ほとほと通信

89歳の母と二人暮らしの61歳男性の日記。老人ホームでケアマネジャーをしています。

貧しい人たち

2018-06-11 | 映画
今日は仕事はお休みでした。


台風の中、話題の映画『万引家族』を観てきました。

ネットで前売り券を買ったのですが、ネット音痴の私は誤って2回分を購入してしまいました。

それで封切り日の先週金曜に観て感銘を受け、今日また観に行ったのです。

一回目では気付かなかった点にも色々気が付き、むしろ今日の方が感動しました。


ドキュメンタリー映画出身の是枝裕和監督らしい、自然な演技を引き出す独特の演出はいつも通りですが、今作は話が進むうちに「!」と驚くストーリー上の仕掛けもあり、それからは作品全体の寓話性に気づかされ、その按配が絶妙です。

ネタバレになるので詳しくは書けませんが、一見淡々とした作風のようで実は深いドラマ性のあるエピソードを繋ぎ、伏線をちゃんと回収してカタルシスを感じさせてくれる良い作品になっています。

字幕だらけナレーションだらけの説明過剰のテレビ番組に慣れきっている人はちょっとつらいかも知れませんが、他者への想像力を持って年月を生きてきた中年以上の人であれば、感じるところの多い作品だと思います。


出色なのは、貧困層の感情や佇まいをたっぷりと描いていること。

貧困層大国に向かう一方の我が国なのに、その階層がなかなかまともに取り上げられずにいます。

私自身、もうすぐ貧困老人になる可能性がある…と常にもやもやしていますので、イケメン俳優と女性アイドルのラブストーリーやアニメ作品ばかりの日本映画を観る気が失せていました。

『万引家族』は貧しい人たちの駄目っぷりもたくさん描いていますが、最終的には彼らの間違いだらけで哀しみの多い「生」を是としている…と感じられます。

その温かさが私には嬉しく伝わりました。