まずは第一部
昼は初日以来だったのですが、うれしい衝撃でした。特に最初の踊り、すばらしかったです。
草摺引
この踊りがこんなに面白いなんて!大発見です。
初日は牛若丸みたいなやわい五郎(亀治郎)と、強すぎて面白みにかける朝比奈(勘太郎)で、逆のほうが絶対いい!と思っていたのだけれど、楽にはこんなにいい感じに仕上げてくるなんて。
さすが若手。さすが名人同士。
こういう急速の進歩があるから、花形歌舞伎は面白い。あと、しょっちゅう見すぎるとこの変化にも気づけないかもしれないから、月にせいぜい2-3回ってのが、いいペースなのかもと見すぎを反省したりして。
よくなった原因の大きいひとつは、二人の今月のお役によるんだと思う。日ごろ女形がほとんどの亀治郎、最近は立役ばかりやっている勘太郎が、その癖を引きずったまま迎えてしまった初日。
だから弱弱しい五郎、強すぎる朝比奈という印象になったのだろう。
それが、一ヶ月間、亀治郎は立役ばかりやり、勘太郎も哀れな袖萩という女形を経験することによって、それぞれの体に残っている「荒事因子」「女形因子」が目覚めてきたんじゃないだろうか。
亀の五郎は、まあちっちゃいっちゃちっちゃいんだけど、よろいを操る手さばきなどに、明らかに力強さを増していて、あと、表情の強さが初日とはまったく違っていて。ちゃんと剛勇に見えた。
勘太郎の朝比奈は、あねさんかぶりをしての「悪身」の振りが初日はいかにもとってつけたようだったのに、楽ではきっちり女形の身のこなしになっていて、猿隈との対比でなんともいえぬ滑稽味が出ていた。
本当にそれぞれのうまさと進歩を堪能できて、朝いちから大満足でした。
御浜御殿
一つ目の演目であんまり満足しすぎて疲れたのでパスしてしまいました。
初日から進歩してよくなってるかも?と思わないでもなかったのだけれど、初日の亀助右衛門に辟易していたので、どうしてもそれに付き合う気力が出なかった。
将門
うーむ。
若手でもたいして進歩しない人もいた。
七之助の踊りはもぼ100パーセントそうなのだが、出の瞬間が最高で、(きれいだし)動き出すとどんどんがっかり度が大きくなるんだもんなあ。
妖しさ、悲しみ、大きさ、どれも中途半端。がんばってください。
腰高棒立ちはもういい飽きたんだけど相変わらず。
あと、この人はリズム感や運動神経が悪い意味でよすぎるのだろうか。日舞のテンポがなんつーか洋楽リズムを刻んでいるようで、ダンスっぽいのよね。音楽(地方)に乗りすぎているというか。日舞、邦楽のノリと決定的に違っているのが不思議だ。生まれたときからずっと邦楽聴いて育ってるだろうに。
勘太郎光圀はまあ悪くはないけど、滝夜叉に合わせましたって感じかな。今月の勘太郎三役のなかではいちばんつまらない。
第二部
いわゆる「見すぎ」状態(有料で4回+ただで1回計5回)。なのに昼を二回しかみてないせいで、ポスターはもらえなかった(男女蔵の挨拶を聞いてない)。おめちゃんおめちゃん、やりたかったな、ちょっとだけ。
袖萩
楽で完成したかな、という感じ。あるいは楽だから思い切ったのか。
女形の発声を初日以降、4度目の観劇までは地声のなかで女声を出そうとして四苦八苦していた感じ。楽は開き直って、というかもう当分女形の声出さなくていいからか、いわゆるカンの声を使ってきた。なのでずいぶん自然に聞こえたのだと思う。カンの声を25日間使うときっとのどが大変なことになるだろうから、これは裏の手で、ずっとは使えないと思うんで、やはり女形をやるにあたって、勘太郎のネックが声であることに変わりはないのだと思う。
袖萩という女そのものの性根はきっちり体に叩き込まれていたようだ。
ひとつひとつの所作が尾羽打ち枯らした盲目女のそれになっていた。ずっと気になっていたおきみを着替えさせるときの後姿、楽に初めて「ずっと女」の後姿だった。初日なんて、後ろ向いたとたんに男のいかり肩になってたもんなあ。
貞任はもう初日から完成形に近かったので申し分なし。
声の問題さえクリアすれば、二役やれる役者としては当代1.2じゃないだろうか。
楽にもう一人感心したのが男女蔵のケンジョウ直方。老けがどうしても無理だと思っていたのだけれど、袖萩を思いながら切腹するシーンの血を吐くようなせりふにはじーんときた。正直男女蔵に泣かされるとは思わなかった。
楽は袖萩でもおきみでも浜夕でもなく、直方に泣かされてしまったのでした。
悪太郎
これに関しては「袖萩」についてきちゃうんで、5回も見たあたしが馬鹿なんです。
はい、正直飽きました。
3回目くらいが一番楽しかった。
亀治郎の悪乗りも後半にいくにつれてだんだん鼻についてきたし。
正直たいした狂言じゃないんで、当分おなかいっぱいです。
亀鶴の端正な踊りが一服の清涼剤だったわ。
楽のご挨拶はとっても簡単でした。
まずは悪太郎の登場役者のうち三人がご挨拶。
あれ?という感じで(一人足りない)残る一人、男女蔵を待っていると。
男女蔵は太郎冠者の扮装に、直方の白髪の鬘をつけて登場。
時間がなくて今年はたいしたことできなかったのね。
でも工夫はしたかったのね。
その後、全員に手招きされて下手からまずは七之助。あとでまたもっと後ろのほうから勘太郎。二人はスーツ姿。
6人並んで(スーツの二人は遠慮深げに)お辞儀して終わり。
例年のように一人ひとりの挨拶とかは一切なし。
なんかいろいろわけありなのかもね(意味深)。
とりあえず朝一の踊りがすばらしかった!
こんなに面白いならもう一度見たかった!
と思えるくらいにしておくのが、きっといいんでしょうね。
芝居見物も、ご馳走も腹八分目がいちばんよろしいのです。今月の教訓。
(ほとんどおなかを壊しっぱなしでそれでもご馳走食べていたおばかな今月のあたし)。
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