こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『なめらかな世界と、その敵』伴名練

2021-06-04 20:21:37 | 読書感想
 
表題作の世界では、ほとんどの人が自分自身の望む並行世界を渡り歩いて暮らしている。そんな中、主人公はづきの幼なじみマコトは、1つの世界でしか生きられなくなってしまった。
その事で、マコトのとった行動と、それに対するはづきの対応は?

冒頭から、とても魅力的な舞台が出てきて興味をそそられるます。
「ゼロ年代の臨界点」でも、1世紀前に女性中心のSFの興生が語られて、なかなか面白いですし、「美亜羽へ贈る拳銃」には、あまりのすれ違い振りにやきもきを通り越して、諦めそうになりますし、「ホーリーアイアンメイデン」では、一見聖者に見える姉への妹からの告発に心が痛みますし、「シンギュラリティソヴィエト」からは、現実が足下から崩される恐怖を感じました。
そして、ラストを決める「ひかりより速く、ゆるやかに」では、あまりにも予想外の災害に見舞われた人々の苦しみと、災害からは免れたものの罪悪感と葛藤に苦しめられる主人公の行動に共感を感じました。

どれも面白いのですが、現実があまりにもディストピアなので「シンギュラリティソヴィエト」を読むのはきつかったです。
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