ほとほと通信

89歳の母と二人暮らしの61歳男性の日記。老人ホームでケアマネジャーをしています。

昭和の匂い

2013-08-05 | 映画
おとといの夕方、腫れた歯茎を切開した顛末を書きました。
痛みはほとんどなくなったけれど、歯茎の腫れはまだ残っています。
それと、リンパ腺か何かは分かりませんが、左の首筋も少し腫れていて、物を飲み込むと痛い。
改めて、処置があれ以上遅れていたら大変だった、歯は恐い…と思ったことでした。

歯医者に行ったおとといの夜、素敵な番組を見ました。

『風立ちぬ』を発表した宮崎駿監督と、作家で元文藝春秋の編集者てある半藤一利氏の対談番組があったのです。
半藤氏は『日本で一番長い日』を初めとした昭和史の名著で知られる昭和史研究の第一人者であると共に、松本清張や司馬遼太郎を担当した名編集者としても知られています。
その半藤氏が『風立ちぬ』は、実直な航空機技術者の半生を描きながら優れた昭和史にもなっている…と評価すると、宮崎監督は照れながらも色々答える。

総体に、半藤氏の膨大な知識を背景とした思わね角度からの作品分析と質問に、宮崎監督はちょっと戸惑いながらも楽しそうに答えている…という風情でした。
その、優れた知識人と天才的表現者がゆったりと考えて思索深めていく…という様子が「昭和的だなあ」と感じさせました。

昭和の頃は、誰もが一目置く目利きや創作者の言葉をゆったりと拝聴する…という気風が世の中全体にあったように思います。
受け手のほうも、「この人は自分たちより深い知識と広い見識を持っている優れた人物だ」と素直に認め、その社会観歴史観を聞くのを楽しみにしていました。

ところがネット時代になると、情報が一瞬のうちで消費され、また誰もが何の研鑽もなく「発信者」になれるためか、賢者の言葉にじっくりと耳を傾ける…という堪え性がなくなってしまったように思います。
また、昭和の頃のような泰然とした知識人や落ち着きのある表現者もすっかり姿を消しました。

それが、かの番組を観て懐かしさを抱いた理由かも知れません。

番組で対談を終えた半藤氏が「久しぶりに天才に会った」と呟いたのが印象的でした。


神様。
今日一日が穏やかなものでありますように。
家族が皆、健康で暮らせますように。
友人たちが無事に仕事を終えますように。
お祈り致します。