ほとほと通信

89歳の母と二人暮らしの61歳男性の日記。老人ホームでケアマネジャーをしています。

暴力の原理

2018-02-18 | 映画
今日も仕事はお休みです。


銀座に行く用があり、帰りに映画を見てきました。

『スリービルボード』と言うアメリカ映画です。

三枚の看板…とでも訳せば良いのでしょうか。

このタイトルは、自分の娘さんを強姦殺害された女性が犯人を見つけられない地元警察に腹を立て、野外看板に警察署長を名指しで批判した文章を掲げる…と言う作品の重要なエピソードから来ています。

アメリカ社会の憎しみと暴力の連鎖をいささか戯画的に描き、ブラックユーモア的なシーンも多分にある作品です。

しかし暴力描写の連続は、やはり見ていてひたすら重苦しく殺伐とした気分になります。


つい先日フロリダ州の学校で起きた事件を連想しました。

19歳の青年が母校の生徒を17人も射殺する…と言う大惨事です。

日本でそんな大事件が起きたら、社会全体が長くトラウマに苦しむでしょう。

でもアメリカで大量射殺が聞くと、「またあったのか」と言う印象です。

もちろん日本では銃を持っている一般人は皆無なので銃による大量殺人事件は起こりえませんが、それ以前に暴力発動までの沸点がアメリカ社会と日本社会では全く違うのではないでしょうか。

いわゆる先進国の中でアメリカは極端に殺人事件が多いのは、ツールとしての銃が蔓延しているのが直接の原因でしょうが、「新大陸」と称して先住民を暴力で殲滅しながら国づくりをしていった事が源泉だと思います。

その歴史を肯定する限り、暴力を原理的に否定することは出来ないのですから。


「スリービルボード」はやり切れない映画でお勧めはしませんが、不思議な力を持った作品であるのも確かです。

自分たちの社会の宿痾を逃げずに描き出そう…と言う表現者の覚悟があるからです。