laisser faire,laisser passer

人生は壮大なヒマつぶし。
楽しく気楽につぶして生きてます。

俺の味方はおらんのかby清盛

2008-09-12 | kabuki a Tokio

義賢最期

実盛とかぶらないためか、年長の雰囲気を出すためか、低音の海老蔵
これが功を奏したのか、海老蔵主演の丸本物で、初めて気持ち悪くならないで済んだ。進歩してる?

(というのは過大評価だったとあとで分かるんですが)。

気持ち悪くならない代わりに、なんだかちんまりまとまってつまらない義賢だった。
神妙な海老蔵なんて、神妙な福助よりもっとつまらない。
前半、多田蔵人(権十郎)と源氏への思いを打ち明けあうあたりのハラの薄さとか、義朝のどくろが大事すぎて足蹴にできないはずなのに、扱いが粗雑なあたりとか、小万(門之助)に対して早く行け、と促すあたりが脅しにしか見えないあたり、芸は非常に荒っぽく未熟なままなのに、妙にちんまりと、とりえだった派手さだけがなくなっている状態では、客としてはどこを面白がっていいのか、途方にくれる。

立ち回りは、と期待したんだけど、これまた戸板倒しもあっさりしてるし、仏倒しは膝が曲がってびびってるの丸出し。身体能力「だけ」は一流かと思ってたのにあの迫力不足はなぜ?

昼夜奮闘でお疲れ気味なのか?
っていったって、義賢最期の立ち回りで頑張らなくてどこで頑張るんだ?仁左衛門に負けない部分があるとしたらそこだけだろうに・・・。

というわけでただただつまらない一幕。

中では松也の葵の前が若手にしては糸に乗った台詞回しでいちばん聞かせる。この人、老けのほうがいい味出すかも。

 

竹生島遊覧

 

歌舞伎ではめったに出ないというから楽しみにしていたのだが、なるほどめったに出ないはずだ。出る必要がないのだもの。
結局後段の実盛物語で実盛自身が物語る部分をリアルに説明しているだけの段。
実盛をいい役者がやればやるほど、必要はないものだと思う。
逆にいえば、この段を出そうとした海老蔵の判断は正しかったともいえる(皮肉だよ!)。
昨今見直し始めていた門之助、義賢最期でもこの段でもやたら張り切りすぎ。いくら女武道でも海老蔵以上に声張ってもしょうがなかろうに。

 

実盛物語

 

うーん。
義賢最期で、つまらないながらもいくらか発声だけは安定してきたかと思った海老蔵クン。

全然そうじゃなかったです。

 

低音域のみで発声していたときは気にならなかった、不安定な発声、裏声の滑稽さなどはすべて「健在」でしたよ・・・
竹生島・・・を見ていたときはこんな説明的な幕いらないよ、と思っていたのだけれど、あの酷い物語を聞きながら、ああ、あそこで説明しないとこの台詞回しじゃ、客には竹生島の情景は伝わらないよなあ、と妙に納得してしまったのでした。
爆睡してる客も多かったけど。あたしゃ音感があるもんであの節回しを聴きながらじゃ眠れないのよ。たしかにあの物語、寝られる人は寝たほうが幸せです。せっかく竹生島もあることだし。

松也の葵の前が引き続き健闘。変に色っぽいのよ眉なし姿。
門之助、この幕はとてもよかった。哀れで母親の情があって。この幕の哀れさを際立たせるために前の幕で無駄に元気いっぱいだったのか、と思うほど。
市蔵手堅い。太郎助に首を討たれるときに前にとんぼを返る形は初めて見た。かっこよかった!新蔵右之助も悪くはないけど、右之助はもう少し綺麗な役で出してあげたいなあ。
咲十郎がちょっとした悪でいい味を出していた。そういえば彼も名題になっちゃったのかな?もう立ち回りは卒業?

 

以上なんだかなあ、の源平布引滝通し。通しでみていちばん印象的だったのはタイトルどおり「どいつもこいつも源氏の味方!」
源平といっておきながら、平氏方の主な役者は全員多かれ少なかれ源氏の味方。平家から見たら裏切り者だらけ。これじゃ清盛さんもお気の毒。知盛さんも化けて出たくもなろうってもんだ。(狂言が違う)。

 

枕獅子

 

前シテの時蔵、綺麗なのだけれどどこか華やかさに欠けるというか、空間を埋め切れてないように思えてしまった。
美貌なだけに傾城や赤姫も似合うのだけれど、実はこの人片はずしが真骨頂なのでは?と夜の部の尾上に超ベタぼれ中のあたしは思ってしまった。

というわけで、どうせ大曲をやるなら、枕じゃなくていっそ鏡獅子が見たかったなあ。振りも派手だし、なによりいろんな人のを比べる楽しみがある。
枕獅子って、鏡獅子の原曲だとは知っているけれど、地味だし、現藤十郎でくらいしか見たことないのよね。

胡蝶、じゃなくて禿の二人、梅枝松也、どっちもまだまだだね。丁寧に踊ってるけど固い松也、動きは柔らかいけどちょっといい加減な梅枝という印象。それぞれにかわいいので目の保養にはなりました。

後シテの獅子、枕なのでアレでいいんだろうけれど、迫力不足の感は否めない。しつこいようだが、鏡を見たかった。玉三郎だってやってるんだから真女形はやらないってわけでもないでしょうに。

市川宗家の御曹司が一座してるから遠慮したのかな?