laisser faire,laisser passer

人生は壮大なヒマつぶし。
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ほどよく戻して

2011-12-02 | kabuki a Tokio

中村座12月公演初日、へとへとになりつつも通して見てきました。
今年一番の寒い日だったせいか、前回より中村座までの道が遠い・・・

昼の部

車引

ちびっこ杉王に「なりこまやっ!」ってかかってて、うー?誰だ?
橋之助んとこの三人、国生でないのは一目でわかるし、よっしーにしたらしっかりしてる。久々の宗生か、とか
思って、筋書きみたら虎ちゃんこと虎之介でした。
虎ちゃん、幡隋長兵衛の息子をやったときにすごくよくて、早くまた出てこないかなあと楽しみにしてたのに、気づかないとは一生の不覚。
変声期ゆえに高音部はつらいけど、所作が実に綺麗で、ちゃんと踊りのお稽古してるなあ、という感じです。
これから楽しみだああ。
というのが一番の印象ですかw

梅王勘太郎、桜丸菊之助のバランスはなかなかよろし。
桜にもう少し優美さがあってもいいかなあ。
紅隈いらないんじゃないの?と思うくらい血管切れそうな梅王も以前どおり。
ただ、なぜかときめかないんだよなあ。なんなんだろうこの恋の終わり状態は。
あなたが変わったんじゃないの、あたしが変わっただけなのよ、てか。
松王彌十郎にはいろんな意味で無理がある。
柄が大きいだけで選んだ?というか橋之助が一座してないとこういうことになってしまうのか。
所作がきごちないのは初日だからかもしれないが、なんというか決定的にオーラがない。
時平の亀蔵もおなじく。古怪な容貌はあっているはずなのに・・・そもそも車から姿を現すときに、うつむいたり装束を直したりしてるのが見えちゃった時点で・・・orz
薄い座組をやりくりしてるのはわかるんだけど。


賀の祝

薄い座組みやりくりしてるのはわかるんだけど(続き)、たった今松王やってた人が白大夫、はまだしも時平がいきなり松王って、いくらなんでもちょっとなじめない。
見取りだと思って割り切ればいいんだろうけど、明らかに物語りは続いているわけで。大人数の座組でやる忠臣蔵の通しのときなどはそれほど気にならない役人替名のだぶり、入れ替わり、この少人数だとなんだかすごく不自然。
ということを除けば、梅・桜はとてもよかったし、白大夫(彌十郎)はやはりこういう役だと安心してみてられるし。
桜丸と八重(七之助)の夫婦が初々しくて新婚に見えて、ますます悲劇性が際立った・・・と思ったんだけど、最後の泣き落としで七之助のわざとらしいこと。哀れなたたずまいが台無しだ。
女房トリオの後輩二人(新悟松也)がとてもよかっただけに、あんた本当にしっかりしてよ!といいたくなった。
菊之助は行儀のよい芸風が桜丸にぴったりで、梅玉よりいいんじゃないかとすら思った。今月五役大奮闘のなかではこの幕の桜と、後述する墨染がいいかなあ。どれもなかなかよかった。
勘太郎は前半の稚気あふれる部分がちょっと元気ない感じだったけど、後半、桜を見取るあたりは、すばらしかった。
勘太郎と菊之助は兼ねる役者同志だからなかなかコンビといっても限られるだろうが、とても空気が合うと思う。
襲名公演でも何か見せてくれることを期待したい。

寺子屋

病気以来、何かがそぎ落とされて、というか、単に余裕がないだけなのか、妙にまじめになっている勘三郎の松王、この芝居には余計な媚は一切いらないので、本当にすばらしかった。
今までも勘三郎の松王のなかでもベストじゃなかろうか。
立派すぎる播磨屋や高麗屋の松王より、等身大で悲劇性が高かったと思う。お家のためには平気で息子殺しちゃう、感じじゃなくて、本当に家で女房と肩抱き合って「吼えて」たんだろうな、と思わせる松王。
対するに菊之助の源蔵。役を聞いたときにはえ?と思ったけれど、梅玉系の色男源蔵で、これまた七之助の戸浪とはいかにも駆け落ちしたかも、と思わせる美形コンビで、淡々としてるのがかえって松王の悲劇を引き立てる感じ。
千代の扇雀が・・・とにかくものすごい汗で、泣いてるんだけど汗がぼたぼたで・・・
本当なら千代か源蔵で勘太郎が出て欲しかった。まあいろいろ事情があることはわかりますが。
主役以外で目立ったのは涎くりの國矢。先月の鳶頭といい、中村座になくてはならない脇役になったなあ。
正直試演会で松王、いてうより見たかったぞ!いてうごめん。

 

夜の部

葛の葉


いやあ久しぶりにいたたまれなくなりました。
あたし、酷い芝居(あくまでlavieの私見)見ると、腹立つかいたたまれなくなるか、なんだけど、扇雀さんはあたしをいたたまれなくするタイプの役者さん。いつぞや上方で見た封印切の忠兵衛の引っ込みでもいたたまれなくなって下向いちゃったし、今回は葛の葉のクドキの件で、見てられなくて筋書き熟読しちゃったw
前半と大詰めは割りと普通に見ていられたんですけどねぇ。
女形のクドキのすばらしさを先月の孝太郎のお米で見ちゃった直後だけに、同年代の女形でここまで義太夫味がないのも凄すぎる、と。
初役でもないはずなのに、いや、初役じゃないから誰かにきちんと習わなくてあんなことになっちゃったんだろうか。
曲書きとか妖術とか派手な演出が目立つ芝居だけど、糸に乗ったクドキがきちんtあってこそのけれんなのだということを痛感してしまった。
まあ今後夜の部は遅刻できるということがわかっただけでもよかったか。
保名の松也がここでもしっとりと色っぽい夫でなかなかいい。今月松也、いいかも。


関の扉


個人的には今月の目玉。
いや、個人的じゃなくても目玉なんじゃないかなあ。
とにかく終わりよければすべてよし、というか。
いや、前半は・・・困ったチャンの次男コンビがさあ。
こういう古典の中の古典、みたいな舞踊に妙に現代的なロボットダンスを持ち込んだような違和感で・・・
この二人、京人形は巧いだろうなあ。ははは。大皮肉。
宗貞をパパがやってくれて(無理は承知だ!)、小町姫は菊之助が二役でやればどんだけよかったかと。
百歩譲って小町姫は七之助で親子トリオでもよかったなあ。
とりあえず今月の扇雀はなんだかどーしよーもないぞ。
まあ愚痴と悪口はこれくらいにしますが、正直足は引っ張らないでいただきたい。
勘太郎は前半はちょっと愛嬌がわざとらしいかと。関守でありながらジツハ、のジツハの部分を見せつつ、ちゃんと滑稽ぶりも見せるってあたりのさじ加減、難しいよね。


墨染が出て、二人の舞踊になってからはもう圧巻。
浄瑠璃節が身体に入ってないとどうしようもなくなる大夫とのあて振りといい、ぶっかえってからの恐ろしいほどの迫力といい、
久々に「勘ちゃんかっこいい!!!」でした。←実際叫んだしwww
菊之助も妖しさがやや足りないものの、しっとりした古風なたたずまいは、世界にはまっている。
菊之助と勘太郎の吉野山が見たいなあ。
菊之助と勘太郎の二人椀久が見たいなあ。
菊之助と勘太郎の弁天(この場合弁天菊で)も見たいなあ。
菊之助と勘太郎の六段目が見たいなあ。・・・以下略。
このコンビ、かなり好きだ!!!


松浦の太鼓


正直どこが面白いのかよくわからなかったこの芝居、今回初めてそこそこ面白かった。
何がよかったって、勘三郎
寺子屋みたいな芝居と違って、最初から客席にこびた変な笑いが満ち満ちていた印象があったんだけど、今回の松浦候は、必要な愛嬌はちゃんとありつつ、余計な媚が一切見られない。
そして悪気がなくてわがままな殿様は、まさにニンだなあ、と。
ニンだけにやりすぎてうざくなってたのがこれまでのこの芝居だったのかなあ。
ここでも立役、フル回転の菊之助の大高源吾が、すっきりしていていい。其角の彌十郎はもうお手の物。七之助のお縫も、安心してみていられる。全体にすっきりして嫌味のない座組みのなかで、勘三郎の芸が光る。
まあ本音をいえば、ところどころで以前にはなかった微妙な間があったり、?と思う部分が皆無ではないのだけれど、着々と復活への道を歩んでいることは実感できた。
源吾があだ討ちの様子を語る際、松浦候が家来たちに「よう聞けよ!」という台詞があるのだが、そこで桜席の客たちに「そちたちもよう聞けよ!」みたいなアドリブを飛ばしていた。
以前だとまたやってるよ!と顔をしかめたくなっていただろうが、今回ばかりは、ああ、客いじりができるほど余裕がでてきたのかなあ、とほほえましく、安心してしまったりする自分がいて、自分に苦笑。

元気になってもらいたいけれど、あの臭ーいくすぐりは復活してもらいたくない。
戻り具合でいえば、あと一息の戻りで、それ以上戻さないように、って春雨ですかw

 

初日のベストは昼寺子屋夜関の扉。時点が松浦の太鼓。
葛の葉だけパスすれば夜の部はとても優秀w

 


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2 Comments

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Unknown (あめり)
2011-12-09 18:18:45
千代さん、二幕のままでよかったよねぇ。
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Unknown (laviedure)
2011-12-10 09:39:42
賀の祝の千代ちゃんよかったですよね。
ま、勘三郎松王で松也千代ってわけにも行かないでしょうが。
勘太郎と菊之助がダブルキャストで千代と源蔵ってのが今月の座組だと個人的ベストです。
いろいろ大人の事情もあるようでwそうもいかないのですよね。
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