[映画紹介]
1985年にアルゼンチンであった
軍事独裁政権を裁く裁判、を描く映画。
1976年の軍事クーデターにより、
アルゼンチンで軍事独裁政権が発足し、
国民に過剰な弾圧を行った。
軍は反政府ゲリラを壊滅させると称して
反体制派の人々の多くが逮捕、連行され、拷問され、殺された。
死者の数は3万人と言われる。
それから17年後の1983年、軍事政権が崩壊。
そして、1985年、
軍事政権時代の不法行為を裁く裁判が始まる。
新政府は裁判を決意したものの、
引き受ける検事がいない。
独裁を行なっていた軍人達はみんな生き延びているため、
彼等を告発する裁判を引き受けたら
軍人達に誘拐され殺されるかもしれないからだ。
主人公ストラッセラ検事も度重なる呼び出しから逃げ回るが
ついに引き受けるはめになる。
軍部への怒りが民意だと悟ったからだ。
彼の元に派遣された副検事ルイス・モレノ・オカンポは
裁判の経験がない新米。
手足となってくれるスタッフはみんな協力を断ったため、
オカンポは若者たちを集める。
彼等は軍と繋がりがなく、
民主主義に素朴な信頼と希望を抱いていたのだ。
準備期間が限られる中、
若者たちは手分けして、証言を集める。
検事らには、執拗な脅迫がなされる。
検事の自宅に不法侵入し、
脅迫状と銃弾が置かれている。
毎日の様に脅迫電話がかかってくる。
裁判が始まり法廷で被害者が証言する。
そのあまりの残酷さに、人々は胸を打たれる。
(法廷の様子はテレビ中継されていた。)
軍人達は何の関係もない市民を連れ去り拷問して殺害した。
中には、警察に連行される途中で出産し、
赤ん坊を抱くことさえできなかった女性も証言する。
ストラッセラ検事は臆病で、
最初はびくびくしていたが、
被害者の証言を聞き、
若者に包まれているうちに、勇気を獲得し、
脅迫にひるむことなく、
法の下での正義を追求していく。
その結果、軍政時代の幹部たちは、終身刑をはじめ、
実刑が課せられた。
中には無罪になった者もおり、
検事たちはそれが不服だった。
しかし、裁判に政治の介入はなく、
アルゼンチンが三権分立と民主主義を確立した歴史的裁判と言われる。
アルゼンチン国民は国民の民意で、
軍人独裁者を処罰したのだ。
終わり近く、検事による論告が圧巻。
それは長い軍政時代の国民の恨みを晴らすもので、
正義が貫かれたものだったからだ。
法廷は拍手に包まれる。
映画はドキュメンタリー・タッチで展開する。
見応えがある。
先のゴールデン・グローブで外国映画賞を受賞した。
アカデミー賞では、国際長編映画賞にノミネートされた。
監督はサンティアゴ・ミトレ、
脚本はマリアノ・ジナスとサンティアゴ・ミトレ。
ストラセラ検事にリカルド・ダリン、
副検事にピーター・ランサーニが扮する。
Amazon Primeで配信中。