境水道にはしばしのお別れで水の都は松江市の宍道湖に戻ってくると、もう手長
蝦が捕れる時期だ。宍道湖は周囲47Kmで広さは全国7番目の湖で大橋川を通じ
て中海、、鱸釣りで通う境水道に繋がり日本海へと出る。汽水湖だから海の魚、淡
水魚が混じり合い、ここで獲れるスズキ、モロゲエビ(ヨシエビ)テナガエビ、ウナギ、
アマサギ(ワカサギ)、 シラウオ、コイ、シジミ(ヤマトシジミ)を宍道湖七珍味という。
しかし、モロゲエビの漁は殆どなく庶民の間ではテナガエビを代品として扱ってい
る。スーパーなどでも手長蝦は売られているがモロゲエビは見かけることは殆どな
い。エビタモの網はテグスで出来ていて直径が十センチ程の小さいもの。店では
この網の部分しか売っていないので細い竹に一メーターの柄をつける。天気のい
い風のない穏やかな夜にサーチライトを持って湖岸からそーっと湖底を照らして
みると、そこら中に手長蝦を見つけることができる。岩の上で光を受けた眼がキラリ
と赤い色で光る。
蝦を捕るには静かに蝦の後からタモを持込みかぶせて捕る。蝦は後方への瞬発力
は強く速い速度で逃げる為、前からタモを入れると絶対に捕れない。要領さえ覚え
ればいくらでも捕れるようになる。波があるといくら光を当てても蝦が見えにくいので
穏やかな日でなれければならない。
大きいものは胴体が十センチ近くにもなり、まるでザリガニのようにも見える。色は黒
くなりみるからに不美味そうで実際に食べても殻が堅く味は落ちる。その場所で捕り
つくしたら次の場所に移動していく。人がどの辺で捕っていたのかよく見ておく方が
いい、人の後に行くと逃げた蝦が未だ岩の上に戻っていない。
手長蝦と言うだけあって手は長く大きくなればなる程、胴体と手のバランスが合わな
くなるみたいだ。長さが五~六センチ位のものが一番おいしい。残酷ではあるが鉄
板を熱くした上に生きたままの蝦を乗せ、塩コショウをまぶす、身体が朱色になった
ら食べ時である、殻のまま食べられる。
食べて美味しいものを捕ればいいのに、それを忘れて捕る時は大きいものにこだわ
ってしまう。湖底に眠るボラや鮒達が眠りを妨げられ迷惑そうに場所を移す。時には
ウナギが岩の間から顔を視かせている。本職の漁師は直径、五十センチ、長さ一メ
ーター余の芝を束ねたものを幾つもロープでつなぎ湖底に沈めておき朝、それを上
げる。芝の間に手長蝦、鰻が入り込んでいるのでそれを捕る。ヌカ団子をマキエにし
釣る方法もあるが大方の人はタモで捕っている。