南町の独り言

様々な旅人たちが、日ごと行きかふ南町。
月日は百代の過客、今日もまた旅人が…。

ボランティアである前に・・・

2008-12-21 19:48:24 | Weblog

『みなさんは「災害ボランティア」である前に、「被災者」です』

その言葉にハッとしたほど、無知・無関心だった私。
福祉基金協会からの案内で知った「災害ボランティアコーディネーター養成講座」を軽い気持で受講してみた。
先週の土曜とこの土日を使い3日間コースの慌ただしい講座であったが、内容はぎっしりと詰め込まれており大変勉強になったとともに、新たなテーマをいただいたような気がする。

まず初日はあらためて「被災すること」について考えさせられた。
過去の阪神・淡路大震災や四川大地震などの記録を見せられるが、写真には残されていない失われた多くの生命。
東海大地震が発生したときには、これらの比ではない被害が想定されている。
静岡市などはほぼ東西南北を遮断されて、最低1週間は陸の孤島と化すだろう。
そんな時、大切なことは何か。

1995年阪神淡路大震災が発生、震災から3ヶ月間で延べ120万人のボランティアが被災者たちに救助の手を差し伸べてくれた。
ボランティア元年と言われる所以だ。
しかしもっとも大きな力は“ご近所さん”パワーであったといわれる。

今回の養成講座ではもちろん「ボランティアセンターの立ち上げ」や「被災者とボランティアとの架け橋」や、その他様々なワークショップによる学習を行なった。
研修が進むほどに、全国から集まってきたボランティアの人たちの力をいかに活かすかよりも、日頃からの“地域力”をいかに強固なものにしていくかが大切なことであると考え始めた。
それは地域のみんなと繋がることの大切さを知ることだ。

この考え方は連合静岡が目標としている“地域に根ざした顔の見える労働運動”と一緒である。
東海大地震が発生し、外からの応援が来るまで生き延びるためにはどうすればいいか。
日常からどれだけ横のつながりを強固にしているかにかかってくるだろう。
強固なネットワーク力は、やれることの幅が広がることに通ずる。
この講座にもさまざまな団体・組織・個人の参加者がいた。
みんな真剣に参加し、熱心に討議に加わっていた。
それぞれのステージで小さくてもいいから新しい挑戦が起こるかもしれない。
私自身もおぼろげながら何かが見えてきたような気がする。


介護の世界へ目を向けよう

2008-12-20 18:22:24 | ユニオン

高齢者福祉がますます重要になってくる。
県内の高齢化も急激に進行している。
65歳以上人口は、平成17年(2005年)現在約779千人。
30年後の平成47年(2035年)には、約1,122千人になることが予想されている。
75歳以上も355千人から約2倍の684千人に増えるとされる。
俗にいう高齢化率(65歳以上人口の占める割合)も20.5%から34.6%に増加する。

そんな増加の一途をたどる高齢者を取り巻く環境は非常に厳しい。
現在でもそうであるから30年後はその比ではないだろう。
だからこそ今から高齢者福祉について考えていかねばならない。
最も望ましいのは、元気な高齢者が社会生活の様々な場面で、その意欲と能力を活用して自分らしく生きていくことだ。

介護が必要な状態になった場合でも、在宅や福祉施設で安心して生活できるようにすることも求められている。
しかし県内の特別養護老人ホームを対象にしたアンケートによれば、65%の施設が人手不足について「相当に深刻」または「深刻な状況」と答えている。
また県内の介護福祉士養成機関への平成20年4月の入学者は、定員の68%と定員を大きく割り込んでいるという。
介護職の過酷な労働環境と、適正な給与体系がないことなどが原因であり、早急な改善も求められているところであるが、介護職場に労働組合も育てていく必要がある。
この業界に適した組織は地域ユニオンが相応しいだろう。
連合静岡ユニオンの奮起を促したい。

雇用環境の悪化に伴い失業者が職を求めて彷徨っている。
介護職場では人を求めて彷徨っている。
このふたつをなんとか結びつけることができれば素晴らしい。
そんな活動が東部ブロックで始まるかもしれない。
楽しみである。


「雇用関連4法案」の行方

2008-12-19 13:27:15 | 政治

18日、野党3党提出の「雇用関連4法案」が参院で可決された。
なんとしても今国会中に成立させたいとの思いから、かなり強引に民主党が押し切ったため国民受けはイマイチであるが、方向性は正しい。
これに対し与党は反発を強め、年明けの通常国会に提出する第2次補正予算案で対応できるとして、参院で可決した「雇用関連4法案」を24日衆院で否決する構えだ。

しかし与党の提出する2次補正には悪評高い“定額給付金2兆円”が含まれており、民主党中心とした野党の賛成は得られない。
職を失い住居を無くしつつある労働者を見捨てて、果たして政治はどこへ向かうのだろう。

あくまでも公明党との約束を守るために国民の7割が反対する“定額給付金”にこだわって自滅するのか自民党よ。
それとも公明党と袂を分かって2次補正から雇用対策部分だけを取り出して提出するのか自民党よ。
いっそ沈む泥舟ならばと飛び出てくる一団が救国新党を結成するのか自民党よ。
いずれにしても政策と政局とが重なり合って激しく動き出している。
そのキーワードは“定額給付金”と“雇用”であることは間違いない。
週末・週初めの国会から目が離せない。

 


労使の社会的責任

2008-12-18 18:19:27 | ユニオン

某新聞社のデスクと意見交換。
派遣社員の雇止めが止まらないことに対しての考え方だ。
12月に入ってから通常月の倍近くの労働相談が入る。
その中には派遣会社との契約期間満了に伴う雇止めの相談も多い。
もちろん単組役員からも同様の悩み相談を聞くが、違法行為ならばともかく現法に照らし合わせただけではなかなか対応は難しい。
ましてや直雇用でないからなおさらである。

しかし道義上の社会的責任は労使ともに負わねばならない。
その責任を果たすという意味合いは単組においては“狭義のワークシェアリング”であり、連合や産別では“広義のワークシェアリング”だろう。
単組の状況を聞くと、仕事が減少したからといとも簡単に雇止めをしているとは思えない。
休日出勤や残業は無くし、職場配転や勤務シフト変更にも協力してなおかつ、有給を使用して就業日を減らしている。
それでも足らずに一時休業をしはじめた会社もある。
もちろん役員トップから率先しての節減であることは当然だ。

問題は大所高所からの労使の反省と、“広義のワークシェアリング”議論が無いことだと思う。
バブル崩壊後、企業は必死になって体質を強化して内部留保を蓄積してきた。
それは何のためだったのか。
マネーゲームに懲りていたはずなのになぜまた失敗したのか、本業にどれだけの投資をしてきたのか。
それも外需頼みではない内需を盛り立てるための投資をである。
今になって思えばバブル期の延長線上にしかない“量の拡大”をひたすら求めるための投資が多かった。
それを良しとしてきた私たちにも責任はある。

来春の賃金交渉についても意見交換。
彼は言う。
「一方で大量の失業者、その一方でベースアップが本当に支持されるのか」
しかしマスコミで取り上げるベースアップとは過年度の物価上昇分のことである。
それは生活維持分にしか過ぎない。
それはそれで要求することは当然であるが、問題はそれだけでは雇用創出を生み出せないことである。
過去のオイルショック時、盛んにワークシェアリングが叫ばれた。
アメリカ型社会は現在の日本のようにバッサリとレイオフ(首切り)する。
ヨーロッパ型社会ではそういう選択をせずに“雇用創出型ワークシェアリング”を行なう。
ドイツでは労使の闘争をもって時間短縮に挑む。
フォルクスワーゲンは93年に週36時間から28.8時間に短縮、年収は10%ダウンさせたが月収は維持をするという条件だった。
フランスでは立法措置によって時間短縮を実現させた。
オランダは「政・労・使3者合意」で賃金抑制と時間短縮と雇用増を実現した。

我が日本においては政治も経営も労働組合も本音で語り合っていない。
正々堂々と“定昇とベア(物価上昇分)”を要求したうえで、政権を交代させて立法措置で“ヨーロッパ型ワークシェアリング”を実現すべきだと、私は思う。


暗黒時代に陥らないためには

2008-12-17 17:45:30 | 読書
風邪が本格的になってきて本日は病欠。
寝ながら読んだこの本には希望がなくて、一方で希望にみちている。

ジェイン・ジェイコブズの「壊れゆくアメリカ」の書き出しである。
この中で日本についてこんな記述があった。

どのようにすれば文明が暗黒時代、ないしは暗黒時代に陥るのを避けることができるだろうか。
黒船に乗ったアメリカ艦隊のペリー提督が1853年に日本に対して開国を迫った後、日本は植民地化による暗黒時代をなんとか免れることができた。
それまで日本は危険な外国との接触とそれによる混乱を避けるため、鎖国政策による「要塞に閉じこもる精神状態」を維持してきた。
西側世界に追いついて、農業文明から創意にもとづくポスト農業文明に移行する間もこの精神状態を守っていた。
この移行期間の変化を通して日本社会は独自の文化的特性を大切にし、それをはぐくむことに精力を注ぎ、名目上の長である天皇を復権させサムライの理念をたたえ神社を守り、芸術を磨きその価値を高めた。
そして日本は西側世界の慣習・流儀を日本独自の文明に同化させた。
日本としては西側に対抗することで、日本文明が今日性のない取るに足らないものになることを避けようとしたのである。
壊れゆくアメリカ
ジェイン・ジェイコブズ
日経BP社

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日本人の持つスキルやアイデンティティを大切に守り育てていくことの大切さを外国人の目を通して教えてもらえる。

そんなこんなで喉の痛みは取れてきたが、知恵熱(?)が出てきた模様だ。

一目瞭然の独り円高

2008-12-16 12:37:19 | Weblog

急激な円高で日本の輸出産業は大打撃だ。
7期連続で過去最高売上を更新し続けたあのトヨタ自動車でさえ、下期の連結決算は1000億円の赤字になる見通しという。
昼のニュースでも来年1月の操業を3日間停止すると発表していた。
どれほどの円高かが一目瞭然に分かるチャート(2年間)を見ながら、これからの世界を考えてみよう。

【米ドル】

【ユーロ】

【英ポンド】

【豪ドル】

【韓国ウォン】

韓国ツアーが繁盛するわけだ。
輸入品ももっと安くなってもいいはずだが・・・。


ビッグ3は高賃金か?

2008-12-15 14:16:36 | ユニオン

米国下院議会で可決されたビッグ3への支援救済法案は、上院議会を通過できずに廃案となってしまった。
仮にビッグ3が倒産でもすれば提案された140億㌦の4倍近いコストがかかってしまうから大騒動になっている。

この議論の中で批判を浴びたのがビッグ3に働く労働者の賃金であった。
「ビッグ3が労働者一人当たりに平均1時間当たり73㌦支払っている」との情報に、世論が「なぜ高賃金の労働者を救うために私たちの税金を使わなければならないのか」と反発したためである。

しかし、このデーターは正確とはいえない。
ここでいう73㌦とは“ビッグ3が一人当たり・時間当たりに費やしているコスト”であり、実際に支払われる基本賃金とは異なる。
実際の基本賃金はGMの場合平均して30㌦前後(組立工で28㌦程度)、フォードは29㌦前後といわれる。
これに対し日系自動車メーカーの労働コストは49㌦(73㌦に対して)で、基本賃金は平均26㌦といわれている。
確かに基本賃金でも若干低いが、多くの差額は退職者向けコストであり、有給・残業代コストの差である。
特に退職者向けコストは、多人数の退職者を抱えるビッグ3が圧倒的に高い。
医療保険や年金制度も自己責任というアメリカの病根も相当に根深い。


「正しさ」について語ろう

2008-12-14 15:42:25 | 読書
ずいぶんと屁理屈をこねたような本だな、と読み始めは感じたが、読み進むとなかなか共感を感じはじめる1冊だった。
小林和之著『“おろかもの”の正義論』。


「おろかもの」の正義論
小林 和之
筑摩書房

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殺したければ殺せばいい。
欲しければ取ればいい。
あなたが殺すのが自由というならば、あなたを殺すのも自由ということだ。
あなたが取るのが自由というならば、あなたのものを取るのも自由ということだ。
すべての人が思いのままに振舞おうとするならば、すべての人がその思いを遂げられないということになる。

車を運転し、左側通行も右側通行もなく、赤信号も青信号もなく、思いのままにみんなが走ったらとても目的地まではたどりつけない。
人がしたいことを実現していくためには、ルールを定め、「してはいけないこと」を決めなければならない。
正しいか正しくないかは、そのルールに従って決定されるということになる。

例えていえば“欲求の交通整理”である。
ルールを定めるときに考えねばならないことがある。
一部の人がすべての欲求を満たすことと、すべての人ができるだけ多くの欲求を満たすことと、どちらが「正しい」のだろうか。
(昨今の雇用問題は実にこのルール問題で労働側が負けたことから発生している)

最後に著者はこう語っている。
『「正しさ」について語ろう。
われわれは、いまよりはもう少し優しく・正しくなれることをわたしは疑わない。
「正しさ」について考える最大の意味はそこにあるのだと思う』


歴史の転換点

2008-12-13 17:01:41 | ユニオン

連合本部は10月の中央執行委員会で「歴史の転換点にあたって~希望の国日本へ舵を切れ~」という文書を確認した。
米国のサブプライムローン問題に端を発した世界同時不況を単なる現象面だけで捉えるのではなく、世界を席巻してきた市場原理主義、金融資本主義(カジノ資本主義)の終焉を意味するものであり、パラダイム転換が今まさに求められているということを組織全体で共有しようと呼びかけるものである。
パラダイムとは“天動説や地動説などのように時代に共通な物の見方・思考”のことである。

まさに20世紀は「お金」を追い求める時代であった。
先進国に蓄積された巨額な資金が複雑怪奇な金融技術の発達により2重3重にレバレッジ(梃子)を利かせることで、実際に存在する資産をはるかに上回る投資余力が生まれている。
この急激な膨張により生まれた“使い切れないお金”が、行き場を求めてサブプライムローンなどに寄り付いたのだ。
なぜ人は“使い切れない”ほどのお金を求めるのか。
その価値観を変えることこそパラダイム転換である。

来春の賃金交渉が話題になっている。
こんな不況期に賃上げなどできるわけがない、という意見。
物価も上昇し、子供も生まれて生活が苦しいからもっと給料上げてくれ、という意見。
どちらも正しいし理解できるが、すべてを単一的に「お金」だけで解決しようとするところに無理があるのではないだろうか。

「連帯と相互の支え合い」を本文でも強調しているが、それは“分かち合い”ということでもある。
お金が使い切れないほどあるとしたら、それを分かち合う仕組みを考えればいい。
連合静岡で取り組んでいる個人別賃金分布図が完成すればそういった考え方も成り立つ。
例えば年収1千万を超える人は、時間短縮に成果配分をシフトするという具合にである。

現在、中央労福協が法制化を進めている「ワーカーズコープ」のモデルとなっている“モンドラゴン協同組合”の報酬の仕組みは、最も格付けの低い労働者と、協同組合最高責任者の報酬格差を3対1としている。
これを“報酬の連帯”としているが、このくらい革命的な提案をしないとせっかくの名文書もゴミ箱に捨てられてしまうかもしれない。
企業間の業績格差は税制により調整する手法も考えられる。
連合本部と次期政権を獲るであろう民主党が本気になって取り組めば叶うことと信じたい。


雇用ヒヤリング

2008-12-12 12:48:07 | ユニオン

連日マスコミでは派遣社員の雇止め問題や、一部企業のリストラのニュースを大々的に報道している。
それを見続けていると心理的に追い込まれて、不安感が増してくる。
それが行き過ぎると「恐慌」に陥ってしまう。
お金を持っている人々までもが財布の紐をギューっと閉めてしまう。
確かに輸出産業を中心にして景気は悪くなっているが、全体的に見ればまだまだ日本経済は安定している。

昨日の執行委員会&地協代表者会議では、構成組織の近況報告を受けた。
直近3ヶ月と向こう3ヶ月の雇用状況、連合・政治・行政への要望事項の聞き取り調査だ。
これは先に開設した「連合静岡雇用対策本部」において決定した“正確な状況把握”の一環である。
今回の金融危機から発した不況に関わらず以前から経営状況が苦しい業種では、むしろ円高によるメリットや原油・原材料の値下げにより一服感さえ出ているところもあるくらいだ。
深刻なのは輸出で潤ってきた自動車産業であり、その裾野で働くサプライヤー群だ。
これについては急激な需要ダウンによる在庫調整の影響も強いように思われる。
過去の円高ショックで鍛えられてきた輸出型企業の反応速度は極めて高い。
その反応が雇用の場にも一気に現れたのは雇止め可能な労働者派遣法の存在であることは明白である。
もしこの法律がなかりせば、もう少し緩やかな在庫調整になったはずだ。

円高メリットを享受することに工夫し、もう少し先に21世紀型の日本経済のあり方を示せれば、まだまだ捨てたものではないとみなさんの報告を聞きながら思った。
県内11地協においても個々の単組の聞き取り調査を行い、正しい情報の共有化と次なる一手をみんなで考えていきたい。