誰にも知らせないこと、見舞客は全て断ることをコンセプトに気儘入院ライフを貫くつ
もりで、大方のところ成功しかけていたが、娘の嫁ぎ先だけは断り切れずお見舞い
を受けることになった。個室だから他の部屋のお見舞客がどのようなものだったのか
知らないが、休日には食堂に沢山の見舞客らしき人と患者さんが一緒に話したりお
茶を飲んだりしていたから、一般的には見舞客を断ることは余りなく少数派だろう。
間の悪いことに高校時代から仲の良かった友人が八王子から帰省して家に電話をし
てきたので入院していることを知らせたと言う。『元気だから見舞いに来なくてもいい。
退院して健康になったら会おう』と言って聞かないから見舞いには来ないで欲しいと
友人に伝え、見舞いを断念させた。
退院後にはがきを出し近況報告と見舞いを断った欠礼について謝っておいた。
自分ではそれほど強い気持ちで、気儘な入院ライフを貫くつもりでいた。親兄弟でさ
え手術のことも黙っていようと思っていたから、見舞に来て貰うなど考えられないこと
だ。だから、結果として来られた見舞客は1組という成績に終わった。
病気が癌だからと人に隠す必要はないし、他の病気だったとしても同じ行動をとって
いたと明言できる。
見舞客が来ないから全ての時間は自由気ままに使えるし、変に気を使うこともないか
ら療養の観点からみれば最高の環境と言えるのではなかろうか。