こ も れ び の 里

長崎県鹿町町、真言宗智山派、潮音院のブログです。平戸瀬戸を眼下に望む、人里離れた山寺です。

ある死にざま

2010年09月27日 | 仏教
昨日、
お父様の忌明け法要を無事にすまされた方から、
新聞の投稿記事をいただきました。
それは、忌明け前日に掲載されました。
見事なタイミングです。
そこには、ひとりの男性の死にざまが、
短い文章の中にわかりやすく表現されています。
ご許可をいただきましたので、転載します。

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 ドライブの途中で

 覚悟の上での病院からの外出でした。肝臓がん
に腎不全、肺炎。健康な人の3分の1しか機能し
ていない心臓。まさに八方ふさがり状態である、
と主治医の説明でした。
 義父は最後に自宅に帰り、身辺整理をしたいと
申し出、翌日、夫と自宅へ連れ帰りました。にぎ
りずしにウナギ、ビールを飲み、最後の晩さんだ
と義父は言いました。「また退院祝いを同じよう
にしようよ」と言うと「自分の体はわかっとる。
葬式にはこれを使え」と写真も差し出しました。
 早めに家を出て、漁師だった義父は自分の船を
しばらく眺めていました。家の周りを海沿いに
一周し、遠回りをして、ゆっくり、ゆっくりドライブ
しました。
 「最高に良い一日だった。思い残すことはない。
ありがとう。ありがとう。」。 「まあだ、これから
やっかね」と言っても「もう迷惑はかけられん。
あんたにどれだけ助けられたことか。ありがと
う。」病院へあと10分で着くというところで、義
父は私の腕をつかみ、私のひざの上に倒れました。
 義母亡き後、19年も一人暮らしで頑張ってきた
義父は、2時間のドライブの途中、旅先でそのまま
天へと召されていきました。

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3 コメント

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うらやましい家族 (立ち枯れ寸前の紅葉)
2010-09-28 10:57:59
息子さんもお嫁さんも本当に良く出来た人たちですね。何時旅立つかは解らない。何時も感謝の気持ちを持って生きること。なのでしょうか
返信する
いやはや (坊の主)
2010-09-27 22:17:00
枕経に駆け付けて、
この経過を知らされたときには、
こんな死に際が本当にあるのかと、
正直驚きました。
返信する
  (まつを)
2010-09-27 21:03:00
>最高に良い一日だった。思い残すことはない。
>ありがとう。ありがとう。

できた方ですね。
周りの方々も素晴らしい人なのでしょう。
合掌。
返信する

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