ポレッチに向かう途中、景色が美しいロヴィニの街の姿を遠目に見る。ヨーロッパ特有の
薄い朱色の屋根、日本人が言う洋瓦の街並みが小高い丘に固まっている。この街中に入
ってしまうと一軒々を見るに過ぎず、こうした景色は遠くから見た方が美しく見える。景色を
文字で描写するほど才を持ち合わせていないから写真が一番説得力を持つ。
プーラからポレッチまで約1時間の旅は美しい海岸線から離れ、味気ない石ころばかりが
目立つ山合を走っていく。
エウフラシウス大聖堂は世界遺産に指定されている。私たちは世界遺産と紹介されると、
直ぐに観光的な観点から見た目の美しさや感動を求める傾向にある。世界遺産に指定さ
れた背景をきちんと理解していないと、世界遺産の本当の価値を見い出すことはできず、
ただの遺跡めいたものを眺めたに過ぎないことになってしまう。
そう強く思わせたのは、私たちがヨーロッパで訪れた幾つかの世界遺産の聖堂はキリスト
教のものだ。私たち日本人の殆どは無宗教か仏教徒もどきでキリスト教会を訪問すれば、
教会内部の装飾が際立って美しいか、特別なものがあるのかによって訪れた世界遺産の
価値を判断してしまう。
詰まり、物見遊山の仏教徒にはキリスト教会の世界遺産の価値を見出すことは出来ない
のである。これはキリスト教会に限ったことではなく、折角訪れるのだから何かを得てこない
と時間とお金の無駄遣いになる。
さて、この教会は4世紀くらいに邸宅として造られてから利用目的が教会に変わった経緯が
ある。また地震で壊れその修理の過程が床下に残されているし,造り替えられる度に床の高
さが変わっている様も残されている。建物の特徴は床モザイクにあり時代と共に変わってい
ったものも展示されている。屋外にはその一部を遺跡が残されており見学できる。
鐘楼に上ることが出来、旧市内が一望できるので登れる人は登ってみて下さいと説明があり、
誰も簡単だろうと気軽に登り始めた。ところが曲がりくねった螺旋階段は一番上まで登ったと
思えば、再び曲がり続ける。息が切れ、先に行ってと休憩する人も出始めた。
酸欠状態でてっぺんまでやっとこさの思いで上り詰めると、景色を眺める余裕はなく息を整え
ることで一休み。塔の上から旧市内、海方向を眺めることができ写真タイムとなる。
煩悩の塊の私、世界遺産見学の薀蓄を述べていながら、ここでやはり化けの皮が剥がれてし
まい、ありふれた観光客の姿になって写真やビデオに夢中。
ロヴィーニ遠景1/2
ロヴィーニ遠景 2/2
ポレッチ市内