれない

アイスショーで、こんなことが出来る。
羽生選手じゃなきゃ集められない
国内トップのスタッフ達と羽生選手の
とんでもないプロデュース能力が
完全にアイスショーの概念というか
天井をぶっ壊して遥か彼方まで飛んでったみたいな
今まで見たことないものを見せていただいた。
これはアイススケートの歴史に残る日だ、との感想。

製氷、映像パネル、演奏家たち、
更に、ライブビューイング、配信・・・
一人の人物が、こんなにも大きな経済波及効果を生んだのだ。

しかも、たった1日。
時間をかけてリンクを作り、装置を作ったことを考えれば、
数日間やって方が経費的に助かるだろうが、
たった1日のパフォーマンス
なにより、
連日では羽生選手の体が持たない。
オペラの公演が、
複数の歌手で日替わりで開催されるのと同じだ。

アイスショーの可能性を
更に広げた、必見のショーだった。

3月12日までは、
ディズニープラスで配信される。

そして今日から12日までの3日間、
体操の内村航平選手とコラボしたショー
「羽生結弦 notte stellata」が、
宮城・セキスイハイムスーパーアリーナで開催された。


まだまだ可能性は広がる。