7/3 Fri.
この日、奇しくもの形で「(知的)障がい者福祉」について意見を交わすこととなり、そこで 障がい者福祉かくあるべきというものを学ぶ機会となりました。
新型コロナウィルス禍が社会にさまざまな悪影響を与えるようになった最中(さなか)、長野県の知的障がい者支援のリーダー的存在である「長野県セルプセンター協議会」のK理事長からのLINEを受信しました。
送られてきたスマホを見れば、昨今の新型コロナウィルス禍が 知的障がい者の方々の社会生活にも大きな悪影響を及ぼす中、中核市である県都長野市は 今後どのように、それも具体的に知的障がい者支援に取組んでくださるのか 状況・見通し・具体策などを伺いたいとのことでした。
と いうのも、K理事長は 主に長野県を相手に(知的障がい者福祉団体全般の)職責を果たす立場なので「県」とは始終向き合っておられるのですが、こと長野市については 長野県から〝独立〟した「中核市」であることから、県の理事長の立場では 長野市の生(なま)の情報を得にくい現状にあるとのこと。
一方、ご自身が運営する「エコーンファミリー」などの長野市内の障がい者事業所については、他でもない長野市の差配によって運営されていることから、この際 新型コロナウィルス禍で 長野市の障がい者福祉施設が非常に厳しい状況に陥った中、中核市である長野市が 県とはまた違った〝自立(独立)〟した立場でどのように知的障がい者福祉に向き合っているか 現状と認識を伺い、そして 今後どのように〝長野市ならでは〟の形で これからの長野市の知的障がい者福祉を立て直してゆくのか、見解を伺うと同時に 共々に考えてゆきたい、というご意向でありました。
それを受けた私は 所管の長野市保健福祉部障害福祉課(別の課題に応じて農業政策課も)につなげ、限られた時間ではありましたが 有るを尽くして意見交換に臨んだところであります。
新型コロナウィルス禍における障がい者福祉団体(当事者)への悪影響については、国の所管の厚生労働省も認識をしており、今般のコロナ禍への対応として「生産活動活性化支援事業」として、一事業所あたり最大50万円の助成を行なうことになっているそうです。
しかし、この助成金は 本当に支援の必要な障がい者の所得(工賃)には使うことができず、あくまで「就労継続支援事業所の生産活動の再起に向けて必要となる経費」を支援し、その結果として障がい者の工賃アップにつなげてほしいとの「間接的支援」に止(とど)まっているとのことです。
そんな 当事者団体にとっては決して十分をとはいえない支援内容を受けて、全国単位の障がい者支援を担う「全国社会就労センター協議会」は、国に対して「緊急要望」を提出、さらなる支援を要望しているそうです。
それら さまざまな経過を踏まえ、双方の共通認識として再認識されたのが「障害者の〝活躍(活動)の場〟を提供し、当事者が実際に現場に出て実際に就労し そこで工賃や売り上げを得られるように支援することが大切ではないか。」ということであります。
今回の新型コロナウィルス禍が障がい者にもたらした悪影響の第一義は、いわゆる健常者の勤める社会の現状と同じく「就労の場の減少」とのことであります。
例えば「エコーンファミリー」さんが生業(なりわい)とするパンの製造・販売においても 長く続く自粛傾向により販路そのものが断たれることとなっているとのこと。
それらの現状を受け K理事長は、長野市として独自にマーケットの場を設けるなどの具体的な取組みを行なってもらいたいと意見を述べられ、それに対し 長野市は前向きに取組むと答えてくれました。
また一方、近頃 市がPRを始めた「農福連携」も〝活躍(活動)の場づくり〟の一環として話題に供され、農業政策課を交えて意見を交わしました。
「農福連携」とは、人手不足が深刻になる農業について、その担い手の一人として 知的障がい者の方々に参画していただこうという新企画です。
これは、農家さんと (就労を)希望する知的障がい者さんとの〝マッチング〟を行ない、必要とする農作業を行なったいただき そこに報酬をもたらすもので、いわば農家(人手確保)⇔障がい者(就労の場確保)との Win-Winの好関係が期待されるものです。
しかし そこに長野市が積極的に関与しているかと言えば そうでもないのが実情です。
市(農業政策課)に言わせれば、事業の主体は あくまで県(セルプ協)であるので、長野市は後方支援に止(とど)めている…というニュアンスでありましたが、そこは そうでは無く、あくまで障がい者支援という広義に立つことで 所管や立場などの無用な垣根は外(はず)し、ときに臨機応変な柔軟姿勢で取組むこと。そのことこそが 具体的に「農福連携」を推進する原動力になるのでは、と 私の立場でも申し上げたところです。
このことについては、県セルプ協 ⇔ 市農業政策課 ⇔ 市障害福祉課 ⇔ 当事者(団体) との、まさに横断的な協力・連携体制が不可欠なことから、今後も情報交換を進め 具体化(就労の場づくり)に向けて取組むことで一致いたしました。
いずれにしても、何より必要なことは「具体(ぐたい)」であります。
K理事長は「長野市さんは、計画を立てるなど いわゆる「絵」を描くことは上手だけれど、残念ながら そこには具体性が伴っていないと思います。」と断じられます。
「私たちが求めるのは、他でもなく 当事者(障がい者)の就労の場です。何らか仕事にさえ就ければ、そこには報酬(工賃)が生まれ 何より当事者に「生き甲斐(やり甲斐)」が芽生えるのです。」
「私たちは、何とかして彼ら・彼女らに社会参加してもらい 今のような「時給100円」のような劣悪な労賃状況を改善し、工賃アップ そしてできることなら自立した生活が送れるように計らってゆきたいと日々念じながら取組んでいます。」
「それを踏まえ、中核市である県都長野市においては「具体性」をもって障がい者支援に臨み、とにかく〝結果〟が出るように頑張ってください。」と まさに血の出るような言葉を述べられ、一同は胸に重く受け止めたところでした。
私自身、障がい者支援を活動の大きな柱に据える中 この日のK理事長の言葉について、中核市(長野市)の行政業務の一翼を担う者として (職員同様)重く受け止めたところです。
訊けば、障がい者支援(=就労の場づくり)については、南信エリアや中信エリア、それに岳北(中野・飯山)など 要するに長野市以外の自治体の方が積極的(=具体的)に行なっているとのこと。
それに比して 県都長野市が遅れをとっていることは由々しきこととも申せますので、今回の意見交換を契機に 今後の(長野市ならではの)障がい者支援についてシッカリと取組んでゆきたいと、私の立場でも認識を新たにいたしたところでありました。
さて そんな折もおり、この日は引き続き ブレーンのMくんとも会う約束をしていたのですが、その場で 彼の口(くち)から、まさに「具体的な障がい者支援」のプランを聞くこととなり、これこそが、現下の障がい者支援に必要な内容であると実感することとなりました。
くだんのMくんは、知的障がい者支援について 独自の認識をもって臨んでいます。
そこには、障がい者を〝障害者〟として捉えず、あくまで対等な立場で 共に社会参加しよう!との「真の障がい者福祉」の考えで臨んでいるのです。
残念ながら 現下の障がい者支援は、障がい者を 一般人の「下」に見る傾向にあるのではないか。
例えば さきに市が始めた「長野市障害者にやさしいお店」事業。
これは、店舗内をバリアフリー構造にしたり障がい者用トイレを用意するなどし その整備を進めた店舗は長野市に登録したうえで「障害者にやさしい店」をPRできるものです。
ところがMくんは、この考え自体が 障がい者を「下」に見る考え方ではないか、と断じます。
バリアフリーなどの整備は、顧客に対して当たり前に行なわれるべきもので、わざわざ施(ほどこ)してやるものでは無く、ましてや それをウリ(売り)にして自店の〝格(かく)〟を上げようなどという考え自体が「違う」のではないか。
本来「店」というものは、一般人も障がい者も 分け隔て無く利用できるべきものであり、すなわち 双方は「対等」であるべき。
また例えば 授産施設などの障害者支援施設についても、残念ながら ややもすると、障害者に施設を利用させてあげているという 施設が「上」で 利用者(障がい者)が「下」という認識に立ってはいないだろうか。
もし そうだとすれば、それは全くの勘違い。真逆の考えと言わざるを得ない。
もし、ホテルのボーイが 宿泊客に「今日は泊めてやるよ。」という態度で接したらどうなるか?
もしかして、それに近い価値観で 関係者が障がい者に接しているとすれば、その考え方は根底から改めてゆかなければならないでしょう。
Mくんは、そんな 当たり前が当たり前で無くなっている現状に強い警鐘を鳴らしつつ「真の障がい者支援は何ぞや。」という考え方に立って 思いを巡らせているのでした。
そのうえで「真の障がい者支援は、単なる同情や施しではない。対等な立場に立ち〝工賃100円〟などという次代錯誤な悪しき価値観を打ち破り、障がい者の方々にも キチンと労働の対価をお渡しできるようなシステム(ビジネスモデル)を考えてゆく。」と 力強く語ってくれました。
私の立場でも そんなMくんの考えに共鳴しつつ、これから さまざまな形で協働してゆきたいと思うところです。
知的障がい者支援については、さまざまな立場の方々が さまざまな形で取組んでおられることが伝わってきます。
多様化する社会の下、今や障がい者は 何ら特別な存在ではなく、等しく市民として、共々に社会生活を送るべきであり、そんな環境が当たり前にできてこそ「豊かな社会」と言えるのではないでしょうか。
さまざまな面で厳しい社会状況下ではありますが、で あるからこそ「真の障がい者支援」を具現化し、そのことで、社会全体が豊かなものになれるよう 私の立場でも力を尽くしてゆきたいと思いをいたしたところです。
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