空飛ぶ自由人・2

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私の「エブエブ」体験記

2023年03月20日 23時00分00秒 | 映画関係

先のアカデミー賞で、
作品賞をはじめ、
監督賞、主演女優賞、助演男優賞、助演女優賞、
オリジナル脚本賞、編集賞と
最多7部門を受賞した
「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」
(意味は、「なんでも、どこでも、いっぺんに」。
 略して「エブエブ」。)

公開初日に観に行って、撃沈。
率直な感想は、
「ついていけなかった」

ところが、10日後のアカデミー賞では7部門を制覇。
演技賞と編集賞と監督賞はそれなりとは思うが、
作品賞を取って、びっくりした。
これが2022年を代表する作品とは。
作品賞候補には、
「トップガン マーヴェリック」や
「西部戦線異状なし」、
「アバター:ウエイ・オブ・ウォーター」、
「イニシェリン島の精霊」、
「エルヴィス」、
「フェイブルマンズ」
など、立派な作品が沢山あったのに。
(候補作中、「逆転のトライアングル」は評価せず。
「TAR/ター」「ウーマン・トーキング 私たちの選択」は未見。)

「エブエブ」の紹介映像で、見覚えのない場面が多くあったので、
さては、眠ってしまったか、
と、再確認するため、
2回目に出かけた。

再度の感想。
「やっぱり、ついていけなかった」

コインランドリーを経営するエヴリンは、
優柔不断な夫、反抗期の娘、頑固な要介護の父と暮らし、と
様々な問題を抱えていた。
確定申告に出向いた税務署で、
監察官の執拗な質問に責められながら、
エヴリンは突然変身した“別の宇宙の夫”により“並行世界”に連れて行かれる。
そこで能力に目覚めたエヴリンは、
全人類の命運を懸けて巨大な悪と闘うべく立ち上がる・・・

という、話だが、
基本的に“マルチバース”という、
並行世界を理解しないといけない。
並行世界とは、
現在の世界と類似した別進行の宇宙で、
そこには自分や周辺人物が存在するが、
別々な進み方をしている。
で、この映画は、
別世界に住むエヴリンと
共鳴し、関連する姿が描かれる。

この並行世界にジャンプするのが頻繁で、
私はついていけなかった。
だって、こんな設定なら、
“なんでもあり”で、
理論も理屈も通用しない。
人物に感情移入できないし、
次々起こる事態が理解できないから、
ついつい眠気に襲われる。
ストーリーについてゆけず、
心が揺さぶられないから、当然の反応となる。

要するに、
この映画は“変テコリンな映画”なのだ。
一部の観客が熱狂する“カルト・ムービー”の類だ。

そんな映画に、アカデミーの会員の多くがなぜ投票したか。
人種問題や貧困やLGBTQを取り扱っているのが一つ。
もう一つは、アカデミー会員の体質の問題。

数年前、ノミネートが白人偏重だ、などという批判を受けて、
アカデミーは改善策を提示した。
それは、白人男性に偏った構成を改めるというもの。
そこで、アカデミー会員を大幅に増やした。
特に、女性を増やし、
人種を拡大した。
↓のデータを見ると分かるが、


2012年は男性77パーセント、女性33パーセントだったのを改善するため、
2022年の新会員は、男性56パーセント、女性44パーセント、
そして、37パーセントが非白人だという。
そして、その背景にあるのは“多様性”

大幅な人員増で何が起こるか。
アカデミー賞は元々ハリウッドの映画人のお祭り。
そのハリウッドの伝統や思想が破壊される事態だ。
あえて誤解を恐れず言うが、
“ハリウッドのDNAを持たない人々”が大幅に増えたということだ。

何も世の中の動きに迎合することなく、
自分たちの矜持を守ればいいのに、
“世間からの遊離”を恐れ、
自らの存在意義を捨ててしまった。

その結果は、3年前の「パラサイト」の作品賞獲得などという形で現れた。
濃密な人間ドラマ、心に滲みる感動作よりも、
多様性や人種などを前面に出したり、
珍奇な作品を面白がる風潮。
そして、今年は、風変わりな映画、しかも下品な下ネタ満載の「エブエブ」の受賞。

Yahoo!のレビューでは、
「エブエブ」の評価は5点満点の2.8。
↓に示すように、
「ひどい映画」という感想と共に、
「アカデミー賞の作品賞ということで観に来たが、
 アカデミー賞も落ちたものだ」
という感想が多い。

もちろん、選考結果は、
多数の人の総意であり、
神聖なものとして、けちをつける気はない。
しかし、「世間との乖離」を恐れたアカデミーだったら、
この作品賞受賞作への感想、
つまり、自分たちの選考結果との“乖離”
どうとらえたらいいというのだろうか。

以下、レビューの採点と、表題、簡素な書き出しを掲載する。

○1点 30分で帰りたくなります。
    はちゃめちゃで下品、理解不能。アカデミー賞も地に落ちたわ。
○1点 アカデミー賞受賞作なのに下ネタ連続にビックリ
○5点 ある種メタフィジカルセンスが必要なので低評価もあってよい
○1点 映画が最悪なのか、私が時代に遅れてるのか
    始まって1 分で、誘った人に申し訳ない気持ちでいっぱい。
    下品だし、こんなによいところのない映画は生まれて初めて!
    早くお口直しに素敵な映画を観たいです。
○5点 「世界はずうっと広いんだよ」
○1点 これがアカデミー賞とは混沌の時代の象徴とも言える作品。
○1点 観なきゃよかった。
    映画館まで行って、お金を払って、
    そして観せられたのがコレかと思うと映画への不信感が募るばかり。
    「でもアカデミー賞受賞作だからね」って
    何でも無邪気に有り難がるほど、観客は馬鹿じゃない。
○1点 本作がアカデミー賞を多数獲得に相当するかは、非常に疑問。
    近年、後味悪い韓国作品が受賞していることから
    政治的な思惑も働き、
    アカデミー賞=面白くていい作品 との図式が当てはまらなくなった。
    予想のはるか上を行く、駄作だった。
○1点 今まで見た映画の中で1 番つまらない
○1点 最初から最後まで意味が分からず私がバカなのか?と思って、
    帰ってからネットで考察を読んでみたけど、
    余計に意味が分からなくなりました。
○2点 後世の評価が気になる、“裸の王様”な作品
    個人的には映画として面白いと思う時間と、
    何を見させられているのだろう、
    この要素必要だったの?という時間の波のある作品で、
    上映開始中退出される方も数組。
    今年のアカデミー賞でアジア圏で多く受賞していたので嬉しかったのですが、
    例えばこの作品がメキシコ移民一家として作られていたら
    アカデミー賞が取れていたのか疑問が残りました。
○1点 何が何だか分からない
    アカデミー賞という名前に釣られました。
    受賞前に観ようと気合十分で映画館に行きましたが、
    ストーリーが破茶滅茶。
    最後まで頭が混乱状態でした。
    これでアカデミー賞?
    私の感覚が古すぎるのでしょうか?
○1点 ラスト15分は要らない。
    さすがに映画の途中で出たくなった。
    半地下家族の話もそうだったし、
    最近のアカデミー賞は、権威が全く感じられない。
    人気ないのがよくわかった。
○3点 これがアカデミー賞最多部門受賞作とは信じられない。
    自分が時代遅れなのか、映画が新しい局面に入ったのか。
○2点 アカデミー賞なんてとらなければ「まあヘンテコ映画だな」て感じで
    カルト的な作品としてそれなりに評価されたかもしれないのに、
    賞なんかとってしまったから「アカデミー賞でこの出来かよ!」て
    みんな文句言いたくなるのは自然だろう。
    作品のためにも、今後のアカデミー賞のためにも
    作品賞あげないほうが逆によかったのではないのだろうか?
○1点 これが面白いんだったらやっぱりアメリカ人はバカだな
○1点 時間と金を返せ!
○1点 自分なりにマルチバースの事やストーリーに関して
    ある程度理解しているつもりだけど
    それにしても下品で幼稚にしか思えない。
    1番多い評価が星1つっていうのがどんな映画か物語ってる。
○1点 最初から最後まで?????
○5点 マニア的ツボにはまれば、こんなに面白い映画はない!
○1点 アカデミー賞選んでる人達、頭おかしい
○1点 心が病んでる映画。
    見るとストレスを感じる。
    時間を返して欲しい。
    これが評価されている映画界は病んでる。
○5点 日本人の感性と社会性とは分かり合えない映画かもしれません。
    「トップガン最高」の人には向いているかわかりませんが、
    「トップガンつまらなかった」の人にはおそらく向いています。

以下、省略。
1点の評価がものすごく多いことだけ加えておこう。