星のひとかけ

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『もう一つの彩月 -絵とことば-』中林忠良・著

2019-11-29 | 文学にまつわるあれこれ(林檎の小道)
今月 О美術館で開催されていた中林忠良さんの銅版画展(>>) 

生涯をつらぬいて追及されてきたモノクロの世界は、 ギャラリーの空間に身を置いて背筋をぴんとさせながら向き合っていたい世界でした。 モノクロームの腐蝕銅版画の静謐な世界に混じって… ふっと心が安らぐような 手彩色を施した小さな銅版画があり そこに添えられた季節感あふれる中林さんのことばが とても印象的でした。 

ことばを添えられ、色を添えられた葉っぱや樹々の小さな版画は 手元にとって読み返したい気持ちになり…
、、展覧会の図録を買いそびれたので、 何か御本は…と検索したら、 この彩色版画とエッセイをまとめた本がみつかって、 とても読みたくなりました。



『もう一つの彩月 -絵とことば-』中林忠良・著 玲風書房 2012年

版画作品53点、 ことば51篇からなる御本です。

 ***


  …おもしろいことに、焔の前に坐る者の多くが自分の過去を語りだす。 過ぎ去った日々やそれにまつわる感慨を――。
       「山のアトリエ」より


季節のことばと共に彩られる版画は、 《腐蝕》という銅版画を専門とされている中林さんの美意識からか、 生命の真っ盛りというよりもどこか 過ぎ行く季節を感じさせます。 葉脈だけになった枯葉、、 枝に残った木の実、、 窓の水滴越しに見えるような、、 薄氷に閉じこめられたような、、

でも 淋しいのではなくて ひっそりと美しい。。

一方で、 一頁ぶんのエッセイでは 友人のこと、 家族のこと、 教え子のこと、、 ネコのこと、、 ぬくもりが溢れています。。 上でリンクした作品展の感想でも書いていますが、 優しい方なのだろうなぁ… と、本を手にしながらお仲間の語らいにそっと耳を傾けます。


  落葉松(からまつ)の丸い幹がはぜながら燃えてゆく。 外側から芯にむかって、晴れた年も悪い年も一つ一つ重ねた年輪を、老いた時代から若木の時代へと順に燃えてゆく。
        「山のアトリエ」より 


、、暖炉で燃える丸太の詩情を、 画家の鋭敏な観察眼と奥深いことばで表現されているエッセイに、 こちらも読みながら遠い日に心がさらわれたり、 懐かしんだり…


 ***

今朝はベランダ側の窓が 一面水滴がいっぱいでした。。 普段はあまり結露しないのですが、 今朝はとても冷え込んだのと、 キッチンでスープを煮込んでから寝たせいです、きっと。 でも今朝はとてもよく晴れたから、 小さな水滴の向こうで朝陽がきらきらしてとても美しかった…

昼間、 病院へ行ったのですが 春 園児たちがお花見をしていた場所がすっかり優しい落葉の色に変わって、 黄色や茜色の梢の向こうに真っ青な空がまぶしくて…


そんな季節にこの御本に出会えてよかったです。


冬ごもりのお部屋で 温かい飲み物を傍に…

今夜は、 arte.tv(>>)で ヤン・ティエルセン(Yann Tiersen)さんのコンサートを聴きながら書いてます。。



 どうぞあたたかい週末を…


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