こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『文豪Aの時代錯誤な推理』森晶麿

2019-12-16 20:19:12 | 読書感想
 
毒薬によって死んだはずの芥川龍之介は、『今昔物語集』に登場する「袴垂」を名乗る女に、21世紀に起きてしまう殺人の光景を見せられた。
この事件の原因は、芥川だと言うのだ。

被害者の女性・内海弥生が、芥川好みの古風な美人というのも彼の心を動かしたのか、名前を茶川龍之介(ちゃがわ たつのすけ)と改め、彼女を家政婦として雇う事で命を守ろうとする。
芥川が住んでいた田端で複数の奇妙な事件が起きたのにも、何らかのつながりがあるようだ。

被害者になるかもしれない弥生は、かなりの芥川好きという事もあり、少しずつ茶川に惹かれていく。

そんな中、茶川は弥生を守る事ができるのか?

そっか、今の世の中で芥川が生活しようとすると、言葉が古風なのは当然として、会話だけでもセクハラと受け取られて問題になったりしそうです。
電化製品を使いこなすのも訓練が必要ですし、日常生活を営むまでが大変でしょうか?
と、まあ、妙な事に感心しつつ、芥川龍之介の探偵ものを読んだわけですが、とても面白かったです。

そう言う事で、どうやらかなりたくさんの伏線も張られている事ですし、結末からも、森さんがここで終わらせる気が無いのは明らかですし、富士見L文庫様、ぜひ、続きを出しましょう!
伏線は、回収しないともったいないです。もちろん、謎がはっきりしないと気持ち悪いというのもあります。勝手に楽しみにしております。よろしくお願いいたします。
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『タスキメシ 箱根』額賀澪

2019-12-14 19:44:15 | 読書感想
 
紫峰大学駅伝部の寮「紫苑寮」に、部の栄養管理兼コーチアシスタントとして眞家早馬がやって来た。
彼は、大学院運動栄養学の研究室に入るのが目的なのだが、監督の館野達也が部に引き入れたらしい。
物語は、この早馬と駅伝部のキャプテン仙波千早の二人の視点から、交互に語られる。

部に入ったばかりの一年は目標を箱根駅伝と定めるが、年を経る毎に、己の実力とトップランナーとの違いを感じさせられていく。
就職も内定し、妥協せざるを得ない四年生は、紫峰大学駅伝部を箱根に行かせる事ができるのか?

大抵の四年生が諦めている中、自らも陸上選手人生にピリオドを打った早馬が、食生活の改善と自分自身の故障経験からのアドバイスを淡々としていくところが腑に落ち、また、それによる部員それぞれの変化が心地よく、納得できるものでした。

今まで箱根駅伝は、トップランナーばかりに注目しがちでしたが、これを読む事によって、違った見方ができそうです。
お薦めです。
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『リコメンド』草上仁 ミステリーズ!vol.98 2019年12月号収録

2019-12-13 20:25:49 | 読書感想
 
草上仁さん「ミステリーズ!」初掲載!おめでとうございますー!パフパフ、ドンドン♪
ごめんなさい。嬉しくって騒いでしまいました。

浮かれるのはこれくらいにして、「共用PCの恐ろしさについて、・・・」で始まったこの作品。
読んでいくにつれ「ああ!確かに、いつも見ていないサイトを閲覧すると、それに関するような内容の広告が現れたりするよね」と、納得。
インプッドメソッドも、オタクなどは特に顕著に表れるかもしれません。

で、主人公がPCをいじってどうなるの?と思っていたら・・・と申しますか、薄々気づきながら読んでいたら、あの結末。
何とも薄ら寒いもので、思わず「草上家は、大丈夫だろうか?」などと考えたりもして。
ショートショートミステリ初掲載から、衝撃的な物語でした。
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『倒れるときは前のめり ふたたび』有川ひろ

2019-12-12 19:55:27 | 読書感想
 
有川さんのエッセイ集第2弾。

児玉清さんとの最後の対談において、託されたもの。
読書感想文廃止論や、学校で作家にファンレターを書く事を課題としてしまう事の悪影響について。
佐藤さとるさんから渡された『コロボックル』というバトンと、そのリレー。
心して読むべき、お薦めの本。
ネット時代における言葉の使い方と、注意点。
「鎮魂」の難しさ。

この本に収録されたものを、私なりにまとめると、大体こうなります。

中でもファンレターこそ、強要されるべきでない大事な聖域だと感じ、有川さんに共感したのですが、どうでしょうか?
私自身、ファンレターを差し上げたのが30代でしたが、出すときのワクワク感と緊張感、お返事をいただけた時の感激は、忘れられません。
そんな訳で、授業にはしてもらいたくないです。
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『彼方のゴールド』大崎梢

2019-12-09 19:43:14 | 読書感想
 
出版社<千石社>を舞台にしたシリーズ第4弾。
今回の主人公は、入社2年目の目黒明日香。
入社して最初に配属された営業部にもようやく慣れて、このまま営業畑でもいいんじゃないかと思い始めた矢先、『Gold』への異動となった。
『Gold』は、2週間に1度、木曜日に発売される総合スポーツ誌であった。

運動はからきしの明日香だが、営業での先輩も、うちは文芸のたまり場だしスポーツはなんにもわからないという人が送り込まれるのを見てきた、と、太鼓判(?)を押してくれた。

バドミントンから始まり、野球、陸上、バスケットボールなど取材は多岐にわたり、交流も、スポーツ選手だけでなく、定食屋のご主人、フリーライター、カメラマンと多彩であった。

明日香自身は、趣味として水泳をやっていたくらいでしたが、素人ながらも取材相手の来歴や今の状態、気持ちを慮って、本心から心に響く言葉を言えるからこそ、それぞれの人物に受け入れられたんだと思います。

何よりも彼女自身が、2人の幼なじみと再会でき(1人は遠くから見ただけですが)和解し、認め合えたところが、一番嬉しい場面でした。
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