流線形シンドローム 速度と身体の大衆文化誌 価格:¥ 2,520(税込) 発売日:2008-02-06 |
本来、物理学用語であった「流線形」という言葉が、二〇世紀前半において
時代の移り変わりや各国の国情によって、どのように変化してきたか。
アメリカ・ドイツ・日本をモデルに、その変遷を考察したのが本書である。
アメリカでは、初めこそ空気抵抗を制御したり排除する乗り物に使われていたものが、
流行語になるにつれて、明るい未来、最先端、効率的といったイメージのものに冠せられていったのは、今にも通じるものがありますね。
ただ、人種改良や優生学的淘汰など、白人至上主義に傾いていったのはどうかと思いました。
片やドイツは、本来の意味から外れることはあまり無いものの、ナチスドイツの排外的国家主義思想に利用されていったのは、なげかわしいことでしたね。
最後に日本では、流行語にこそなったものの、人種的優位や政治的思惑に
積極的に利用されることが少なかったようなのは、自国のことゆえ、ほっとしました。
しかし、満州を国内新技術の実験場とし、日本製の流線形機関車「亜細亜号」を走らせて
植民地政策・大陸経営のシンボルとしていたあたりは、他国のことを批判できません。
でも、どの国もタイトルにもあるように「流線形シンドローム」にかかっていたのは、
形こそ違え、事実のようです。