菓子フェスの庭

上田早夕里さんの『菓子フェスの庭』を読みました。

『ラ・パティスリー』の続編です。

甘いものなんか大嫌いだ。
仕事で扱うのも、絶対にごめんだ。
それが武藤隆史の本音だった。
しかし、西富百貨店芦屋支店企画部で、初めて企画の中心となって働くことになったのは、
スイーツ関係だった。

鷹岡部長も彼のスイーツ嫌いは知っていたが、これをきっかけに克服させるつもりなのだろう。
しかし、今回の試練は武藤にとって別の試練をも、持って来たのだった。

そうおですか、とことんスイーツ嫌いの人にとっては、甘いものってそこまで駄目なんですね。
それにしても、武藤くんは今回の件に関しては、とても気の毒な状態になってしまいました。
続きで救ってあげて欲しいです。

聴き屋の芸術学部祭

市井豊さんの『聴き屋の芸術学部祭』を読みました。

誰のどんな話でも、しっかり聴くことができる。
それが柏木くんが聴き屋をやっているゆえんだ。
つまりは、あらゆる情報が集まるわけで、芸術学部祭の最中に作動したスプリンクラーと黒焦げ死体の謎を
解き明かしたのを皮切りに、合わせて四つの事件を解決する。

バラエティに富んでいて、どれもとても面白いのですが、中でも「からくりツィスカの余命」を
以前読んだ覚えがあって、気になります。
＜ミステリーズ＞ｖｏｌ．４０は読んでいないので、その後にアンソロジーででも読んだのでしょうか？
柏木くん、解き明かしてください。

決起！コロヨシ！！２

三崎亜記さんの『決起！コロヨシ！！２』を読みました。

樹が掃除の全国大会三位という快挙を成し遂げ、新国技候補として大々的に発表されたにもかかわらず、
学校側は掃除部の予算を昨年の半分にも満たない額に削っていた。
さらに顧問の寺西はいなくなり、掃除に反感を持っているとしか思えない牧田が新たに顧問となってしまった。
その上、問題はスポーツの範囲内では収まらなくなってしまった。

まさか掃除に歴史の暗部が隠され、今でも政治的に利用されるものだとは思いませんでした。
三崎さんも、掃除だけでこんな綿密な大ボラをよくこさえたものです（褒めてます）。
素晴らしいです。

蜩ノ記

葉室麟さんの『蜩ノ記』をようやく読みました。

直木賞にノミネートされるかされないかの頃に、図書館にリクエストを出していたのですが、
今までかかってしまいました。

戸田秋谷は、江戸屋敷でご側室と密通し、そのことに気づいた小姓を切り捨てた罪で、
七年前の八月に向山村に幽閉された。
彼はその頃、御家の家譜作りに取り組んでいたため、十年後の八月八日を切腹する日と期限を切って、
それまで家譜編纂を続けるよう命じられた。

檀野庄三郎は秋谷の監視を命じられたが、彼らと共に暮らすうちに、その清廉なる人柄に惹かれ、
また、秋谷が罪に問われた事件の裏側について知ることとなる。

ただひたすらに真っ直ぐに生き、何の言い訳もしない秋谷の生き方は、まぶしいほど愚直で、
正義感の塊のような人だと思います。
正に武士の理想の形なのでしょうが、なかなかこのようには生きられません。

極北ラプソディ

海堂尊さんの『極北ラプソディ』を読みました。

舞台は、経済破綻した北海道の極北市。
極北市民病院もそんな中、院長を含めて医師二人、看護師二人という体制で細々とやっている。
何とかやっていけているのは、外来患者のみの受け付けで、救急患者を受け入れていないからだ。

結果として、極北市民病院にはほとんど患者がやって来ないという状況になってしまった。
あるのは、訪問看護だけだ。
破綻間もなくやってきた世良院長は、この病院をどうしようというのか？

極北市民病院のトラブルとマスコミのバッシング。
並行して描かれる、おなじみのジェネラル転じて将軍の速水医師の唯我独尊ぶり。

今後の日本の医療について考えさせられると共に、懐かしいメンバーのその後を知ることが出来、
とても楽しめました。
あと、マスコミのフィルターというものについても、考えさせられました。