働く者と雇う者、この2者の関係は契約によって成り立つ。
資本(お金)を持つ者が会社を興したとしよう。
仕事が増えてきて一人では間に合わなくなったので従業員を募集した。
ハローワークなどで求人票を見た人が応募してきて、入社試験と面接を経て合格。
正式に両者で雇用契約書を交わして働き始める。
一番スタンダードな直接雇用スタイルだ。
そんな常識がひとつの法律ができたことで崩れていった。
“労働の中間搾取”として禁止されてきた“間接雇用”を認めた「労働者派遣法」の成立(1985年)だ。
当初は適用対象業務13業種でスタートしたが、その後16業種(1986年)→26業種(1996年)に拡大され、1999年には原則自由化(港湾運送・建設・医療・警備・物の製造のみ禁止)された。
その上、2004年には派遣期間の上限規制を緩和し、「26業務」は規制撤廃、それ以外は派遣期間を1年から3年に延長した。
加えて禁止されていた「物の製造業務」も派遣対象業務に追加したのである。
しかし製造派遣は1年という期間制限が設けられていたため使い勝手が悪く、企業側は「偽装請負」という違法行為に染まり始めていった。
それが2006年に大問題となってクローズアップされてきた。
違法行為を攻め立てられた企業は、急遽、労働力を「請負」から「派遣」にシフトした。
経団連は政府に働きかけて、「物の製造業務」の派遣期間制限撤廃を強力に推し進めたが、それはならず、3年間の延長(2007年)にとどまった。
2006年に大量に増えた製造派遣労働者の契約期間が切れる2009年にはどんな問題が起こるのか?それが「2009年問題」だ。
3年を超えて雇用しようとするならば派遣労働者を企業が直接雇用しなくてはならなくなる。
再び派遣契約を行おうとするならば、一定期間(3ヶ月以上)の空白期間が生じてしまい、製造現場に大混乱が起きる。
大企業内部ではすでにその対応が進んでいるようだが、サプライヤーである中小零細企業での対応はまったく手付かずのところが多い。
「2009年問題」はもう目前に迫っている。
現実的には、派遣から請負へ変更するか、直接雇用に切り替えるしか手はない。
3ヶ月の空白期間だけを切り抜けようと工夫しても無理が生ずる。
この期間だけを直接雇用(新規雇用)で逃げようとしてもそれまで働いていた派遣労働者への雇用努力義務が生ずるし、他社からの派遣受入れも違法となる。
3ヶ月だけの請負対応も合法的に行うことは難しい。
派遣業界も受入れ企業も大きな転換期である。
これからはオーソドックスなスタイルに戻すことを考えたほうがいいだろう。
請負スタイルも考え直し、やむを得ない場合でも、社内に残る付加価値は減少するが、下請会社への発注スタイルに転換させたほうが健全だ。
それこそが合法的な請負だ。